AppleとAmazonは、これまで両社との間で結んでいたApple正規販売代理店契約(Apple Authorized Reseller)を拡大し、MacやiPodだけでなく、iPad、iPhone、Beats by Dr. Dre、iTunes Gift Cardまでも含めた新しい契約を締結した。
Amazonは、ずっとApple Online Authorized Resellerだが、初代iPadやiPhoneなどを販売する契約は行えない状態が続いていた。
世界の小売ランキングのトップランキングの1位であるWalmartと、2位であるCostco Wholesaleは、すでにApple正規販売代理店契約を契約しているが、ECサイトとして最大売上を誇るAmazonは契約を見直すことは何年も行われなかった。
AppleのRetail担当シニアヴァイスプレジデントAngela Ahrendts氏は、Cannes Lions 2018において、ECサイト経由での購買比率は80%以上増加し、実店舗では体験を重視する考えを明らかにした。
そうした背景もあり、AppleはAmazonに対してApple正規販売代理店契約の見直しを行い、販売製品の拡大を迫ったのではないかと思う。
Amazonにとってみれば、Appleに対して直接受注が行える製品が大幅に増えるため、需要に対する在庫管理がしやすくなる。
Amazonは当然値引き販売を行うが、Appleにそれを止める権利はない。
同じ製品を買うのであれば少しでも安い方が良いのは当然で、Appleにしてみればプライスマッチを働かせる必要性がでてくるが、先に説明したように店舗は体験型と位置付け、Apple全体としての売上を考えた場合、部門に起きる弊害は小さなことと切り捨ててしまえば良いのだろう。
実際、現在の決算発表において、Apple Storeは部門としての売上形状はされてはおらず、国別での売上計上しかされていない。
Amazonにとってメリットが大きい部分が大きいように思えるが、このApple正規販売代理店契約には一つ懸念する契約事項があり、それに難色を示していたのではないか?と考えている。
それは「自由出荷」という契約だ。
Appleは、発売前の製品を事前にApple正規販売代理店に案内することはないにも関わらず、発表後、最短で店頭販売が開始されることが多い。
それを可能にしているのがこの条件で、いわば受注が発生していないにも関わらず、発売日に間に合うよう勝手に製品が届く仕組みなのだ。
この条件は、特に初発売日限定に限ったことではなく、届いてしまえば在庫するしかない。
セールスの成績が悪ければ、自由出荷を使って倉庫に押し込むことも可能だ。
ただ、Tim Cook CEOが作り上げたAppleを支える「グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)」システムがあり、過剰在庫であることは誰の目でも分るため、在庫押し込みは発生し辛い状況にはある。
また、新しいApple正規販売代理店は、Apple製品販売店としての位置付けのため、同じショップで他社がApple製品を販売することは出来なくなる。
単純に考えて、ヨドバシの店舗でビックカメラがApple製品を販売するようなもので、当然、マーケットプレイスでApple製品を販売することは厳しくなることは仕方がない。
インターネットオンラインビジネス全体を見渡した場合、今回の契約見直しは時代に合わせた形なのかもしれない。