事業立ち上げ後に求められる「やりきり力」

堀 新一郎(Shinichiro Hori)
12 min readJun 28, 2017

--

先日、East Venturesさんと共同で運営させて頂いているアクセラレータ・プログラムのCode Republicにて、起業相談会を開催しました。

一週間前の告知にも関わらず、速攻で20名の起業家の方にご応募いただき大盛況でした。月1ペースで開催していきたいと思っています。一度相談した方でも、何度でもご応募いただければ幸いです。

次回は7/7七夕に開催です。奮ってご応募下さい。

さて、Code Republicでは、East VenturesとYJキャピタルの投資先の先輩起業家の皆さんにゲストディナーにお越しいただき、起業間もない起業家の皆さんに様々なアドバイスをして頂いています。

先輩起業家の方とお話する中でよく出てくる単語、『やりきり力』について今日は寄稿したいと思います。

起業家の皆さんは、起業される際に幾つのビジネスアイディアを準備されていますか?1つ?3つ?5つ?

BASEの鶴岡さんはCAMPFIRE家入さんとビジネスアイディアを100個検討したとか、ゴロー花房さんはピクスタ古俣さんと数十個検討したという話を聞きました。100個って凄いですね。。。

きっと皆さんも沢山のビジネスアイディアの中から、「これだ!」と思うものを選んで起業されていると思います。沢山アイディアを出せば良い、というわけではないですが、100個近くのビジネスアイディアを考える労力って半端ないと思います。そのアイディアを絞り出す努力、継続されていますか?

先日、Code Republicにて8社目に採択された起業家と第1回メンタリングをしました。そのスタートアップは、数多あるビジネスアイディアの中から、クラフトビールのデリバリー事業というアイディアを選び、サービスをスタートさせました。

メンタリング初日のアジェンダは、「今後3ヶ月でどうやってサービスをグロースさせていくのか?」でした。ユーザーをとにかく獲得して目標とするGMVを達成する、という計画は立てているものの、具体的な施策が考えられていませんでした。

ここで、最初のビジネスアイディア候補を出した時と同じ情熱を持って、施策のアイディア出しをしないといけません。

どうやってアイディアを出していかなくてはいけないか?そういった時は、ビジネスモデルを分解すれば、アイディア出しが簡単になります

それでは読者の皆さんと一緒にビジネスモデルの分解をしてみたいと思います。ビジネスモデルは『利益=売上ーコスト』の計算式で成り立ちます。

売上は、顧客数×顧客単価になりますね。

別の分解の仕方だと、初回顧客売上+既存(リピート)顧客売上になります。

初回顧客売上は初回顧客数×顧客単価にさらに分解されます。

初回顧客数は広告宣伝費÷1人顧客獲得コストにさらに分解されます。(ここではザックリ書いてます。ザクザク)

既存顧客売上は既存顧客数×リピート率×顧客単価に分類されます。

売上=(広告宣伝費÷1人顧客獲得コスト×顧客単価)+(既存顧客数×リピート率×顧客単価)

ということです。

コストを今度は分解してみましょう。コストは、売上原価+広告宣伝費+営業マン人件費+梱包費+配送費+決済手数料+システム開発費+オフィス家賃+その他販管費に分類されます。(広告宣伝費は売上に登場しているのですが、ここではコストに再登場していますのでお気をつけ下さい)

まあ、ここまでの話は「そんなの誰でもわかってるわ、ボケ!」とお思いになる方がほとんどかと思われます。この後の話に繋がってきますのでもう少々お待ち下さい(笑)

起業してプロダクト開発をゴリゴリ進めるためにシードラウンドにてエンジェル投資家から資金調達をした半年後や1年後に、皆さんは事業をさらに成長させるべくシリーズAラウンドの資金調達に進まなくてはなりません。シリーズAの資金調達は、『ローンチされたMVPをスケールさせるための資金調達』、と世間では一般的に言われています。(例外も勿論あります)

出所:BizLawInfo.JP

『ローンチされたMVP』とは何かと言うと、Minimum Viable Productの略で、和訳では『実用最小限の製品』のことで、起業してから開発した自社サービスが一定のユーザーに対して価値を提供している最小限の状態を意味します。

話を元に戻しますが、起業した直後、スタートアップの起業家は何に着手すべきなのかというと、実用最小限の製品の作り込みをする必要があります。何故かと言うと、ベンチャーキャピタル(以下、VC)のキャピタリストは、シリーズAラウンドにおいてその製品がどれだけの利益(=売上ーコスト)を生み出しているのか、または生み出せそうなのかという点についてチェックしにくるからです。売上をいくら伸ばしても赤字がどんどん拡大するビジネスだと永遠に儲かりませんね。

いわゆる、ヒロ前田さんを始めとする多くのキャピタリストのブログで書かれているユニットエコノミクスの話になります。B2BのSaaSで計算式が良く用いられていますが、基本的にはB2B(法人向け)でもB2C(一般消費者向け)でも考え方は一緒です。

ユニットエコノミクスは色々な方のブログで説明されているので、本投稿では割愛します。詳しく知りたい方はこちらをご参照下さい。

で、起業した直後のスタートアップの経営者は何をするべきか。この利益を出すモデルを実現するために、売上とコストを構成する要素をそれぞれ分解し、それぞれの項目が目指すべき数値を設定し、それを実現するための施策を考えることをやり切らなくてはいけません。

ここで、先のビジネスモデルの分解の出番になります。

利益を出すために、売上を向上させる施策を考えるのか、それともコストを削減するための施策を考えるのか。売上を向上させるのは、新規顧客売上か既存顧客売上か。新規顧客売上を向上させるために、何をすべきなのか?

ここで、ファネルが登場します。

ファネルは例えばECの場合、下記のレイヤーに分類されます。

筆者作成

売上を上げるためには、購入者数(初回顧客数)を増やしていく必要があります。このファネルは5レイヤーに分かれていますが、それぞれのレイヤーの間に重要な指標が入ってきます。

筆者作成

これらはKPI(Key Performance Indicator)とも言われ、事業を構築する上で重要な指標になります。

さて、ここまで細分化してから、自社のサービスをグロースさせるための重要なKPIが何か考えてみましょう。エンジェル投資家や、シード投資家(アクセラレータ含む)からシードラウンドの資金調達を経たあなたは、どのKPIを改善し、MVPを証明していく必要があるのでしょうか。

プロダクトをローンチしてから得られたKPIにを並べてみて、自社のサービスのどこに改善の余地があるのか考えてみましょう。

自社の事業において最も重要だと思われるKPI数値を、3ヶ月後にどこまで改善させますか?どうやって改善させますか?起業後のワークプランは勿論プロダクト開発が重要ですが、こうして目標を予め設計した上でプロダクト開発に進むことで、無駄がなくなります。開発の優先順位は作りやすさではなく、事業を左右する重要なKPIの改善を上位に持ってくるべきです。

で、やりきり力の話に戻ります。

皆さんは、CPAを改善するための施策をいくつ考えていますか?

1)広告投入媒体を最適化させる(Yahoo!/Googleリスティング広告、Facebook広告、Instagram広告、Twitter広告、LINE広告他)

2)SEOの強化

3)ASOの強化

このあたりは皆さんやっていることだと思います。本当にこれだけでしょうか?

ターゲット顧客の細分化&定義は出来ていますか?クラフトビールのデリバリーの場合、対象とするユーザーは誰ですか?

  • 中野坂上に住み、渋谷に通勤するIT系企業の28歳独身エンジニアですか?
  • 赤坂に住む、シンガポールと東京の二重生活をする32歳の個人投資家ですか?
  • 富裕層なのか、中間層なのか?
  • アーリーアダプターなのか、マスなのか?

ターゲットとする顧客ペルソナによって、出す媒体・クリエイティブは変わってきます。ひょっとするとオンラインではなく、ディーン&デルーカでテイクアウトする人に販売する方がCVRが高いなんてことはないですか。その場合はオフラインチャネルの開拓も頑張らなくてはなりません。高価格帯を狙うのか、はたまた低価格帯狙うのか、など。

こういったことを徹底して考えなくてはなりません。自分の選んだ事業について、がむしゃらにプロダクト開発されている方は多いと思います。しかし、ここでもう一段深く掘り下げて、ビジネスモデルを分解し、自らが改善を進めていかなくてはならないKPIを特定し、改善に向けた施策を100個出して一つ一つ検証していますか。一つの施策にこだわってどツボにはまっていませんか?

様々な施策をPDCAを高速で回して検証する動きが事業立ち上げ後の成功を左右すると思います。こう書いておいてなんですが、言うは易し行うは難しです(笑)

先日、G1というイベントで、じげんの平尾社長がドコモとの提携に向けドコモの社長にプレゼンした話をお聞きしました。平尾社長は「自分がドコモの社長だったら面白いと思う事業アイディアを20個用意してプレゼンに臨んだ」と話されていました。

繰り返しになりますが、施策出しやりきっていますか?

やりきりは、間違ったベクトルに向かってやると大きな労力の無駄に繋がります。多くのスタートアップの皆さんには今日の投稿は「そんなのやってるわ!」という話かもしれません。ただ、今一度外部の目も入れて(Code Republicというアクセラレータが凄い良いらしいw)、自社の活動を見直してみましょう。

もっとこうした方が良いなどのアドバイスや、「堀、お前は全然間違っている」というようなことがあればフィードバックいただけると幸いです。

本日はここまで。

【Code Republic】
Code RepublicはEast VenturesとYJ Capitalが共同で運営するアクセラレータープログラムです。インターネット・スタートアップの成長を最大限に加速させる、3ヶ月間のアクセラレータープログラムです。EVとYJCの持つ起業家コミュニティを最大限活用して、事業を飛躍させるお手伝いをします。起業のテーマでお悩みの方、資金調達でお悩みの方、起業に関することで相談したい方がいらっしゃいましたら、いつでもご相談下さい。
一緒に創業期の苦しい時間を駆け抜けましょう。

--

--