レガシー領域×ITでの起業

諸岡裕人
Aug 9, 2017 · 7 min read

僕自身はB向けSaaSが大好きだし、これからBtoB SaaSで起業する人が増えればいいと思っている。ある業界で何年も働いて、そこでの業務やコミュニケーションに対して怒り(『なんて非効率だ!』)を覚え、あるリミットを超えると、人はSaaSを創りたくなる。

(大体が紙とペン、FAX、エクセルに怒ることが多い。)

世の中的にも、レガシー業界をITで変えようという1つのトレンドがある。一見するとソフトウェアに飲み込まれていない最後のフロンティアの様に見える。しかし、これに騙されてはいけない。そこには、知ればやる前から逃げたくなるような「事情」がある。

自分たちの事業が少しずつ進み、知れば知るほど、壁の高さが理解できるようになってくる。そして、そんな壁を1つずつぶち壊していく所に面白みがある。起業してからやってて思ったことを書いてみる。

誰も困っていない

そう、誰一人業界の中で困っている人はいないのだ。僕達はイノベーションだ、IT化だと錦の御旗を掲げて乗り込んでいくのだが、彼らからすると大多数が「大きなお世話だ」って話だ。

大量の紙がある→いつもの光景

人が手書きで記録する→これが私達の仕事だ。

一行ずつ目視確認する→皆日々頑張ってる

あのfreeeですら創業時に、『経理の人は別に今のやり方に困っていなかった』と言っている。

実は合理性がある

一見ムダに見える作業にも実は多い利点が隠されている事がある。ITの世界の住人は誰もが紙とペンを非効率の象徴としてディスラプトしようとするが、例えば『手書き』であることの最大の利点を考えてみよう。

それは、『改ざん可能であること』。これだってアドバンテージだ。どの業界にも、大っぴらに外には言えない闇がある(自分の業界を振り返ってみよう)。データはそれら全てを白日の下に晒してしまう。これは実際に現場で聞いた事実であって、想像上の話ではない。

標準が存在しない

エンジニアにとってこれが一番厄介だ。まず業界を見て、自問しよう。あなたが創るサービスのアウトプットは日本全国で通用するフォーマットなのか?否か?

ほぼ間違いなく、『通用しない』はずだ。もし、B2BのSaaSを開発するならば、一体どれだけのフォーマットを用意すればいいだろうか?考えるのも嫌になる。得てして、IT化が進んでいない業界は、個社別にカスタマイズされたオンプレシステムが未だに主流だったりするのはそのためだ。食品業界は特に顕著だ。

SmartHRの素晴らしいのは、IT化が進んでいない領域で、「社会保険」という一定の標準フォーマットが存在している点だろうと思う(それでもカスタマイズ要望は多い)。

とうことで・・・

①ほとんど誰も困っていないし、②今の状態が合理的で、③標準化されてない。そんな領域に、思いっきり「大きなお節介を焼く」のだ。相当な覚悟と戦略と、何より根気がないとやってられないはずだ。

覚悟と根気は殆ど一緒だけど。一番必要なのは根気の方だ。戦略なんて大体外れる。宝クジくらい外れまくる。

誰もやりたがらないから残っているだけであって、フロンティアでもなんでもない。四六時中、その業界のことを考え、自分が救世主だと本気で信じていないと折れる。かく言う自分も、1度折れ掛けたので良く分かる。

イノベーターはどこにいる?

招かれざる客である僕らは、業界の変わり種を探すほかない。

イノベーターは、新しいものを積極的に試そうとする人々を指します。市場全体の2.5%に相当し、商品の新しさ、革新性を重視しています。

つまり、僕らと同じ様に怒りを感じており、自分では作らないが空想はしている。SaaSの出現を待っている人たち。そんなイノベーターを探す旅だ。正確には決裁権を持つイノベーターを探さなければならない。

僕は以前一度、三重県の2時間半に1本しかバスがない山奥に営業に行ったことがある。そんな場所で僕らを見つけてくれたのだ。

『VoicyのニュースでKAMINASHIについて聞きました!』

そう言ってもらった名刺を見てちょっと心配になった。「総務部リーダー??」絶対に僕らのプロダクトを導入する際のキーマンではない。総務関係ない!

と思って話してみたら本当に興味本位で呼んでくれただけだった(泣)こんなことの連続だ。そうやって2.5%のホンモノと巡り合うしかないのだ。

ここからがSaaSの苦難

そしてやっと巡り合った2.5%のイノベーター。怒りを共有する友。さあ!後は導入して実績にするだけだ。しかし、逸る気持ち程スンナリとは行かない。

『この機能が必要だ』

『現場の声は◯◯◯と言っている・・・』

『〜できたら使ってもいい』

「おいおい、嘘だろ?ここまで来てもまだ使ってくれないのか??あんたらの要求に答えていたら、SaaSじゃなくなっちまうよ!」

と叫びたくなってくる。エンジニアたちは自社プロダクトを作りたくてスタートアップに参加しているのに、あなたは「導入してもらうためにこの機能作ってくれ!」と彼らに言わなくてはならない。

SaaS向きのエンジニアと価値

BtoB SaaSに向いているエンジニアかどうかは、大体ここで分かる。自分は経験したことのない課題を聞いて、噛み砕き、追体験するくらいの力が必要になる。

エンタプライズ>SMB

僕らは当初、中小企業に対して上記のような事をやっていた。何となくのイメージで、SMBの方が導入までのスピードや要求事項は少ないと思っていたからだ。

でも結果として、一部上場の大企業の方が圧倒的に早い場面がいくつもあった。どうせ、2.5%を引き当てて、その後も悩むならばよりMRRが見込める客とやるべきだ。

当然プロダクトの特性もある。ただ、バーティカルSaaSの場合は、当初エンタプライズを攻めたほうがいいのではないかと思ってる。ホリゾンタルSaaSに比べてアクセサブルな顧客総数が少ないし、当初は機能も少ないのでほぼ毎回新規顧客=足りない機能が出てくる。

売る度に作ることになる事が多いならば高値を付けてくれる客とやったほうが経営的にも楽だ。何しろ、SaaSは作る機能が多い。1,2年じゃ終わらない。シードからシリーズAまでに作り切るのであれば、お金もエンジニアもどちらも大量に必要だ。

ということをエンジニアと合意して、ユリシーズでは開発優先度について以下のように決定している。

セールスフォースを使って、
①ロードマップにある機能
②現在の商談(金額×確度)

この2つを組み合わせて優先順位をつけている。

A、B、Cという機能があって、それぞれが何社から求められていて、それによるMRR見込み(MRR×商談の確度)はいくらなのか?で一義的に優先度が決まるようにしている。

経営(MRR)とセールス(顧客要望)と開発(機能)の意思決定が非常に楽になった(この辺りは改めて書きたいと思う)

今の僕にはそれしか言えない。お互い頑張りましょう!

最後にユリシーズでは一緒に0→1をやってくれる創業メンバーを募集中です!

    諸岡裕人

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