米トップVC, 2016レビュー, a16z編

堀 新一郎(Shinichiro Hori)
10 min readDec 19, 2016

--

今年も残すところ2週間を切ってしまいましたね。年をとると一日が過ぎるのが早くて早くて。。。(涙)

突然ですが、今年一年、米国のトップVCはどういったスタートアップに投資をしてきたのか、主観と偏見で勝手にVCを選ばせていただき振り返りをしてみました。

抽出条件: 2016年1月〜12月の投資先
データ元:Crunchbase

初回は皆さんご存知のa16z

サマリー

■出資件数:48社

■領域別構成

出所: Crunchbase

非常にバランス良く、様々な領域に投資していますね。

全体的な印象として、
・まだFintech続いてるなあ〜
・ヘルスケア!
・B2D(Developer向けツール、PaaS等)、AnalyticsはAI/Big Dataをテーマにしたものが多い
・Drone、IoT、Roboticsへの投資も存在感あり
コンシューマー・インターネットへの投資は消極的
(Commerceは3件。Rappiはメキシコのon demand delivery、YourMechanicは車修理工場のMarketplace、AllsetはFood Tech)
* SaaSはB2Dに含まれないものをぶっこみました。あ、領域分類は私の主観です。悪しからず

FinTechはまあ流行っているのは知っていたけど、ヘルスケアってどうなんだろ。というわけで、今回はヘルスケア領域をちらちら見てみました。

■PatientPing(total equity funding: $31.6m)

PatientPingは開業医と病院を繋ぐソリューションを提供しています。米国では任期が間もなく終わるオバマ大統領が率先して地域医療の活性化に取り組みました。

米国では政府の方針として、地域の医療機関同士の情報連携が重視されている。より地域医療を活性化するための仕組みとしてACOsがあり、地域の様々な医療機関が一つの診療グループとして連携することで特別な保険支払いプログラムに参加することができる。現在ACOs認定を受けた医療機関同士はカルテなどにより診療グループ内における情報共有を行っているが、PatientPingによってリアルタイムに必要な情報を安全に把握することができるようになるという。

例えば、訪問介護施設の患者が急に体調が悪化し、病院へ救急で運ばれた際にPatientPingでリアルタイムで入力されたデータを即座に収集し、適切なケアが可能になります。

(出所:https://healthtechnews.jp/2015/11/25/patientping/

こうした制度・インセンティブを促進させるためのソリューションとしていち早く成長したスタートアップのようですね。日本では同様のインセンティブがないとワークしない気がしますが。

■Honor(Total equity funding:$42m)

今年は出資していないんですが、当社は2015年にa16zがリードで入れているのでピックアップしました。

元Googleの社員が始めたUber for 介護サービスです。ヘルパーさんのマッチング、スコア機能あり、タスク管理もあるというアプリをベースとしたサービスです。通常の1.5倍の時給を提供するという手法でヘルパーを集めている点も面白いですね。役務ECでは、役務提供者の獲得(ビジネスの肝である仕入)が一番頭を悩ますところですがちゃんと解決しています。また、タスク管理やレビューといったプラットフォームを提供することで役務ECの抱える命題の「中抜き防止」の対策もしっかりと練られています。これは日本でもチャレンジし甲斐のあるビジネスなんではないでしょうか。

カートの代表尼口さんが書かれているブログに詳細が書かれていますので、ご興味ある方はこちらもどうぞ。

■Accolade(Total equity funding:$71m)

こちらも訪問介護のオンデマンドサービス×アプリ。a16zはこの領域のトップ2社にベッティングしていますね。Scrum Ventures宮田さんのブログによると、

訪問介護の業界は、全米で250万人のヘルパーがおり、事業者も1.2万件と小さな事業者が多数存在しているという状況。Honorは、2015年4月に立ち上げ、介護ヘルパーの依頼、スケジュール、コミュニケーションがすべてアプリで行えるという利便性が受けて、すでにSan Francisco地域では最大の訪問介護業者となっているという。アプリから家族もしくはご本人が既往症や家族構成などの情報を入力すると、ヘルパー候補がリストされる。そこから実際の訪問をスケジュール。その後のコミュニケーションもすべてアプリ内で行える。
(出所:http://scrum.vc/ja/2016/08/17/scrum-funding-news-20160817/

■uBiome(Total equity funding: $22m)

当社はDNA検査ならぬ、体内に数百兆と住んでいるバクテリア検査の会社です。

同社は標本分析ロボットとそのための機械学習アルゴリズムで特許を取っている。同社はまた、人体のマイクロバイオームの標本の世界最大の(非公開)データ集合を保有し、新たな被験者の参照グループを素早く見つけることができる。

送料を同社が負担する、ユーザの自己採取標本が同社に送り返されてくると、その分析が行われ、ユーザはその結果をWeb上で見ることができる。その結果には、ユーザのマイクロバイオームの、参照グループ(例: 完全菜食主義者たち)との比較も含まれている。

つまりそのデータから、自分のマイクロバイオーム中のバクテリアの種が分かり、ほかの人たちとの比較や、バクテリアに関する最新の研究結果に照らした所見を知ることができる。

同社の目標は、人びとに自分の腸の中を知る方法を与えること以外に、データを研究者たちに与えて、マイクロバイオームをより大きな視野で見られるようにすることだ。

(中略)

uBiomeのいちばんベーシックなキットは89ドルで、合衆国ではubiome.comやAmazon Primeで買える。
(出所:http://jp.techcrunch.com/2014/08/19/20140818ubiome-raises-4-5m-from-angel-investors-andreessen-horowitz-to-crowdsource-microbiome-research/

■Freenome(Total equity funding:$5.5m)

癌の早期発見が可能なサイエンス×テクノロジースタートアップ。バイオ系といっても良いかもしれません。全く分からないのでコメントは割愛で(涙)

■Cardiogram(Total equity funding:$2m)

Apple Watchを通じて心拍をモニタリングし、心疾患のスクリーニングを行うサービス。App

ヘルステックスタートアップのCardiogramは、a16z Bio Fundがリードインベスターとなったシードラウンドで200万ドルを調達した。同社は、心血管疾患のスクリーニングや、心血管に関連した健康状態の改善・維持に関するアドバイスを発信するアプリを開発している。

Cardiogramのアプリは当初、Apple Watch用としてスタートした。しかし、同社は当アプリを最終的に”デバイスに依存しない”ビジネスへ発展させようと計画しており、Android Wearを搭載したスマートウォッチや、Fitbit、Garminなどのフィットネスバンド兼アクティビティトラッカーへも今後対応させていきたいと考えている。
(出所:http://jp.techcrunch.com/2016/10/22/20161020cardiogram-raises-2-million-to-predict-heart-health-issues-using-wearbles/

こうして見てみると、HonorやAccoladeのような訪問介護は、必ずしも医療の専門知識がなくても参入出来るので日本でもチャンスがありそうですね。また、uBiomeやCardiogramのようなユーザーデータを収集してビッグデータで未踏領域に切り込んでいくビジネスモデルは、アップサイドが期待出来ますね。日本でもDNAや便や尿を採取するスタートアップは出てきていますし。

Theranosショックがあっても、a16zは果敢に攻めている姿勢が見えて面白かったです。日本で何が出来るか、ヘルスケア領域にチャレンジしたい起業家の皆さんがいらっしゃったら、ぜひYJキャピタルのドアをノックして下さい。一緒に暮らしを豊かにするビジネスを考えましょう!

--

--