米トップVC, 2016レビュー, Sequoia編

堀 新一郎(Shinichiro Hori)
10 min readDec 21, 2016

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ああ、一日が早く過ぎ去って行きますね。今年も残すところ10日です。皆さん忘年会は今週が山場でしょうか。僕は来年の投資テーマ探しに追われています(笑)

さて、前回のブログ「米トップVC, 2016レビュー, a16z編」に続いて、今回も皆さんご存知Sequoia Capital編をお届けします。AppleやGoogleに投資してきた名門です。

抽出条件: 2016年1月〜12月の投資先
データ元:Crunchbase

サマリー

■出資件数:87社

■地域別構成

出所: Crunchbase

うおー、理想的。憧れる。YJキャピタルも海外投資をしていますが、
国内:国外比率を50:50にしたいのです。流石。
詳細は後述しますが、地域別の特徴として米国内は領域が多岐に亘っていますが、米国外の投資についてはB2C:B2C以外が50:50と、B2C領域への投資が目立ちます。

■領域別構成(米国内46社)

出所: Crunchbase

なんだこの分散っぷり。米国のトップVCはこういうポートフォリオを組むのか。。。
まあ、a16zも一番構成が大きいFintechが17%でしたが、それ以外は10%以下の領域がゴロゴロしていたので、こうやって組むのですね。

しかし、米国内だけでも46社出資って凄いですね。既存投資先のフォロー投資も含まれていますが、毎月4社出資。あ、でもEast Venturesは年間100社ぐらい出資しているから不可能ではないですね(汗)

流石Sequoia!というところでは、今年はSnap、Unity、Stripe、App Annieなどのフォロー投資している点ですね。凄いですなあ。

今回は、日本にまだ登場していないビジネスモデルを幾つかピックアップしてお届けしたいと思います。当然、僕の主観と偏見セレクションです。えっへん。

注目スタートアップ

■Clover Health(Total equity funding:$295m)

Clover Healthは新しいカタチの健康保険を運営しています。高齢者民間医療保険の加入者に対して、ビッグデータを駆使することで更に安い保険商品を提供し、患者と保険会社にかかる医療支出を削減を実現しています。

具体的には、保険加入者の健康診断データと診察データをClover Healthの独自システムで分析し、疾病リスクを算出。その上でClover Healthは予防医療アドバイスを加入者に対し行い、保険加入者の医療支出を削減します。実績として、入院費用が平均50%、再入院費用が平均38%安くなっているとのこと。(出所:http://rp.kddi-research.jp/blog/brilliant/archives/2167

クローヴァーは、独自開発のアルゴリズムとソフトウェアによって、患者が入院する可能性がもっとも高まる時期および状況や、治療費がもっとも高くつく状況を予想して医師や看護担当者に通知し、患者を訪問検査したりといった事前対応を促すことで病状悪化を防ぐとともに、治療費を最小限に抑える機能を提供する
(出所:http://usfl.com/news/93732

出所:https://medium.com/@abhasvc/why-we-invested-in-clover-health-be4ff3db55a7#.ueinabk0e

当社のシステム内で患者が増える→医師も増える→最適な医療行為の提供→コストが下がる(患者、保険会社)という車輪をグルグル回しています。

米国の保険制度の範囲の中でサービスを提供していますが、ビッグデータを我々の生活に組み込んで商業化に成功しているケースと言えますね。

ちなみに当社に投資したキャピタリストは「ドヤっ」という感じで当社への投資をブログで自慢しています。経営陣、ビジネスモデルを賞賛しまくってます。

■Lemonade(Total equity funding: $60m)

NY在住者向けの家財保険アプリです。保険ビジネスは加入者から預かったお金と実際に支払った保険金の差額になるわけですが、当社はこの差額を受け取らず返金(チャリティー)すると謳っています。そうすると、収入は代理店手数料のみになります。ここで利益を出すには、保険会社の運営コストを切り詰める必要があるのですが、運営コストはChat Botを軸にしたAIを駆使し低コストオペレーションを実現する、というのが当社の狙いです。

実際にアプリを動かしてみると、とても簡単に申込が出来ます。90秒で申込可能。事故発生時の支払いも3分という衝撃の速さ。

どうしてこんなことが出来てしまうのか、というカラクリについて詳細はまだ不明なところが多いですが、増島先生が詳細にブログを書かれているのでこちらをご参照下さい。

■HouseParty(Total equity funding:$m)

いやー、お待たせしました。久々のピュア・コンシューマー向けサービスです。今、ティーンの間でとても注目を集めているオンラインビデオチャットアプリです。

何が特別なのか?技術的に凄いというより、同時にビデオチャットを皆で手軽に楽しもう、というコンセプトが「今までになかった」ことが最大の特徴ではないでしょうか?「Skypeでも出来るじゃん」というツッコミをしているあなた。はい、そうではなく、対象セグメントをティーンに絞り込んでUI/UXを今風にした、というところが大事ですね。

Housepartyは意図的にサード・プレイス(筆者注:ファースト・プレイスは家、セカンド・プレイスは会社などの責任が伴う場所、サード・プレイスはソーシャルな交流の場。社会学用語)をつくり出し、そこへはユーザーの電話帳の中に存在する、現実世界のソーシャルグラフのどこからでもアクセスできるようなつくりになっている。その結果、ユーザーは自分が動かなくても友人と会うことができるほか、何かを作りだすというプレッシャーを感じることなく人と交流することができるのだ。

ティーンや若年層は、持ち余した時間を使って、友人と集まりたいという強い願望を持っている一方で、家族からの自立や交通手段、家の所有権の問題からその思いを完全には叶えられないでいる。その背景こそ、Housepartyが、ユーザーの60%以上を占める24歳未満の若年層に人気を博している理由だ。
(出所:http://jp.techcrunch.com/2016/11/23/20161121the-internet-third-place/

当アプリの破壊力は1人で遊ぶアプリではないので、お友達が芋づる式にアプリに最大8人まで参加可能なネットワーク外部性が働くところでしょう。SnapやFacebookでもすぐに導入出来そうなサービスでもあるので、一発屋で終わらないためにも、今後どういった機能を打ち出してくるか非常に楽しみです。

■Thanx(Total equity funding: $23m)

店舗向けロイヤリティ/リワード管理システムです。僕が注目したのは、SequoiaがSeries A/Bともにリードしている点です。

当社はレストラン等の店舗に対して、簡便にロイヤリティプログラムを導入出来るサービスを提供しています。消費者はアプリ上でクレジットカードまたはデビットカードを登録すると、支払いの際に自動的に記録が残ります。ショップオーナーは来店客にダイレクトメッセージやディスカウントクーポンを発行することが出来ます。POSレジとの連携を必要としない点もライトで良いですね。

サービス普及において、店舗営業が必須となるので事業拡大は結構しんどいかもしれませんが、手軽にポイントカードを導入したいお店にもってこいのサービスですね。クレジットカード、電子決済などの決済手段が増えていく中でこのような店舗向けサービスを導入したい店舗はAirレジやトレタなどのPOSサービス同様多いのではないでしょうか。

中国のMeituan、Kobeiの成功を米国に逆輸入しているのかな、とか邪推もしちゃいました。

僕が気になった会社は上記4社でした。いずれもいきなりマスを狙うといより、まずは特定のセグメント顧客において圧倒的に使われるサービスを作りに行っている点が印象的でした。今日紹介した会社が2017年以降、どうやって事業を拡大していくか非常に楽しみですね。今日はここまで。

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