CSV(共有価値の創出)を担うコーディネーターという仕事 【BOOK】社会のために働く

地方創生は、東京への一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を底上げするという一連の政策ですが、それを実現するためには、民間企業や行政、またそこに住む住民が互いに協同することが不可欠であり、そこには必ず調整役が必要になります(質と業務内容は様々です)。

RCFは、東日本大震災後に生まれた復興コーディネーター集団でして、さまざまなセクターの枠を超えた調整(コーディネート)役となって活動されております。
コーディネーター事業というだけあり、現在までにキリン、グーグル、資生堂、積水ハウス、ビズリーチ、ヤフーなどの大手企業と、国や自治体、地域の方々、NPOなどが復興プロジェクトを進めるための連携をコーディネートし、企業とともにそのプロジェクトの企画・実行をサポートしています。

【どんな本なのか】

RCFが企業とともに連携して実施してきたプロジェクトの事例。またRCFの成り立ちから、所属する多様な経歴のスタッフたちの紹介。そしてRCFの活動の中で培われてきた理論が章ごとに記されています。

【学んだこと】

CSVという概念

マイケルポーターが2011年に、企業の社会への貢献はCSR(企業の社会的責任)ではなく、CSV(共有価値の創出)によるべきであり、企業と地域社会が共同で価値を創出することが重要という概念を提唱しました。

「共通価値の戦略」
ハーバード・ビジネス・レビュー(2011年6月号・ダイヤモンド社)
http://ur0.work/B4cl

著者の藤沢氏は、これからの時代にはCSV思考が欠かせないと言います。

「企業はこれからますます、地域社会の中での存在価値を問われる時代になります。先進国の未来を象徴する東北の復興に関わることは、自分たちの企業は地域社会にどんな価値を創出できるのかと考えるチャレンジでもあります」
「民間企業が復興支援に関わることの良さは、集中して成功事例を作れる点にあると私は考えています。国や自治体はどうしても「平等」が求められます。また、インフラを元に戻す「復旧」には予算がついても、震災後に生まれる新しい挑戦に予算をつけることは難しいものです。行政が越えられない壁を越え、積極的に成功事例を生み出すサポートをすることは、グーグルのようなビジネス思考を持つ民間企業にこそできる支援です」

大手企業は、助成金支援のみにとどまらず、震災後の社会課題の解決のため積極的に現場に関与し、プロジェクトの形成やフォローまでを実施するようになってきています。このように社会に向き合った結果として、すぐではないものの長期的には企業に利益が得られるという考え方をされています。本書では企業の本気度を伺い知ることができます。

官民NPOの連携

当初RCFは、コミュニティーが希薄だった被災地の人たちが考えるまちづくりに耳を傾け、行政の言葉を翻訳して伝えるサポートから、徐々に企業やNPOなどの間のコーディネートに広がっていったようです。

被災地に関わらず官民NPOの連携は近年それぞれの地域で見受けられるようになっています。地域を存続させるために、そして地域のリソースを最大限に活かすためにはそうしていかないと成り立たなくなってきているのかもしれません。

藤沢氏は官民NPOの連携について、

「東北では、釜石市とUBS、石巻市とヤフー、大船渡市と資生堂、気仙沼市とほぼ日刊イトイ新聞のような行政と企業の強い連携が生まれてきました。このように企業がまちづくりに深く関わっていくことは、行政にとっても住民にとっても、今までになかった視点をもたらす良い機会になっていると、私は感じています」
「地域の生き残りは、企業とつながりながら外に対する発信をしていかるかどうかにかかっていると私は思っています。それができる地域とできない地域では、大きな差が出てくるでしょう。逆に、企業としても地域を選んで中長期的に関わることで、「社会起点マーケティング」のきっかけを作ることができます」

コーディネーターの仕事

コーディネーターは一言でいうと被災地から生まれる新しいタイプの人材です。
企業は復興支援というかたちをとりながら、共有価値の創出を被災地で実行することで、競合に先んじていずれくる社会におけるルールメイカーにならんといていますし、行政や住民は自らでは創造的な復興に資する知見は持っていないために、外部の力を必要としています。コーディネーターはそれぞれを有機的に結びつけてチームを形成しながら共に走り抜ける存在だと言います。

著者でありRCFの代表でもある藤沢氏は、いずれここで実践を積んだコーディネーターたちが日本の各地域に赴き、地方創生を担う人材になってほしいと願っています。

「私が注目しているのは、アメリカのシティーマネージャーという職業です。アメリカでは、選挙で選ばれた市長が最初にするのがシティーマネージャーの指名です。このシティーマネージャーは、市長の任期の間、市長に伴奏し、調査や提案を行ったり、市民の理解を深めたりするなどの実務を行う人です。1万人以上の街に雇われるとだいたい年収は1,000万円くらい。任期が終わったらまた別の場所で別の市長に指名されて働きます。そういった、期間限定でまちづくりに関わる人が、今後、日本でも生まれていくといいなと思います。行政と住民と民間企業とNPO、全ての間に立つ経験ができる現在の復興人材は、その役割にぴったりです」

ここ十年の間に地域の住民がボトムアップ的に、地域の様々なセクターを繋げながら、また地域外のスキルも上手に活かしながらまちおこしをしているケースが増えてきました。日本全国どの地域にも必ずそういう人材やコミュニティーが存在しているのではないでしょうか。本書にあるようなコーディネーターが地域に介在し、上位のフェーズをとりまとめながらそういった地域の人材やコミュニティーと手を結ぶことで、今までにない地方創生のかたちが見出されるのではないかと期待しています。

社会のために働く 未来の仕事とリーダーが生まれる現場 単行本(ソフトカバー)– 2015/3/11

藤沢 烈 (著)

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