思ったより広かった “ナレッジグラフ”の世界

Aoi Ohta
Dec 25, 2023

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はじめに

この記事は,ナレッジグラフ Advent Calendar 2023 の 25日目の記事です.

ナレッジグラフのアドカレを締めくくるにあたってどんな記事を書けばよいのか?まあまあ悩みました.言っても時間もあまりないのでゆっくり準備する余裕もありません.

前回の記事で,ナレッジグラフの定義を改めて調べ,ナレッジグラフとは,特定のドメイン知識を表す多様で不均質な情報源を統合する,非常に大きな意味ネットワークであると紹介しました.なんともゆるふわな定義ですね.

しかしながら,それだけでは,ナレッジグラフについて”ネットワークの形をした,知識の保管庫”ぐらいのイメージしかもってもらえないでしょう.ええ,実際,私も初めて聞いた時はそれぐらいのイメージしか持っていませんでした.

そこで,今回は国際会議 ISWC2023 の Session list をもとに,“ナレッジグラフ”という単語からどのような話題を始めることができるのかを見てみようかなと思います.

※筆者はまだ研究2年目で,説明に不十分な点が多々あると思います.お気づきの点があればご指摘いただけますと幸いです.また,かなりたくさんのセッションがあるので,途中で力尽きるかもしれません.書けなかった分は後日書き足します…

※※ ISWC は,Semantic Web の国際会議なので,多少ナレッジグラフからずれたことが主眼に置かれている研究もあるかもしれません.

マシュマロ的カテゴリ分け(超抜粋版)

数えたら15個も(同一名セッションはひとつとみなしました)あったので,できるだけ概要をわかりやすくお伝えするために,私の思うカテゴリ別にセッションをそれぞれピックアップしてまとめてみようと思います.

1. 有名な問題系

Link Prediction と Knowledge Graph Embedding がこれにあたります(ここは後日追記したい).アカデミアのナレッジグラフ界ではかなりの人が知っている有名なトピックだと思います.あまりに有名だからなのか,Link Prediction は2セッション,Knowledge Graph Embedding はなんと4セッションにわたって展開されています.

2. 1以外のバチバチの理論系

機械学習,と聞いてすぐに思い浮かびそうな,ナレッジグラフを扱うにあたって出てくる特定の問題に対して,よりよい解決法,すなわちより高い精度を達成できた,とする発表が並んでいます.Temporal Reasoning, Entity Alignment (一部応用系の研究があります) などがこれにあたると思います.

3. データ(セット)マネジメント系

ナレッジグラフからは少しずれているかもしれませんが,Industry: Data Management and Analysis と RDF Dataset Management(データを形作る要素だけでなくそれらどうしの関係を含んだデータを扱うフォーマットであるRDFを使って作られたデータセットの管理に関すること)というセッションがあります.

4. オントロジー系

Ontology Engineering and Ontology Patterns と Ontologies and Knowledge Graphs があり,後者に至っては4セッションもあります.

5. IoT系

IoTと知識が何の関係があるの?と思われるでしょうが,ちゃんと応用先としてあります.

セッションとしては Industry: Internet of Things (IoT) and Data Enrichment と Internet of Things があります.

6. 番外編:LLM

ついにここにもLLMが姿を見せるようになりました.LLMをナレッジグラフ関連の問題を解くのに使ってみたり,既存のナレッジグラフを用いた手法と比較してどれだけ精度が出るのか比較したりしている研究が発表されています.

7. 有名ツール系

Linked Data in Action と Search, Retrieval, and SPARQL というセッションでは,ナレッジグラフを表すのによく使われる RDF という形式のデータやSPARQLというSQLに似たクエリの扱い方,変換などについて扱った研究が発表されています.

分類に失敗した2セッション

Industry: Semantic Data and Metadata

企業等の活動の中で蓄積された大量のデータを扱う際に,リンクデータの概念を適用することで,いわゆるDXの促進に貢献した例が紹介されています.

Knowledge Extraction

テーブルデータやナレッジグラフだけ置いてあっても何か知識を得ることはできない(伝われ)ので,どのようにして知識を取り出すか?について研究されています.

おわりに

かなり短縮版になってしまったので,どうにか時間をつくって追記or別記事執筆してリンク等してみたいのですが,自分の研究もあるので,まずはこの記事で少しでもナレッジグラフの世界の広さが伝わればと思います.

また,本記事は2023年12月20日に行われたナレッジグラフ勉強会で提供いただいたみなさんの資料を参考にして執筆しました.ありがとうございます.

ちなみに,アイキャッチ画像は DreamStudio を使用して Stable Diffusion に描いてもらったナレッジグラフの絵です.なんとなく細部に突っ込みたくなりますが.使用したプロンプトはこちら: “A knowledge graph, that illustrates objects and their relationships in the shape of a network.”

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Aoi Ohta
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大学院情報科学域の博士前期課程(修士)1年で,ナレッジグラフを活用した情報推薦等の研究に取り組んで1年半ほどになります.また,人工知能学会SWO研究会の企画委員によって設立されたナレッジグラフ若手の会の運営委員として,2023年10月ごろから活動しております.