ホラクラシー組織のルール「Holacracy Constitution」をまとめてみた。【前編】

Hiroki Shimada
Apr 30, 2018 · 12 min read

scoutyはホラクラシー組織として運営しているが、実際にホラクラシー組織を作る上でロール(Role)の管理方法や組織体制を実践する機会が多くなってきて、それらを学習する機会も増えた。ホラクラシー組織については、その概要やメリットを説明する記事は多いが、細かい規定やルールの作り方を解説する記事が少なかった印象であったので、今回はそのようなことを中心にまとめて記事化を行なった。

ホラクラシー組織というのは、簡単に言えば役職や上下関係をなくし、従来の階層構造とは異なるフラットな組織体制のことで、組織に必要な機能を役職ではなくロール(役割)として分解していることに特徴がある。その概要については下記のような記事を参考にされたい。

参考記事:役職なし、上司なし、管理なし!「ホラクラシー」は近未来の組織スタイル!?- Fledge

(2018年9月10日追記:上記に書いた定義は憲法の翻訳や学習を続けるうちに本来のホラクラシー組織の意味とは異なることがわかった。本来の意味に関しては こちら

今回参考にしたのは、ホラクラシー組織のコンサルティングや、ホラクラシー組織用のロール管理ツールGlassFrogを提供するHolacracy Oneという会社のやり方で、ホラクラシー組織についての文献や記事を多く出している。同社自体も当然ホラクラシー組織体制であり、同社のメンバー紹介ページから分かるように、 CEOすら定義していないという徹底っぷりだ。

今回は、彼らがホラクラシー組織のルールとして定めている ホラクラシー憲法(Holacracy Constitution) の内容を翻訳をしつつ掻い摘んでまとめた。ホラクラシー憲法はかなり長いので、3編の記事にまとめた。記事へのリンクと主な内容は下記の通りである。

※ 本記事は翻訳記事ではなく、あくまでそれらの内容をまとめたものになります。わかりやすさを重視して、適宜追加説明や省略を行なっています。

※ 原典にならい用語は太字で書いており、日本語に訳しにくい部分はそのまま英語表記としています。


はじめに

この憲法(Constitution)は組織のガバナンス及び運用のためのルールやプロセスを定めるもので、まず最初に以下の2つのロールを規定する。

  • ラティファイアー(Ratifiers):組織のルールや権限構造を定める役目
  • パートナー(Partners):組織のガバナンスや運用規定を定めることに参加することに同意した人たち

ホラクラシー憲法ではパートナーは上記のように書かれているが、ホラクラシー組織においては、組織の構成員を皆パートナーと呼ぶのが慣習のようだ。

第一部:ロールを活用する

ホラクラシー組織において組織の構成要素であるのがロール(Role)だが、ロールは目的(a Purpose)・領域(Domains)・責務(Accountabilities)の3つの要素から成り立つ。

目的というのは、そのロールが達成しようとしている結果のことで、目的があることで、そのロールは他のロールの領域を侵さない限りいかなる行動をとっても良いことが保証される。

領域というのは、そのロールが、所有し、コントロールしているリソースや活動のことで、復数あることも許される。ロールにアサインされた人はその領域のオーナーということもでき、他のメンバーは、その領域に影響を及ぼす場合はそのロールに明示的に許可を取らなければいけない。

責務というのは、組織がそのロールに期待している活動のことである。領域とは違い、責務は他のロールの行動を制限することはない。例えば、あるロールが「データベースのアップデート」を責務としている場合でも、これは他のロールが「データベースのアップデート」をしてはいけないという意味にはならない。

定義だけだとわかりにくいので、GlassFrogチームのひとつのロールであるGrassFrog API を例にとろう。Grass Frog APIロールの目的・領域・責務は以下のようななものである。

  • 目的:内部的にも外部的にも素晴らしいAPI体験を作る
  • 領域:API バックログ, GrassFrogのウェブアプリのユーザーが触れるAPI関連機能, GrassFrog API機能
  • 責務:API機能のデザイン・優先順位付け・実装・顧客へのデリバリなど

組織のパートナーは、組織の各ロールの目的と責任範囲を明文化し、組織の理想的な状況と、現実の状況の差を埋めることに責任を持たなくてはいけない。この組織の理想の状況と現実の状況の差のことひずみ(Tension)と呼び、このひずみをできるだけ小さくすることもまたパートナーの仕事である。

また、組織のパートナーは、

  • ネクストアクション:すぐに実行できるアクション
  • プロジェクト:達成するのに復数のアクションを要する特定の成果

を定義することで、目的と責任範囲をどのように定めるかについて定期的に見直すという責任がある。パートナーは、このひずみを常に追い続け、ネクストアクションとプロジェクトが常に理想的なものになるように勤めなければいけない。

第二部:サークル構造

「サークル」というのは、さらに分解可能なロールのことで、それ自体も普通のロール同様に目的・領域・責務を持つ。サークルはさらに細分化された定義ロール(Defined Roles)から成り、そのロールを埋めている人は誰でも、そのサークルメンバー(Circle Member)とみなされる。

下記のGlassFrogのホラクラシー組織図を例にとると、GlassFrogを開発するGlassFrogDevelopment というサークルの中に、Lead Linkや Technical AdviserというRoleが存在し、これがGlassFrogDevelopmentのDefined Roleということになる。GlassFrogDevelopmentというサークルは、それ自体がその親サークルGlassFrogのRoleとなっている。

https://app.glassfrog.com/organizations/5#circle-24990

サークルおよびロールのドメインなどを制定および変更するには、「ガバナンスプロセス(Governance Process)」と呼ばれる手続きを踏んで変更しなければいけない。

サークルには、Lead Linkといロールが存在する。Lead Linkは、そのサークル内のロールの任命を任されたロールである。Lead Linkの責務は、

  • ロールをメンバーにアサインすること。
  • そのロールが本人にフィットしているかどうかを常にモニタリングし、そのフィットをより良いものにするためにフィードバックを行う。
  • サークルのメトリクス定義をし、戦略や優先順位を定める。
  • サークルのリソースを、そのサークル内のプロジェクトやロールに割り当てる

また、Lead Linkの目的は、そのサークルの目的と完全に一致する。基本的に、Lead Linkに新しい責務や領域を追加することはできないが、同じ役割のロールを作るなどして、削除することはできる。

サークルには、コアサークルメンバー(Core Circle Members)が存在し、そのサークル自体のルールを決めるガバナンスプロセスに参加することができる。

以下のロールをもつ人たちがコアサークルメンバーとなる。

  • サークルの定義ロールを埋めているパートナー。つまり、サークルの直下のロールを持っているパートナー。( ただし、パートナーのアサインされているロールがごく小さなロールだとLead Linkに判断された場合は、これに含まれない)
  • Rep Link(役割は後述)
  • Lead Link
  • Facilitator(役割は後述)

他にも、Lead Linkによってコアサークルメンバーとして必要と判断された人はコアサークルメンバーに任命することができる。

空いているロールは、Unfilled Role としてサークル内に残される。

また、Lead Linkは責務を誰が果たすか不明確にならない限り、ひとつのロールに複数の人をアサインすることができる。それを不明確にしないためのやり方として、フォーカス(Focus)を定めるというものがある。フォーカスというのは、それぞれの人がロールの遂行の上で特に集中する文脈や分野のことである。

ロールは、Lead Linkに通知をすることで、いつでもロールに任命されている本人の意志で辞めることができる。

各サークルは、Facilitator, Secretary, Rep Linkというロールを含んでおり、これらは 選出ロール(Elected Role)と呼ばれ、後述のプロセスによって選出される。それぞれのロールの定義は以下である。

  • Facilitator:サークルを、憲法(Constitution)に沿って管理・運用することを目的とする。規約上必要なミーティングのファシリテーションを行い、必要に応じて子サークルのミーティングを聴講することが責務である。また、規約に反する行いややり方を見つけたときに、Process Breakdown(第三部で後述)を宣言する。
  • Rep Link:サブサークル自体の目的と同じ目的を持っているロール。責務は、サブサークル(自分のサークル)がスーパーサークルによって制限されたり妨害されたりするのを阻止すること。また、スーパーサークルに、サブサークルの健康状態をKPIレポートなどを通じて通知・可視化すること。
  • Secretary:サークルのミーティングのスケジューリングを行い、サークルメンバーにそれを通知し、ミーティングの内容の記録および公表を行うことを責務としている。また、ホラクラシー憲法の解釈を行う(解釈が分かれた場合は、Secretaryの解釈に従う)。

Facilitatorは、これらのロールの選出のファシリテーションを行う。コアサークルメンバーは誰でもこの選出に立候補することができる。ただし、Lead LinkはRep LinkとFacilitatorにはなれない(Secretaryにはなれる)。また、ひとりが復数のロールにまたがることも可能である。Lead Linkはこのプロセスによって選出されるわけではない。

Facilitator は、各選出に対して期間(選出ロールの任期のようなもの)を設定する。その期間がすぎれば、Secretaryが中心となり新しい選出を開始する。ただし、期間が過ぎる前であっても、コアサークルメンバーは次の記事で後述のプロセスによって新しい選出を始めることも許される。

選出ロールが何らかの理由で空いている場合や、ふだんそのロールに当てられている人物がサークルのミーティングに出席できない場合などは、以下の優先順位で代理人を充てる

  1. 明示的に代理人として指名されている人
  2. Facilitator
  3. Secretary
  4. Lead Link
  5. 代理をやると一番最初に申し出たコアサークルメンバー

サークル内の定義ロールは、メンバーの増加に伴いサークルに拡張することができる。その場合、そのサークルのことを元のサークルのサブサークル・子サークル(Sub-Circle)と呼ぶ。元のサークルのことをスーパーサークル・親サークル(Super-Circle)と呼ぶ。ロールには復数の人の任命が許されるということを前述したが、ロールに任命される人の数が増えて、個々人の責任分担が不明確になってきたら、それはサブサークルに変えるべきというサインかもしれない。
スーパーサークルとサブサークル間で、定義ロールの移動を行なっても良いが、これらの手続きはすべてガバナンスプロセスに則って行われなければいけない。

ガバナンスプロセスを通じれば、サブサークルを削除することもできる。その場合、その中身まで全部削除しても構わないし、その一部の機能をスーパーサークルに移動させることで削除しても良い。削除したのちに、普通のロールに戻すということも可能である。

サブサークルのLead Linkは、スーパーサークルのLead Linkによって任命される。

サークルは、Cross Link 規定を作ることができる。これは他の組織やチームをサークルのガバナンスプロセスに巻き込むためのもので、巻き込まれた側の組織や個人(組織内の他のロールの人など)は Linked Entity と呼ばれる。対象となっているサークルは対象サークル(Target Circle)と呼ばれる。

Linked Entityをひとつのロールとみなした時、そのロールは Cross Link Role と呼ばれ、そこに任命された個人を Cross Link と呼ぶ。

Linked Entityがサークルまたはグループのとき、そのサークルまたはグループでの通常のロール任命のプロセスに則って、Cross Linkを任命する。Cross Linkは、Cross Link規定で特に定められていない限りは、1人である。Cross Linkは、対象サークルのコアサークルメンバーであり、対象サークルのガバナンスプロセスに参加できる。


ホラクラシー組織の最もコアな部分であるロールとサークルについて記された第一部・第二部のまとめは以上だ。ガバナンスプロセスやホラクラシー組織の運用プロセスについては、中編後編の記事で扱っている。

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