常識を捨てる。人生を積分する。
AIとBotの技術的限界を越えるために、僕がデータサイエンティストとして実践していること
弊社が提供するChatCenter Aiの開発に欠かせないのが、データ分析のプロフェッショナルです。弊社でプリンシパル・データサイエンティストをつとめる図子泰三に話を聞きました。
データサイエンティストが21世紀最もホットな職業だと注目される中、データサイエンティストとして何を考え、何を目指しているのか、図子が思うチャットボットを追求して行く上でのデータサイエンスの重要性、そしてチャットボットで目指す世界について語ってくれました。
常識を変えることをミッションに掲げる彼が描き出す、チャットボットの未来とは?
経歴紹介
慶應義塾大学SFCに在学時代、弊社代表高橋の研究室の先輩でもあった図子。図子はデータサイエンティストという研究者としての側面のみならず、大学講師、経営者、アーティスト、そして一児の父など様々な顔を持ち合わせています。幼少期をドイツで過ごしたのち、日本に帰国し慶應義塾志木高等学校に入学。慶應義塾大学SFCにてデータベース研究に従事し博士号を取得後、株式会社エアリーを創設。創業者として会社を経営しながらも、複数の大学において教卓を執ってきました。現在は、AppSocially KKにおいて自身の専門であるデータマイニングや機械学習の専門知識と経験を活かしながらお客様企業のデータ分析支援や製品開発に関わっています。そんな図子が今回語ったのはデータサイエンスの視点からみるチャットボットの未来です。
目次
- 「人間らしさの追求こそがチャットボットにおけるミッションである」
- 既存のツールとツールを掛け合わすことで生まれる新しい体験
- 次なる挑戦: 時系列分析
- 常識を捨てることで常識を変える
- 人生を積分で考える
「人間らしさの追求こそがチャットボットにおけるミッションである」
— チャットボットで新しい価値を生み出すという点において、何が重要になってくるのでしょうか?
今取り組んでいることは人間らしさの追求です。チャットという会話型UIに取り組んでいるからこそ、いかに人間らしさを表現出来るかという部分が重要になってくると思っています。僕たちがChatCenter Aiまたは個人向けに実験を開始しているTruffleを通して実現しようとしていることは、人間と人間が行なっているコミュニケーションを機械tに置き換えるという作業で、全てを機械に置き換えようとしている訳ではありません。例えば、自動販売機でジュースと買うという行為を、会話を介して買うという行為に置き換えるのはあまり意味がないですよね。ボタンを押して買ったほうが会話を通じて買うより早いと思います。しかし普段人間同士で行われている人間らしい情報交換はチャットボットに置き換えて、会話という形で再現することに意味があります。“会話”という形式が重要なコミュニケーションであるからこそ、人間らしさの追求が重要になってくるのです。
1つ例を挙げると、自己紹介の際、うまく自分の事を伝えきれないからと理由から、「ホームページに自分の情報を全て載せるので、それを見てください」と言ったとします。これにより確かに自分から発信できる情報量は多くなりますが、良い関係を気づけるようなコミュニケーションは生まれないと思います。しかし、もしこれがチャットという形で自然に行われているのであれば、より良いコミュニケーションや関係が生まれると思います。会話で行われることに意味があるものだけをチャットに置き換えいるからこそ、いかに人間らしさを追求できるかが重要なのです。
人間らしさの追求は簡単なように聞こえて簡単ではありません。人間の会話の特徴を捉えようとする時によく脳科学が参考にされますが、現在においても人間の脳は2割程度しか解明されていません。ゆえに脳科学から全てを理解することはできません。しかし私たちは普段生活する中で会話を繰り返していて、機能としてはわからなくてもアウトプットとしての会話は見れている訳です。脳科学を参考にしながら、それだけでは補えない部分を人間の行動の観察や、コミュニケーション技術を駆使してより人間らしさを突き詰めていきたいと考えています。僕は人間らしいコミュニケーションを突き詰めることがユーザーにとっての気持ちのいい会話体験に繫ると信じています。
既存のツールとツールを掛け合わすことで生まれる新しい体験
— 「人間らしさの追求」というミッションにおいて、データサイエンスがどう関わっており、どのように重要になってくるのでしょうか?
やはり気持ちの良い体験を提供するために最適なツールとツールの組み合わせを生み出すという点が重要ではないでしょうか。ChatCenter AiはAIのツールとして機械学習や人工知能に関する様々なツールを使用しています。ですが、一言に人工知能といっても、機械学習やAIにも様々なアルゴリズムが存在します。例えるとAIは人間の体のようで、人間の体が様々なパーツの集合として成り立っているように、AIも様々なアルゴリズムが集まり成り立っています。例えば、耳としての機能を持つ音声認識であったり、目のように物体の特徴を感知するものなど、特定の機能を持ったアルゴリズムが無数に存在し、その機能を組み合わせることでAIが成り立っているのです。無数に存在するツールからどのツールを使えば私たちの再現したい機能が作れて、どのツールとツールを掛け合わせたら僕らが目指す人間らしさにより近づくのかといったところを見極め、再現していくのがデータサイエンティストとしての力が試されるであると思います。
つまり僕が目指しているのは、新しいAIのアルゴリズムを開発することよりも、すでに存在するアルゴリズムであったり、先ほど挙げたコミュニケーション技術や脳科学の考え方など、既に存在するツールや知識の全てを駆使し、人間らしさを再現するための最適なツールと知識の組み合わせを見つけることで、ユーザーにより良いコミュニケーションを提供することです。
また人間らしさという点に加えて、“人間が気づかない部分をデータサイエンスを使って気づかせることができる”という点がデータサイエンスの強みです。例えばコールセンターの事例で、「お客様からこんな問い合わせが多い」という気づきは、自然にオペレーターが発見することもありますが、単語のデータ分析をしてみて初めて分かることも少なくありません。統計学やデータマイニングで分析することで今まで気づかなかった点を洗い出し、それをオペレーターにサジェストできる仕組みはこれからのAIの利用においてとても重要になってくると思います。AIによる高度なオペレーターへのサジェスチョンが実現できれば、圧倒的な業務効率化が可能になります。“データからしか見えないこと”をデータサイエンスの力を利用して洗い出し、AIがオペレーターにサジェスチョンできる仕組み、これをより高度な次元で追求していきたいと思います。
次なる挑戦: 時系列分析
— データサイエンスの発展がAIの発展に大きく貢献してきていると思いますが、データサイエンスティストとして今後チャレンジしたいことは何ですか?
データサイエンスという分野は今非常に注目されており、ホットな分野だと言われていますが、技術自体は20年前からあったものと変わらないことも多いのが実情です。なぜ今このような注目を集めているかというと、インターネットの普及によりデータが集まるようになったからです。インターネットの発展と共にデータが容易に蓄積できるようになったことで、データサイエンスの可能性が広がりました。これからは蓄積されたデータを利用し、サジェスチョン機能に関わる新しい分析に挑戦したいと思っています。
例えば、時系列の分析です。現在行なっているサジェスチョンは「この文章を何度も入力されているので、自動化しませんか?」など統計解析に基づいたサジェスチョンが多いです。しかし、この次のステップとして時系列のデータに注目したいと思っています。なぜなら時系列のデータこそがチャット特有の分析だと考えるからです。例えば、「このメッセージが来たら次にこのメッセージがくる」などといったことが時系列分析から読み取れると思います。また会話の中でたまに起こる「この人また同じ質問しているな」という経験も時系列的分析から読み取れ、それに対してのオペレーターへのサジェスチョンが可能になります。時系列を理解した上でAIがオペレーターにサジェストできるといったことは分析的には高度な次元になりますが、これが実現できたら僕たちが目指す人間らしい会話に大幅に近づくと思っています。僕たちが普段普通に行なっていることを再現するのはとても難しいです。けれどチャレンジングだからこそ面白いですし、もっとこういったチャレンジを重ねて新しい発見を増やしていきたいと思っています。
蛇足ですが、雄介(代表)と僕が所属していた慶應義塾大学SFCの研究室の清木康教授は、これを常々「人間技(わざ)」と呼んでいました。機械は、人間の脳ができることのほとんどはまだまだできませんし、神技(かみわざ)には遥かにに及びません。人間ができることを一つ一つでも再現できていくと、AIが進歩するのみならず、僕ら人間自身についてもより理解が深まるという意味です。
常識を捨てることで常識を変える
— チャットボットを通して現在創造している、または実現したい未来とはどんな未来でしょうか?
僕が今、製品づくりを通して実現しようとしているのは“常識を変えること”です。チャットボットという市場がレッドオーシャンである今、尖った製品・サービスを作ることが必要だと思っています。そしてその尖った製品・サービスこそが今までの当たり前を変えるものだと思うのです。例えば、現在はLINEでのメッセージ交換が当たり前ですが、それをbotが代わりにするようにしたり、自己紹介の際は名刺交換が当たり前ですが、そこにbotが付いてくるようにする、などといったことです。
現在個人向けAIであるTruffleの開発にも携わっていますが、まさに上記であげたようなことを実現しようとしています。現時点でも、コミュニケーションロボットなど個人向けAIは出ていますが、便利ではなかったり、価格が高すぎて一般の人々は利用できていません。Truffleでは人々にとってのお手軽さを大切にしたいと思っています。そしてその上で、自分の分身であるbotと他人のbotが会話をするということを実現したい。今の”人と人がチャットする”という常識を”botとbotが会話する”ような製品を創ることで変えたいんです。
しかし、これを実現することは簡単ではないとも考えています。だからこそ、僕は“常識を捨てる”をモットーにしています。特に大企業では固定観念があることで非効率な働き方になっていることが多いと聞いています。スタートアップはそれではいけません。働いていると今までの常識でいえば達成ができそうにないことに直面することもあります。例えばこのプロトタイプをを1週間以内に終わらさなければならないとか。無理そうに見えるけどそれを無理って言ってしまったらそこでおしまいです。その無理そうに見えることに色々な角度からアプローチしてみることが重要だと思います。そうすると、「あ、1週間では終わらなかったけど1週間と2日で終わった」とか「予想以上に早く、3日で完成できた」だとかできることが増えて来るんです。きっとそういうことの積み重ねで成長していくと思うのです。そういった“常識に挑戦する”ことは、製品の観点からも仕事の仕方の観点からも一番重要視しているところです。
人生を積分で考える
— 現在様々な活動をされていますが、子育てをする一方で仕事をこなすのは難しいことだと思います。仕事観や人生観について何か意識していることはありますか?
一つ意識していることは、人生を積分で考えるということですね。
やはり人間ですので、落ち込む時期もありました。人生の中で一番落ちていた時は母親が亡くなった時ですね。その時期は色々考えました。もっとこうすればよかったなとか、自分もいつかは死ぬんだな、とか。その時期がちょうど40過ぎで人生の折り返しの地点だったので、残りの人生について深く考えました。その時から“残りの人生をどれだけ充実させるか”という点に発想のポイントが変わりました。
生きていると必ずアップダウンはあると思うんです。ただそのアップダウンに注目するのではなくもっと全体的に見ようと思うようになりました。つまり“人生を微分ではなく積分で考えること”。変化している値そのものや、変化率(傾き)に注目するのではなく、全体的な面積、つまりそれによってどう変われたか、何を達成できたかという包括的な観点で考えるんです。こういう風に考えると落ち込んでもすぐに立ち直るようになります。落ち込んでいる時間がもったいないとも思えてきます。これが、僕が自分の経験を通して学んだ大きな教訓です。
最後に
今回は、チームメートインタビューの第二弾として、データサイエンティストの図子が、データという観点からチャットボットの未来、そして自らの仕事観までを語ってくれました。AppSociallyのデータサイエンティストとして、これからも様々なことに挑戦したいと語ってくれました。
弊社ではチャットボットで新しい世界を創造するため、全員がアスリートのように情熱的にそして全力で楽しく仕事に取り組んでいます。常識を変えることは簡単ではありませんが、本気でこれを実現しようと取り組んでいるチームです。私たちの取り組みに興味を持っていただけた方、何か感じていただけた方は、お気軽にご連絡ください。皆様からの感想お待ちしております。
