Coubic の創業背景

倉岡 寛
6 min readJun 21, 2014

2014年4月、半年間の準備期間を経て、スモールビジネス・ローカルビジネス向けに、ホームページ作成から予約・顧客管理まで簡単に使えるオールインワンビジネスツール、予約システム Coubic (クービック) をリリースした。

まだまだこれからもっと事業として大きくしないといけないわけだが、最近、今までのキャリア含めて、起業の背景や、今後我々が目指す方向性について聞かれることがあるため、頭の整理のために久しぶりに記事を書くことにした。

今までのキャリア

僕は新卒としてグーグルに入社した後、その後グリーに転職し、2013年10月に起業した。グーグルにいる時から起業が選択肢として頭の中にあったわけだが、それは環境による影響が大きかった。同期仲間が、グーグルを辞めてオバマの大統領選挙の分析チームを率いているかと思いきやその後起業したり、あるいは、ポーカープレイヤーとして世界中を放浪してきたと思いきやまたグーグルに出戻りしたり。何でもありな状況。それまでは、「起業」や「退職」といえば、リスクをとって一大決心して背水の陣で臨む、というイメージがあったのだが、自分が思っていたよりもずっとカジュアルな形で捉えられているようだった。

また、「世の中をよくする」という意識を組織全体として持っており、それを社内外問わず、着々と実践している人たちを見ていると、「自分だって!」と必然的に思うようになっていった。

とはいえ、石橋を叩いても渡らないことが多い自分としては、起業してもうまくいくイメージがわかず、グーグルを辞めた後は当時まさにグローバルに展開しようとしていたグリーに転職した。

グーグル時代は、イチ企画屋・調整屋としてのプロダクトマネージャーで、PLなどを管理することはなかったが、グリーでは「ビジネス」としての事業を進めるためのスキルを学んだ。そして何より、グリーをここまで成長させた担い手が身近にいたことは大きかった。在職中に会社全体にとって様々な難題が降りかかってきたけど、逆境における、ハングリー精神、粘り強さは尋常ではない。

起業

ところで、仕事で欧米と日本を行き来することが多い中、日本での暮らしの様々な場面で、物事がスムーズじゃなくて、イライラしている自分に気づくことが多くなった。イライラ頻度が以前に比べて多くなったというより、そういうイライラに対して、意識的に「これってなんとかならないんだっけ?」と思うようになった。

1つ例をあげると、引越し業者を探す時のフロー。
ググって必要項目をウェブ上で登録するわけだが、登録した瞬間に電話が色んな業者からひっきりなしにかかってくる。自分が仕事してようが何してようがお構いなしにかかってくる。それぞれ見積もりを出してくれるのだが、自分がどの業者と何の話をしたのかなんてすぐ忘れるし、何より、電話で何社からも同時にインタラプトされるのは勘弁してほしい。ネットでなんとかならないのか。

他方、アメリカでは運転者付き貸し切り自動車をスマホで簡単に手配できる Uber や、空きスペース予約サービスの Airbnb など、現実社会の車や場所の予約から決済までをネットで簡単に行える、いわゆる O2O サービスが数多く出てきており、圧倒的に物事がスムーズになってきている。この流れが他の分野にも広がっていくのは時間の問題に思えた。

そんな中、同じようなサービスを自分たちで作れないものかと仲間で模索するようになり、皆のタイミングが良かったこともあり、一緒に起業をした。

とはいえ、起業した当初から今のクービックの形を想定しているわけではなかった。O2O サービスと言えど、範囲は広いしドメインもたくさんあり、具体的に何か明確なイメージがあるわけではなかったが、とりあえず、どんなドメインであれ「予約」は必要だろう、ということでプロトタイプ作りから始めた。色んな人にヒアリングしてアドバイスを頂きながら、何かきっかけをつかめればよい、という感じで進めていた。

そんなことを続けていく中、グーグル時代の元同僚から、テスラモーターズの試乗会の予約管理に困っているという話を聞き、具体的な問題に取り組み始めたいと思っていた我々は、サービスの向上と仮説検証のために、即座に飛びついた。

数多くの現場の要望を聞きながら、開発を進めるのは得難い経験だった。よく考えると、今までのキャリアではそういうことをしたことがほとんどなかった。もちろん、ユーザーフィードバックなどを受けたり、常にネット上の声を拾ったりしていたが、どちらかというとプロダクトアウトで物事を考える傾向があったし、本当の意味で、face to face で見込み顧客と対話しながらサービスを開発していく経験がなかった。

そういうプロセスを続けていく内に、最初想定していた Airbnb などの B2C 寄りの O2O サービスから、B2B 領域の O2O サービスにシフトしていった。予約以外でも、我々が想定していなかった現実世界における問題も次々とでてきて、より広大な、解決するに値する領域に思えたからだ。スモールビジネスやローカルビジネスにフォーカスし始めたのは、ちょうどその頃だ (この期間における、開発・改善プロセスはこちらに寄稿)。

予約管理や顧客管理ツール含めて、B2B ツールは世の中に既にたくさん存在している。ただし、実際にそのようなツールが安価で、誰でも使いやすい形で提供されているかというとそうではない。それならば、そこに切り込んでいってサービスを誰でも使えるような形で提供していけば、個人的に感じた小さなイライラだけでなく、世の中を少しでもスムーズにしていくことに寄与できるのではないか。そんなことを思うようになった。

これから

半年間の開発期間を経てリリースにこぎつけたわけだが、自分たちの仮説を検証する絶好の機会になった。また、当初想定していなかったユーザーにも使って頂いたりして学びも多い。一方で、プロダクトで足りない部分も明確になり、改善中。

サービスをリリースした当日は、オフィスが入っているビルで火災があり、おかげでプレス発表をキャンセルせざるを得なかったり、命の危険を感じたりととんでもない 1 日になったが、いずれ振り返った時、会社の逸話として語られるようになるくらいに、事業を成長させ、チームの皆で少しでも世の中をスムーズにしていくことに貢献できればと思う。

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