Inspiredを読んだので、そのサマリ

Hirofumi Tanahashi
15 min readFeb 12, 2018

--

Inspiredというプロダクトマネジメントの名著を読み、とても学びが多かったので、重要な部分を忘れないようにまとめます。この記事には自分の考えはなく、本のサマリです。

Inspiredから得た学びと、それをどうやって生かしていくかについてはこちらの記事に。

プロダクト開発における役割について

プロダクトマネージャー、プロダクトマーケティングマネージャー、プロジェクトマネージャーは全然別の役割。必要なスキルやトレーニングも異なる。インタラクションデザイナーとビジュアルデザイナーも同様に異なる。

それぞれの役割は以下の通り。

  • プロダクトマネージャーの役割は、価値ある製品を見つけ出し、詳細に定義すること
  • プロダクトマーケティングマネージャーの役割は、世界に対して製品を語ること
  • プロジェクトマネージャーの役割は、製品を市場に送り出すこと

プロダクトマネージャーの役割とは

プロダクトマネージャーの重要な役割は2つ。
1. 価値のある、使いやすい、実現可能な製品を「見つけ出す」こと
2. 究極の製品を定義するのではなく、目標を達成するために必要最小限までそぎ落とされた製品を定義すること

  • ターゲットとする顧客の解決すべき問題を深く理解して、ニーズにあった製品を考えつくことができるかどうかをじっくり検討する
  • プロダクトマネージャーの一番大切な仕事をあげるとすると、製品のアイデアを実際のユーザーと一緒にテストすること
  • 製品を見つけ出すのは、プロダクトマネージャー、インタラクションデザイナー、ソフトウェアアーキテクトの共同作業
  • 価値のある使いやすい製品を生み出すためには、実際のターゲットユーザーに対して、早い時期から、事あるごとに、製品のアイデアを検証しなければいけない
  • 初期の検証には、正式版が正確にイメージできるハイフィデリティプロトタイプが必要
  • プロダクトマネージャーの主な任務は2つ。製品の市場性を評価する事、開発すべき製品を定義する事
  • アイデアは様々なところから飛び出してくる。そのアイデアを吟味して、製品化する価値があるかどうかを見極める
  • 製品要求の決定は、詳細な要件、特にユーザーエクスペリエンスなどと切り離して行うことはできない
  • 実装時には、想定していなかった使い方や十分に検討をしていなかった使い方など、必ず問題がでてくる。これは最高の製品開発チームでも当たり前のように起きること。プロダクトマネージャーは問題に立ち向かい、できるだけすばやく答えを出すこと、その間もずっと製品を必要最小限まで削ぎ落とす努力を怠らないこと。
  • ユーザーを深く理解することが重要。ユーザーと直接コミュニケーションをとる、特に対面で話すことをせずに、深く理解することはできない
  • すべてのインタビューには立ち会う。そこから得られた情報を解釈し分析するのを人任せにしてはいけない
  • プロダクトマネジメントは要は何かを選択することに尽きる。どの市場機会を追求すべきか、解決すべき課題はどれか、どんな機能が一番大きな価値に繋がるのか、製品化までの時間との折り合いをつける最適なポイントはどこか、どの顧客が一番重要なのか、といったことを決める。全てで正しい選択をできなくても、多くで正しい選択をいないと製品を成功に導くことはできない
  • 痛み、怒り、不満を見つけること。このような負の感情があるところはイノベーションのチャンス

良いユーザーエクスペリエンスを作るには

価値のある、使いやすい、実現可能な製品を「見つけ出す」過程で、重要なのがユーザーエクスペリエンス。良いUXはどのように作るのか。

インタラクションデザイン

対象となるユーザーを深く理解し、ユーザーにとって作業効率のいいタスクやナビゲーションやフローを考察すること。通常インタラクションデザイナーは、製品要求をワイヤーフレームにマッピングし、ビジュアルデザイナーに渡す

ビジュアルデザイン

ワイヤーフレームに肉付けし、実際にページのユーザーインターフェースの見た目と雰囲気を創作。大事なのはユーザーの感情に語りかけたり、ユーザーの感情を呼び起こしたりすること

ラピッドプロトタイピング

プロダクトマネージャーやデザイナーのアイデアを反映したプロトタイプをつくって実際のユーザーでテストするという作業を繰り返す

ユーザービリティテスト

ユーザーの調査と分析をする。検証に参加してくれるユーザーとして適切な人々を集めること、検証作業を行うこと、検証結果を評価すること、代替案を提示すること。

  • これらのデザイン担当者はプロダクトマネージャーと密に連携して、ユーザーを満足されるために製品要求とデザインが折り合うところを見つける。
  • デザイン中のソフトウェアは必ず製品として実現されるものでなければいけないので、ソフトウェアアーキテクトに進捗状況やプロトタイプをレビューしてもらう。
  • 大掛かりな製品の場合は、4つの役割に専任の担当者がつく。
  • 良い製品を作るためには、プロダクトマネージャーが市場を把握してソリューションを考えている段階から、ユーザーエクスペリエンスデザインをできる人も関わることが重要。

製品仕様はハイフィデリティプロトタイプで伝える

ハイフィデリティプロトタイプとは、要はユーザーエクスペリエンスがある程度ちゃんと再現できているレベルのプロトタイプ。バックエンドの処理など裏側まで作り込む必要はないが、ユーザーが触ったときに本物にできるだけ近い体験ができるプロトタイプ。なぜそれがいいのか。

  • 実際のユーザーエクスペリエンスを正確に再現できる。みんなが理解しやすい。ソフトウェアの動作を正確に表現しないといけない。ユーザーエクスペリエンスを、機能要求、情報アーキテクチャー、インタラクションデザイン、ビジュアルデザインで表現できるから。
  • 作る過程で細かな挙動やUIを考えざるおえない。今はいいツール(Sketch&Invisionとか)もあるので、あまりコストをかけずに作ることができる。
  • プロトタイプを補足する方法として、ユースケース(ユーザーストーリー)も役立つ。もっとも重要なフローを言葉で説明する。
  • 一番の目的は、製品のアイデアを実際のユーザーと一緒に試すことがでいること。これをやらないと製品が目的を果たせるかどうかを確認できず、無駄なものをその後何ヶ月もかけて作ることになりうる。

市場性の評価

  • 市場性評価はMarket Requirement Document(MRD)や、その軽量版であるOpportunity Assessmentを使うのがおすすめ。
  • MRDは製品の市場性を記述するためのものであって、ソリューション(製品)を書くものではない。
  • 十分に市場性があって、自社でそのアイデアを実現できる可能性が高いと判断された場合に、次はどういう製品にするのか(必要とされる特性や機能、ユーザーエクスペリエンス、発売の基準など)を見つけ出す必要がある。これがプロダクトマネージャーの仕事の核心。
  • それら何を作るのかをまとめたものが、Product Requirement Document(PRD)となる。これを紙ベースではなく、プロトタイプがおすすめ
  • MRDやPRDの問題は、書くのに時間がかかりすぎる、書いてもちゃんと読んでもらえない、本来書かれるべきことが書かれていない。

効果的な製品の市場性評価は、10個の質問に答えることでできる。

Opportunity Assessment

1. 製品化によって具体的にどんな問題を解決するのか(バリュープロポジション)
2. 誰のためにこの問題を解決しようとしているのか(ターゲット市場)
3. 市場の大きさは?(市場規模)
4. 製品化の成功をどうやって評価するのか?(指標、収益戦略)
5. 現在、他に競合する製品はあるか?(競合の見通し)
6. なぜ当社がこの製品をつくるのに最適なプレーヤーであると言えるのか?(差別化要因)
7. なぜ今なのか?(市場投入の時期)
8. どうやって製品を市場に出すのか?(市場投入戦略)
9. 成功のために絶対に必要な要素は何か?(ソリューションの要件)
10. これらを前提とした上で、最終的な提案はなにか?(やるかやらないか)

この質問リストの中では、実際のソリューションには触れていない。製品の市場性を評価するときは、解決すべき問題だけを議論しなければいけない。頭に浮かんでいる特定のソリューションについては考えない。問題を明確にすることが重要。

スタートアップのプロダクトマネジメント

まずプロダクトマネージャー、インタラクションデザイナー、プロトタイパーの3つの機能を配備する。このチームでいち早く製品を見つけ出す作業を行う。やることは2つ。

  1. 最終的なユーザーエクスペリエンスを疑似体験できる、ハイフィデリティプロトタイプを作る
  2. この製品デザインを、実際のターゲットユーザーと一緒に検証する

このやり方では、小さな改良、時には大きな変更を繰り返しながら、日々進化していく。何十ものバージョンのプロトタイプを作ることになる。これを繰り返すことで、確実に売れる製品プロフィールに近づいていく。この製品を見つけ出す作業には、普通は数週間から数ヶ月かかる。これが終わった時点では次のような状態になっている。

  1. ターゲット市場で検証済みの製品プロフィールができ上がっている。
  2. 充実した製品プロトタイプが出来上がっている。このプロトタイプはエンジニアリングチームが作業を進めるための本物そっくりの仕様となる。
  3. どこに向かおうとしているのか、売れる製品にするためにはこの後何をすればいいのか、ずっとよく理解できている

この状態のところに、エンジニアリングチームを登場させると、とてもうまくワークする。どんな製品を作る必要があるのかをしっかり理解できており、確実な仕様が用意されているから。速いスピードで質の高い製品を作ることができるだろう。

成熟した市場で勝てる製品を作るためには

  • 大事なことは2つある。一つは、ターゲット市場と今ある製品の不十分なところを理解すること。これをやるのにオススメの手法は、製品のユーザビリティテストだ。自分の製品だけでなく、ライバルの製品を理解するためにも使える手法。
  • もう一つは、その時点で可能なことがどんどん変わっていくと知っておくこと。新しい技術はそれまで不可能だった、あるいは実用化の目処が立たなかった新たなソリューションを可能にしてくれる。絶えず関連技術をどう生かせるかを考え続けるのは、楽ではないが、そこで差がつく。

優秀なプロダクトマネージャーは、みんなが望んでいることを、今まさに可能なことと組み合わせる。AppleやGoogleはこのことをよく理解している。ほとんどすべての市場に置いて、製品の機会はあらゆるところにある。でもそこで、プロダクトマネージャーはどんなニーズがあるか特定して、問題を解決するために技術を活かす、新たな方法を探し求めなければならない。

プロダクトマネージャーに必要なこと

  • 技術の進歩は急速なので、新しい技術を短期間で身に付けることや、新しい分野で問題解決に取り組むことが得意でなければいけない。
  • プロダクトマネージャーの面接では、今までやってきた製品開発で、何を学ばなければいけなかったか、学ぶのにどれくらい時間がかかったか、そして身につけた知識をどのように活用したかを見るようにしている。
  • プロダクトマネージャーの評価は、NPSは製品や顧客経験価値(カスタマーエクスペリエンス)に焦点を当てている。NPSを意識することで会社が顧客を幸せにすることに集中するようになる

プロダクトマネージャが実践すべき10のこと

1. プロダクトマネジメントの役割
2. ユーザーエクスペリエンスの役割
3. 製品の市場性の評価
4. ユーザーモニター制度
5. 製品原則
6. ペルソナ
7. 製品のアイデアを見つけ出すことに集中する
8. プロトタイプの活用
9. ターゲットユーザーとプロトタイプをテストする
10. 改善するためにはデータを使う

プロダクトマネージャーが気にかけなければならない10のこと

1. この製品は、ターゲット顧客の心に届いているのだろうか
2. 私たちは、できる限りのことをやり尽くしてこの製品を使いやすいものにしただろうか
3. この製品は、競争に勝てるだろうか。今現在の競争ではなく、製品をリリースする時点での競争に勝てるだろうか
4. 私はこの製品を実際に買ってくれる顧客のことを理解しているだろうか。私が望んでいる製品ではなく、自分たちが実際に作ろうとしている製品を買ってくれる顧客についてである。
5. この製品は、本当に差別化できているだろうか。どう差別化できているかを説明できるだろうか
6. この製品は、実際に動くだろうか
7. この製品は、欠けているところがなくて、あるべき製品の全体となっているだろうか。顧客はこの製品をどう思って買うだろうか。それは、私たちが計画している売り方と一致しているだろうか。
8. この製品の強みは、顧客にとって大切なことと一致しているだろうか。その強みを可能な限り積極的にアピールしているだろうか。
9. この製品にお金を払う価値はあるだろうか。だとすればいくらか、その理由は。顧客はこの製品に代わるものを他でもっと安く手に入れることができるだろうか。
10. 私は、製品開発チームの他のメンバーがこの製品のどこが優れていると思っているかを、理解しているだろうか。それは私の考えと一致しているだろうか。

これらを真剣に、継続的に考えなければいけない。毎日の考える時間が大切。

製品を生み出すチームがやること

  • 優れた市場機会を追求することと、優れた製品による解決方法を提供することに尽きる。
  • 逆に同時に重要なのは、有望ではないアイデアに多くの時間とお金が注ぎ込まれてしまうのを、前の段階で見極めてやらないと決めること
  • 製品を見つけ出す段階では、新しいアイデアを広く積極的に求め、たくさんのユーザーや顧客と話し、新しい技術をどんなふうに活用できるか聞いて回り、製品コンセプトに肉付けしてこれを検証し、その製品全体の方向性について短期的、長期的な視点からじっくり検討する。結果的に市場で勝てる製品となるかどうかは、デザインと機能の絶妙な組み合わせを見つけられるかどうかにかかっている
  • 常に並行して2つのバージョンで作業を進める。バージョン1のエンジニアリングが始まってたら、すぐにバージョン2の発案作業を開始する。新しいアイデアを生み出す努力を絶やさないようにする
  • 製品開発のパートナーを見つける。発売の時点で名前の知られた人(企業)が製品を使って満足していると言ってくれるようにする。これにより営業担当者の仕事は劇的に楽になる。そのパートナーをつくるためにユーザーモニター制度を活用する。

ペルソナを作るメリット

  • ターゲットとなるユーザーへのインタビューからペルソナを作り出す(妄想で作ってはいけない)。プロジェクト開始時のできるだけ早いうちに。どのような顧客に提供しようとしている価値がもっとも刺さるのかを見極める。ペルソナかどうかを見分ける簡単な質問を作る。
  • ターゲットから外れている人がわかることも重要。製品はターゲットを満足させるものをつくる。
  • 誰のための製品か、彼らはどんなふうにそれを使うのか、なぜ彼らはその製品に関心があるのかといったことを、製品開発チームに説明する際にペルソナは便利。
  • チームで共有認識を持つこと。各メンバーが様々な問題にぶつかったときに正しい判断ができるように。
  • 複数のペルソナがいる場合に、それぞれのアップデートの特に重要なターゲットとなるペルソナを一つ選ぶ。重要なペルソナにフォーカスする。

ユーザーモニター制度

  • ターゲット顧客をしっかり理解することと、製品発売までに確実なリファレンスカスタマーを確保しておくこと。この2つに取り組むためにはユーザーモニター制度がおすすめ。
  • ターゲット市場から少なくとも6人のユーザーに集まってもらった上で、この人たちの意見を聴きながら、この人たちが満足して、実際に使ってくれて、製品レビューを発信してくれるような製品を実現すること。
  • プロジェクトがはじまるときに顧客を募集。既存顧客でもいいし、今後顧客になってくれそうな人でもいい。肝心なのはこの製品化で解決しようとしていることが、彼らにとっても現に問題と感じているものであり、みんなできるだけ早く解決してほしいと思っていること。
  • プロジェクトの間ずっと、プロダクトマネージャーはモニターの人たちと付き合うことになる。彼らにプロトタイプを見せて、一緒にテストして、細かい質問を何百もぶつけて、彼らの使用環境で正式リリース版の候補をテストする。一般公開前にも先にこの人たちにリリースし、実際に使ってもらって満足してもらえるようにしよう。

イノベーションとは

イノベーションが全く新しい問題を解決してくれるということはめったにない。ほとんどの場合、イノベーションとは、今ある問題を新しいやり方で解決することである。

人々が今のソリューションに手を焼いているのを観察するのは、イノベーションのチャンスを浮かび上がらせるには最高の手法である。

--

--