スプツニ子! 新作MV 徹底解説「運命の赤い糸をつむぐ蚕 — タマキの恋」 Sputniko!'s new viodeo “Red Silk of Fate — Tamaki’s Crush”

Sputniko! “Red Silk of Fate — Tamaki’s Crush” / スプツニ子!「運命の赤い糸をつむぐ蚕 — タマキの恋 」/ YouTube より

現代アーティスト、スプツニ子!の新作MVがついに公開された。
タイトルは「運命の赤い糸をつむぐ蚕 — タマキの恋」。科学の力で、大好きな先輩を振り向かせちゃおう♡という、理系女子の挑戦ストーリーだ。

遺伝子工学を研究する豊田玉姫は、同じ研究室の先輩である山田ジョン幸彦に恋こがれる­あまり、「運命の赤い糸をつむぐ蚕」を自ら生み出そうとする。お気に入りのスカーフに­「運命の赤い糸」を縫い付け、いざ幸彦先輩に会おうとする玉姫だが、予想外の力が彼女­に宿りはじめ...(youtubeより)
Sputniko! “Red Silk of Fate — Tamaki’s Crush” / スプツニ子!「運命の赤い糸をつむぐ蚕 — タマキの恋 」/ @YouTube

“現代の神話”をつくった、スプツニ子!史上最高傑作

「運命の赤い糸をつむぐ蚕―タマキの恋」は古事記・日本書紀に共に記されている、山幸彦(ヤマサチヒコ)と豊玉姫(トヨタマヒメ)の物語りをベースにしている。( http://www.kanko-miyazaki.jp/kaido/50story/shinwa/020/ )これは浦島太郎のモデルになったとも言われており、兄である海幸彦の大事な釣り針を無くしてしまった山幸彦が潮の神様に促され、釣り針の手がかりを求めて小舟に乗ってキラリと輝く御殿を目指す。その御殿で出会ったのが海の神様の娘、豊玉姫である。

「なにこのイケメン!めっちゃタイプ♡」と一目惚れした豊玉姫。山幸彦も同じく「この子、超カワイイじゃん!」と釣り針のことそっちのけで豊玉姫にゾッコン。そのまま2人は燃え上がり祝福を受けて結婚する、という物語り。

スプツニ子!新作では、イケメン山幸彦をスプツニ子!演じる“山田ジョン幸彦”が、海の女神 豊玉姫を主人公の理系女子“豊田玉姫”が表現している。

肉食女子は、遺伝子組み換えカイコで恋を掴みとる!

スプツニ子!新作のもう一つのベースとなっているのが、遺伝子組み換え技術。蚕の遺伝子を組み換えて、赤く光るシルクを作らせるというものである。運命の赤い糸である。この技術は瀬筒秀樹教授の、蛍光タンパク質を生産する遺伝子組み換えカイコの研究をもとにしている。
(瀬筒秀樹 農業生物資源研究所 http://www.nias.affrc.go.jp/org/GMO/Silkworm/page05.html)

瀬筒教授の研究成果を元に「エイミの光るシルク(http://sputniko.com/2015/04/amyglowingsilk/)」をスプツニ子!は発表しているが、新作の「運命の赤い糸・・・」はその第2弾となる。スプツニ子!は瀬筒教授と遺伝子組み換えカイコを共同開発し、赤色の蛍光タンパク質をカイコに組み込むだけでなく、恋愛ホルモンとも言われるオキシトシンを作る遺伝子も同時にカイコに組み込んだ。この恋愛ホルモンのおかげで、本当に恋に落ちる(かもしれない)赤い糸を実際に開発してしまったのだ!大好きなあの人を振り向かせるため、肉食女子が遺伝子工学を用いて究極のラブアイテム、『リアル運命の赤い糸』を開発したのだ。ただ神に祈って運命に身を任せるだけじゃない、欲しいものは自ら掴みにいく、超絶アグレッシブな恋する乙女の愛情表現である。

現代の神話を書くなら、そこにはテクノロジーがある

スプツニ子!の新作「運命の赤い糸をつむぐ蚕―タマキの恋」は、現代版に進化した神話である。「エイミの光るシルク」では、キラキラと輝くシルクのドレスで、大好きなあの人に猛烈アピールした。「タマキの恋」では赤く光るだけでなく恋愛ホルモンで意中のあの人の感情まで操作しようとしている。

ただの布で人の感情を操作することなどできるのだろうか?現代の科学では、オキシトシンが人が恋愛感情をもつ時に多く分泌されるホルモンだということがわかっている。また、そのオキシトシンをつくる遺伝子をカイコに組み込んでシルクを生産させる技術も完成した。シルクで人の感情を操作出来る世界は、もう目前まで迫っているのである。

その未来、欲しい?

「その世界、めっちゃいいじゃん!」と目を輝かせる乙女もいるだろう。「ありえない。人が他人を操作するなんて。自然の摂理に反している。」と嫌悪感を露わにする人もいるだろう。そこにはいろんな意見があっていい。それこそがスプツニ子!が作品を通して実現したいことの一つである。

近い未来に起こりうること、科学技術や政治・経済の発展などによって起こりうる未来。それに対して私たち人間はどう反応するのか。未来を受け入れるのか阻止するのか。知っていなければ、考えていなければ、ただ受動的に未来に巻き込まれるしか無い。その時になって焦って慌てて嫌な思いをしないように、今、能動的に考え議論を交わし、来るべき未来に心も、法律も、社会制度も、周辺技術も、備えておこうじゃないかというのが、スプツニ子!らが実践するアートの一分野“スペキュラティブ・デザイン”の大目的だと私は解釈している。

※ご紹介した作品・技術、その他周辺のエピソードなどは随時追記していく予定です。
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