スタートアップのためのアドバイス (Y Combinator)

この記事はジェフ・ラルストンとマイケル・サイベル (Y Combinator) によるYC’s Essential Startup Adviceを、Y Combinatorの許可を得て翻訳したものです。

文中の参考文献は、日本語訳がある場合はそのリンクにしてありますが、ないものはそのまま英語版を載せています。日本語訳を見つけられた方はコメントなどいただけると助かります。

2017年 9月25日

我々がスタートアップに提供するアドバイスのうち、多くのものは戦術的なもの;すなわち、日々の仕事に役立つものだ。しかし、いくつかのアドバイスはより本質的なものだ。今回、私たちYコンビネータがもっとも大切であり、もっとも変革する力があると考えるアドバイスを集めた。一般的なもの・反直感的なものの両方とも、ほとんどのスタートアップにとって、成功への道を探すことへの手助けとなるだろう。

我々が常にファウンダーに最初に伝えることは、すぐにプロダクトをローンチせよということだ。このことに対する唯一の理由として、カスタマーの問題を完全に理解し、プロダクトがカスタマーの求めるものに合っているかどうかを判断するための唯一の方法がそれだからだ。驚くことに、二流のプロダクトをできるだけ早くローンチし、カスタマーと対話し、それらを繰り返すことは、完璧なプロダクトが出来るまで待つよりも非常に良い結果をもたらす。このことは、プロダクト — そのバリューが、存在するであろうあらゆる欠点を圧倒するような — が「少しでも有用な点 (quantum of utility)」を持つ限りにおいて真実だ。

一度ローンチしたら、創業者にはスケールしないことをする、ということを提案したい(ポール・グレアムによる「スケールしないことをしよう」)。多くのスタートアップアドバイザーは、スタートアップに急激すぎるスケールアップをさせようとしてしまう。これはテクノロジーとプロセスの開発がスケールに対応することを求める。そして、それはもし時期尚早な場合、時間と労力の無駄となる。この早すぎるスケールアップは、スタートアップを失敗に導くことがあり、会社の死に導くことすらある。そして、スタートアップに何が何でも最初のカスタマーを捕まえるよう伝える。それは100人や1,000人よりはるかに少ない、10人以上には適用できないような手作業でも良い。このステージでは、創業者は依然として顧客のニーズを見つけ出す最中であり、それをするための一番良い方法は顧客と直接話すことだ。例えば、Airbnbの創業者は、もともと最初期の顧客に彼彼女らの物件が魅力的に見えるよう、プロのカメラマンによる撮影を提供した。しかしその後、彼ら自身が出向いて撮影を行うようにした。それによりサイト上の物件は進化し、コンバージョン率も劇的に改善した。これは全くスケールさせらることが出来ない方法だが、どのように活気に満ちたマーケットプレイスを作るかということを学ぶためには有効であると証明されている。

ユーザーとの対話は、通常長く複雑な開発要件を生み出す。このようなときに、YCのパートナーのポール・ブックハイトが常に与えるアドバイスは、90/10ソリューションを探すというものだ。90/10ソリューションとは、あなたの実現したいことの90%を、10%の仕事/努力/時間だけで実現できるような方法を探すということだ。 懸命に探せば、90/10ソリューションはほとんどの場合存在する。最も重要なことは、実際のカスタマーへのすでに存在する90%ソリューションは、作るのに何年もかかるような100%ソリューションよりもよほど良いということだ。

会社が成長し始めるにつれ、非常に多くの気が散りうることが出てくる。 カンファレンス、ディナー、ベンチャーキャピタリストや大企業の事業開発部 (Don’t Talk to Corp Dev by Paul Graham) とのミーティング、メディアへの露出などだ。(YCの共同創業者であるジェシカ・リビングストンは、フォーカスすべきでないことの包括的なリストを作成した [How Not To Fail by Jessica Livingston.] 。) 私たちは創業者たちに、創業したての会社をとって最も重要な仕事は、コードを書いてユーザーと話すということであると、いうことから目を離すなと言い続けている。これは、どんな会社にとってもソフトウェアであれなんであれ、人が求めるものを作るためには何かをローンチし、それがカスタマーのニーズを満たしているか確認し、そしてフィードバックを得てそれを繰り返す、ということだ。これらの仕事は、あなたの時間/集中力のほぼ全てを占めるべきである。偉大な会社は、このループが止まることは決してない。 同じように、あなたの会社が進化するに従い、創業者たちが複数の選択肢の中から決断を迫られることが増えてくる。サム・アルトマンは、野心的な道を選ぶことがほぼ常に良いと、いつも言っている。 実際、驚くほどに創業者たちは問題を解決することを避け、他のことに集中している。サムはこれをフェイクワークと呼んでいる。なぜなら往々にしてリアルワークよりも楽しいことがあるからだ(ごまかし仕事に惑わされるなーースタートアップがYCプログラム参加後に陥るスランプとその乗り越え方)。

カスタマーがやってきたとき、ほとんどの創業はカスタマーがプロダクトを選ぶのと同じくらい、プロダクトもカスタマーを選ぶということを認識していない。我々はよく、プロダクトを愛している小さいカスタマーのグループは、プロダクトが好きなだけの大きなカスタマーグループよりも良いということを伝える。他の言葉で言えば、炎上している問題を持っている10人のカスタマーを捕まえることは、腹立たしい程度の問題を持っている1,000人のカスタマーよりも優れているということだ。 カスタマーを選ぶときはミスを非常にしやすいので、時によっては彼らのカスタマーをクビにするということがスタートアップにとって重要となることもある(Users You Don’t Want by Michael Seibel.)。カスタマーによっては、そのカスタマーが提供する収益や学習できることよりもコストの方が多いことがある。例えば Justin.tv/Twitch は著作権のあるコンテンツをストリームしようとするユーザーから距離を置き、ビデオゲームをブロードキャストするユーザーにフォーカスすることで爆発的な成長を遂げた。

成長は常にスタートアップの目標だ。なぜなら成長がないスタートアップは通常失敗するからだ。しかしどのように、そしていつ成長するかはよく誤解されている。YCは時折、何が何でも会社を成長させようとしているという批判を受けるが、実際は我々は、スタートアップに対してユーザーと話し、ユーザーが欲しがるものを作り、そしてそれらを素早く繰り返すということをするよう勧めている。成長は、これら3つのことを成功裏に行ったことに対する自然な結果にすぎない。しかし成長は常に正しい選択とは限らない。もしあなたがまだカスタマーが欲しがるようなものを作っていない場合、他の言い方をするとプロダクトマーケットフィットしていない場合、成長を目指すことは理にかなっていない(The Real Product Market Fit by Michael Seibel) 。ひどいリテンション率に終わるだろう。またもしあなたが利益を生まないプロダクトを持っていた場合、成長は単に会社からキャッシュが吸い取られるだけだろう。ポール・ブックハイトが言うように、1ドルを80セントで売ることが理にかなうということは決してない。ユニットエコノミクスが重要であると言うとは、驚きとしてくるべきことではない。しかし非常に多くのスタートアップが、この基本的な事実を忘れているように見える (Unit Economics by Sam Altman) 。

スタートアップの創業者たちの直観は常に、より多くをしようとするが、通常最も良い戦略というのはほぼ常にやることを少なくするということだ。例えば創業者たちは往々にして、素晴らしくその会社との関係性がアピールとなるような大企業とのディールを追いがちである。しかし大企業と小さなスタートアップのディールは、スタートアップにとって良い結果に終わることはほとんどない。そういったディールは、時間を取りすぎ、コストもかかりすぎ、そして時には完全に失敗する。 スタートアップをすることにあたり、最も困難なことのうちの一つは何をすべきかを選ぶことだ。なぜなら、あなたは常に無限のやるべきことリストを持つことになるからだ (Startup Priorities by Geoff Ralston) 。最初期のスタートアップにとって、一つか二つ成功を測るためののキーメトリクスを選ぶことは重要である。そして創業者たちは、タスクがそれらのメトリクスにインパクトを与えるかどうかだけでやるべきタスクを選ぶべきである。あなたの初期のプロダクトがうまくいかないときによくある話として、カスタマーと話しカスタマーの最も深刻な問題だけにフォーカスする代わりに、カスタマーが持っているように見える全ての問題を解決するための新機能開発をしようとしてしまうということがある。

創業者たちはときおり、彼彼女らの会社がめちゃめちゃに壊れそうかどうかということについて悩むべきではないという驚くべきことに気がつく。ほとんど全てのスタートアップが、たとえビリオンダラーカンパニーとなった会社でも、深刻で根本的な問題を抱えているということが分かっている。成功とは、あなた達が始めの方に失敗するかではなく、創業者たちが避けられない問題に対してどう対処するかによって決まるからだ。 創業者としてのあなたの仕事は、よく転覆した船を立て直し続けることだと言われる。そしてそれは普通のことだ。

新しいスタートアップの創業者として、実際のそして潜在的な競争について考えないということは非常に難しい。 あなたの時間を競争相手に対して心配することに費やすということは、ほとんど常に悪いアイデアであるということが分かっている。 私たちは、スタートアップは常に殺されるのではなく自ら死ぬのだと伝えたい。競争相手の動きが成功また失敗に対して非常に重要になるタイミングは来るが、それが最初の1年または2年に来るということは非常に稀である。

資金調達に関しても少しだけ言っておう (A Guide to Seed Fundraising by Geoff Ralston) 。最初に言っておくと、最も良いアドバイスはなるべく早く調達し、そして仕事に戻るということだ。よくあるのは、成長中に資金調達を始め、成長がストップした時に実際に調達するというケースだ。そして同じく重要なことは、バリュエーションは成功とは関係なく、それどころか成功の確率とすら関係ない (Fundraising Rounds are not Milestones by Michael Seibel) 。いくつかのYCのもっとも優れた会社は、最初の小さなバリュエーションで調達を行った(Airbnb、Dropbox、Twitchは全て良い例だ)。ところで、調達したお金はあなたのお金ではない、ということを気に留めておくことが重要だ。 あなたには会社の期待値を上げるためだけにお金を使うという、受託者としてそして倫理的な/道徳上の義務がある。

また避けられないスタートアップ人生のクレイジーさの中にあっても、正気を保つということも大切だ。なので我々は常に創業者達に、休息を取り、友人家族と過ごす時間を作り、十分な睡眠と運動を、並外れて強烈で集中した仕事の間に取り入れるよう伝える。最後に失敗について少し話そう。 多くの企業は創業者が抜けることによって急速にだめになることが知られている。共同創業者等との関係性はあなたが思うより重要であり、共同創業者間の誠実なコミュニケーションは、将来の失敗を遠ざけることにつながるだろう。実際に、あなたのスタートアップの成功 ーそしてそれは人生においての成功でもあるー のためにできることは、単純にいいやつでいることなんだ(ポール・グレアムによる「意地の悪い人は失敗する」)。

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リファレンス

  1. ポール・グレアムによる「スケールしないことをしよう」

オススメの読み物

  1. 資金調達サバイバル・ガイド by ポール・グレアム

個人医院向けのクラウドレセプトコンピュータを開発しています。試してくださる方募集中です!ポール・グレアムのエッセイの翻訳、クラシック音楽のビジネスなどを書いていく予定です。

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