新たな環境での営業初日。

N先輩から電話があった。ボクが取り扱う建材を設計物件で検討しているという。なんというすばらしいスタートだろう。

『でな、それはそうと、いま死ぬほど忙しいのよ。協力してもらえる構造設計者、知らんか?』

この状況下で断れるわけもなく全力で考える。後回しにするとあんがい思い浮かばないんだよ、こういうことは。

『E先輩はどうですかね?』

ボクを含めて皆同じ設計事務所出身なのだが、最近のやりとりはないことが分かった。E先輩に顔が効くK後輩の出番だ。

『というわけで、E先輩の連絡先を教えてくれんか?』 『いいですよ。後でメールします。あ、頂いた電話で恐縮なんですが、協力してもらえる設備事務所を知りませんか?』

この後輩にはいつも助けられている。ここで恩返しせねば!と二つ返事で電話を切って再びN先輩へ。

『というわけで、まずは先輩の知り合いの設備設計事務所を紹介してください!』

で、なんとか仲立ちを全うして本題のE先輩へ連絡をしてみた。関西の震災の年に大阪事務所に配属されたボクと、東京事務所から短期応援に来ていたE先輩とは1ヶ月ほどしかラップしておらず、ボクのことは覚えていなかった。ただ、震災の調査業務の話をしているうちに共通項が見つかってきた。ボクとしては業務依頼を切り出したかったけど、ちょっとそんな雰囲気ではない気がする。

『久しぶりにみんなで昔話でもしたいねぇ~』 『は、はい!暑気払いをしましょう!』

再びN先輩へ報告。

『というわけで、先輩。まずは暑気払いです!話はそこからですよ。先輩の事務所近辺で店をお願いします。さくら水産はかんべんですからね!スケジュールはボクが調整しますから。』

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いましがたやっと一段落。

そんなときにi 後輩からメッセが入った。建材業界でこいつとは苦楽を共にした仲で、後輩というより仲間みたいなものだ。いまはゼネコンの設計部にいる。与太話を飛ばしつつ、そういやこいつもいつも殺人的に忙しいわけで、昨今の修羅場の話でも聞いてやろうとしたら、意に介して業務はここのところ落ち着いているという。

『Nさんのところにずいぶん捌いてもらって助かってま~す』

・・・あ。N先輩が事務所を設立したときに客先としてi 後輩を紹介したのはオレだった。

『キ、キサマか!N先輩をキャパオーバーに追い込んでいる一因は!』

という叫びは自らの身体にすばやくしまいこんだ。因果のめぐりに軽い目眩をおぼえたからだ。