どんな会社を作りたいか、これまでを振り返りながら考えてみる

Ichiro Shoda
14 min readDec 18, 2019

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こちらは「スクラム採用 Advent Calendar 2019」12/18の記事です。こちらのAdvent Calendarに、さまざまな企業の方々のとても貴重な知見がたくさん詰め込まれています。ぜひ、みなさまに一度読んでみていただきたいです。 これまで担当してくださったみなさんの記事が知見の宝庫すぎて、もう僕は自分の考えを言語化することに対して怠惰になりそうですw

今回の記事では、「スクラム採用」という思想をHERPとして提唱するようになるまでに、庄田自身が企業の採用担当者としての経験を通じて学んできたこと、今の考えを生み出すに至った背景を書いてみたいと思います。なので、「スクラム採用」そのものに関する具体的な知見を共有するスタンスで書いているわけではないことにご留意ください。

スクラム採用は企業の人材に関する意思決定のお約束である

「スクラム採用ってなんですか?」と聞かれることが本当にたくさんあります。とっても嬉しいことです。日頃、多くの人事のみなさまと「スクラム採用」に関する会話をしたり、お互いの知見を共有しあったりする中で、いつもこの問いに対する回答を考えています。まさにその内容というわけではないのですが、素晴らしい事例に必ず共通しているのは、「スクラム採用」が企業のカルチャーや考え方/アイデンティティの土台の一部となっている、ということに気がつきました。少し表現を変えると、企業の経営者・人事・現場メンバーのあいだで、自社における採用や人事に関する意思決定手法の合意ができているということです。

これが「スクラム採用」の必要条件の一つなのかもしれない、と最近は思っています。それがない段階の企業では、現場メンバーにとって人事通達はいわゆる「神の声」「天の声」のようなものであり、どういったプロセスを経てそれらが決定事項となったのか、まったく知る由もないということになります。この合意形成があるかないかによって、企業としての採用・人事へのスタンスが大きく異なってくると考えています。 HERPでは、設立当初から採用について現場メンバーと一緒に意思決定を行うことを心がけてきました。なぜ、こうしたことが企業として大切なことだと考えるようになったのか? 僕自身のこれまでのキャリアをたどりながら書いてみたいと思います。

リクルートで、合意形成の大事さを学んだ

庄田のファーストキャリアであるリクルートでは、合意形成が非常に重要視されています。在籍当時も、営業目標設定や組織運営に関して、社員みんなの意思に基づいたかなり高いレベルでの意思決定が行われていました。なかでも特に印象に残っているのは、営業担当個人の目標設定会議です。リクルートには有名な「ヨミ会」というものがあります。個人の営業ヨミ(最終到達売上予測)を報告し合いながら、その達成戦略をメンバー全員でブラッシュアップする場です。「ヨミ会」は週次開催なので、営業担当は自分のお客様からの収益について常に考えを巡らせています。そうした状況を前提に、四半期ごとの個人の営業目標もメンバー全員の話し合いによって決められます。まず、チームとしてのグロス目標(これも各チームマネージャーの合意形成で設定された目標)だけが伝えられ、営業担当個人が自発的にどれくらいの数字なら自分が持つことができるかを宣言していき、最終的に少し余裕を持った形で全員でこれでいこうという目標を決めるのです。前提としてそれぞれが個人商店であるという考え方(自分が担当するクライアント様への価値提供を通じて自分が作り出すリクルートへの成果も最大化し、その全体に対してオーナーシップを持ちましょう、という考え方)がベースとなっているので、そうしたことも相まって目標設定への当事者意識も生まれていたのではと振り返っています。

こういった合意形成プロセスを通じて社員のモチベーションはさらに高まり、強いものになります。上から降りてきた目標と、自分で決めた目標とどちらの方が達成意欲が湧くか? 僕個人としては後者だと思っています。 これは採用においても全く同じです。採用したい人物像や人数目標を現場メンバーが自分たちで意思決定することによって、採用や人事という観点への意識も変わり、達成意欲も生まれてくるのではないでしょうか。

エウレカで、現場メンバーとコンテンツを作ることの大切さを学んだ

企業としての透明性を担保しながら組織の魅力を社外に伝えていくにあたり、最も大切なことの一つは、鮮度が高くかつアトラクティブなコンテンツを適切なタイミングと頻度で発信し続けることであると考えています。しかし、転職で中途入社した僕にとって、エウレカの魅力を十分に引き出すことは至難の業とも言える状況でした。そこで始めたのが、現場のマネージャーたちとの採用広報mtgでした。これが本当に素晴らしい取り組みで、各マネージャーが自発的に現場視点ならではのアイデアを提案してくれたり、自分のチームメンバーが取り組んでいる業務のこんな面を発信したいといった建設的な意見を寄せてくれたおかげで、とても価値ある検討を重ねることができました。

この経験を通して、深い信頼関係を前提にしっかりとしたエンゲージメントが醸成された組織を作ることの大切さ、そして採用や広報にも現場メンバーを巻き込むことの重要性を学ぶことができました。エウレカのGolang関連のイベント開催・登壇やそもそもTechBlogもこうした現場メンバーの理解・協力によって生まれたものでした。

Zapposで、社員の幸福を意識することの大切さを学んだ

意図したコンテンツを発信し、リファレンスやブランドといった観点での企業価値を向上させることは本当に大事な取り組みです。ただ、それが真に企業の透明性を社外に向けて体現できているものであるのかというと、意図的なコンテンツ選択が行われている点でそうとは言い切れないのかもしれないと起業をしてから考えるようになりました。そんな問いをある意味全て解決してくれたのはZapposでした。僕はZapposのオフィスを訪問したり、彼らに関する書籍を読んだりしただけなのですが、Zapposがそうであるように、社員の幸福を意識することを通じ企業として真の透明性を作ることの意義について理解することができました。

本当にピュアなコンテンツは社員の自発性から生まれるものだと思います。その自発性を育むものこそが、社員自身の業務へのプライドや事業ミッションへの共感であり、会社のステージをさらに先へ進ませようと努力しながら人生に意味を感じるなかで得られる幸福感なのだと気付きました。 エンゲージメントやEXなどが叫ばれる昨今ですが、本当に重要なのは、自分の人生の限りある時間を投資する価値があると思えるチャレンジと、その時間をともにしたいと思える仲間なのだと今は思っています。「スクラム採用」もその採用広報も、表面的であったり作為的であったりするものではなく、社員ひとり一人のピュアなエンゲージメントから醸成されるべきものなのではないでしょうか。

HERPで、愛のある透明な会社を作る

これまでの経験を通じて、「スクラム採用」という思想に想いをのせて、たくさんの愛すべきメンバーと自分たちの誇れる会社、プロダクト、そしてユーザーのみなさまに価値を届けるべく、いま僕たちはそれぞれの時間をHERPに注いでいます。 僕は、自分自身がこうして挑戦の機会を得ているのは、一重に今まで信頼関係を築き、愛を持って接してくれる仲間がいるからで、それ以外にないと考えています。自分の能力そのものは変数としてほぼゼロに等しいとも言えます。これからは引き続き社内はもちろん、社外のみなさま、ユーザーのみなさまとも信頼関係を築いていきながら、いつの日かみんながそれぞれ胸を張って「良い時間の投資をした」と思えるような会社にしていこうと思っています。 そして、そのような想いを持ってみんなで会社を次のステージに進めようとすることが、社員の幸福と、それを前提とした意味のある透明性の高いカルチャーを育むことに繋がっていくのではと考えています。

そしてユーザーの皆様の会社にも愛を作れるサービスを作る

そんな風に綺麗な言葉を並べていても、意味のある成果を作れる会社になれるわけではありません。価値のあるプロダクトを作り、それを必死に伝え続けることで、大きな成果を残し、その結果として自分たちの努力を正当化できるものなのだと心得ています。ユーザーのみなさまと対話を重ねながら、試行錯誤を繰り返し、真摯に自分たちが提供するべき価値と向き合っていきたい。そしてその先に、ユーザーのみなさまの会社にもそれぞれの愛が生まれることが僕らの目指すべきところだと思っています。

こういったAdvent Calendarという機会を通じて、ユーザーのみなさまの声や事例をお伺いできることに心から感謝しています。いつもありがとうございます。 なんだか愛だの信頼関係だの幸福だのと、若干スピリチュアルでエモい感じのことばかり語ってしまった気がしますが、僕はどれも現代社会において本当に重要な要素だと考えています。真面目に地道にこれらのことを追求し続けることで、いつか成果を作ってみんなで「努力してきてよかった」と思えるよう、今後も尽力してまいります。

来年は新たな事業もいくつか検討しつつ、引き続き社会に、ユーザーのみなさまに価値をお届けする一年にしたいと考えています。至らぬ点も多くあるかと思いますが、引き続き何卒よろしくお願いいたします。2019年もありがとうございました。そして良いお年を!

<ユーザーの皆様のエントリーをご紹介>

勝手に注釈を加えてみました、偉そうですみません・・・
少しでも気になったものがあれば読んでみてくださいー!

PRTable菅原さんは愛と男気のある男。スクラム採用のメリットに正面から向き合い、愛のある文体でご紹介をいただいています。彼のいう通り、スクラム採用を実践するもしないも経営の意思決定であり、それが全てではないと思います。企業の存在意義や、そのミッションを目的とした上で、意思のある選択をすべきだと思います。

Ubieの重藤さんもスクラム採用は手段であるとおっしゃっています。そして全員経営を実践する上での手段であるとおっしゃられています。全員が主体的に組織に向き合うことを求める、スクラム採用の本質的な部分だと思います。Ubieでの実践内容も学べるエントリーです。

もはや採用PMというか、企業というプロダクトのマネージャーとして視座を持ち、採用グロースハックを極めた方のエントリーだと思います。社員の関わる意味づけ、候補者の体験設計、何もかもプロダクトマネジメントと捉えられるという考えは、今後必要とされる観点だと思います。

柳川さんは我々のサービスがデプロイされる前から色々と意見をくださった、いわば弊社サービスの生みの親のような存在です。そして現在は我々と同じくスタートアップを経営されています。そんな人事と経営者の両面を理解する方だからこそのエントリーだと思います。人材獲得競争が激しいスタートアップにおいて、採用を一つのカルチャー、社員にとって当たり前化すること、そしてそれを諦めずに推進することの大切さが書かれています。

松茂良さんは、スクラム採用を実践することによって得られる組織の変化について書いてくださっています。中でも、採用の仕事がブラックボックス化しないということは会社にとってとても意味のあることだと思います。採用はバックオフィスの仕事、自分たちは関係ないではいい採用活動は生まれません、そしてRoomClipさんのすごいところは、意思決定スピードを高速化できていることだと思います。スクラム採用は関わる当事者が増えるからこそ、意思決定にかかるスピードは遅くなることが考えられます。権限の移譲がしっかりとなされている証拠だと思います。

自己犠牲を前提としたぼっち人事ではなく、多くの人を巻き込みながら成果を自分から作る人事に、とても共感できます。内容が追記されるのを楽しみに待ちましょうw

個人的には川戸さんがスクラム採用の記事を書いてくれたことがそもそもとっても嬉しいです。w
内容はとても本質的なもので、人材の流動性のまだまだ低い日本において急拡大組織を、しかも効率的で意味のある順序で採用することの難しさと、それを実践されている方の生の声が書かれています。彼のいう通り、人材が競合優位性に直結するような事業体の企業において、採用活動、採用担当はとても重要なロールだと思います。

渡辺さんの記事は、いつもそのわかりやすさ、内容の濃さに感嘆しています。そんな人の次の日に記事を公開するのは本当に嫌です。w
そんな渡辺さんの今回の記事は、人事視点からスクラム採用を実践する上で、プロセスの細部まで全てを高いレベルに持っていくためのTipsがたくさん詰め込まれています。ここまで考えてスクラム採用を実践されている渡辺さんはどんな仕事の仕方をしているのか、そっちの方が気になります。w これからスクラム採用に取り組みたいという会社の人事の皆様、ぜひご一読ください。

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Ichiro Shoda

株式会社HERP 代表取締役CEO/採用の事務作業を自動化するツール HERP の開発・提供/採用コンサルティング/https://herp.co.jp/