採用担当が企業のセンターピンになるには

Ichiro Shoda
11 min readDec 5, 2018

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この記事はベンチャー採用アドベントカレンダー(http://adventar.org/calendars/3497‬)の5日目の記事になります。これまでの4記事もとても読み応えのある素晴らしい内容なので、みなさま目を通してみてください。

私(@fabichirox)は普段は採用管理システムの開発提供およびインターネット関連企業向けの採用コンサルティング・アウトソーシング事業を展開するHERPという会社の代表をしています。

今回は上記のような事業を営む立場として企業の規模の大小問わず、採用担当として日々奔走している方々に向けて、直近感じていることについて書いてみたいと思います。この記事を読んで、明日、来年のアクションを考える視点が少しでも増えるような気づきがあればいいなと思います。

2018年の印象に残っていてかつ実績の出ていそうな採用施策を振り返り、その要素の抽出をしてみるという流れで考えてみました。

① 2018年の振り返り

FBはプレスリリースへ、Twitterは戦場へ

この一年、何と言っても業界のミドルおっさんたちのSNSへの態度変容がすごいあったと思っています。自分もその1人です。日本は世界でも異質なほど仕事で知り合った人たちとFacebookで繋がる傾向にあることは知られていると思います。仕事とプライベートの境がないという面があるのかもしれませんが、そのせいで、どんどんポジションを取った投稿しかできない空気になってきました。

今年は去年にも増して広報の重要性が語られる頻度が増えたことも一因だと思います。ベンチャー企業は月に1本はプレスリリースを打ちましょう、常に世の中に自社情報をオープンにしましょうという論調は何度も聞いてきました。そして正しい部分も大いにあると思います。ただそれが進んだ結果、経営者だけでなく社員もどんどん自分がインタビューされた記事をFBに投稿し、しまいにはFBを開けるとインタビュー記事かプレスリリースしかみないアカウントになりました。w

そして個人のライトな意見の表出や、主義主張の公開をベースとしたコミュニケーションの土台はTwitterに移っていきました。いい意味でも悪い意味でも主義主張を投稿し承認されることが大きな目的化していることとTwitterのライトなUXが影響し、これまでになく論争の場所になっているように感じています。今年は仮想通貨領域に関してもそうですが、採用に関わる人たちもどんどんTwitterに染み出していきましたね。そして候補者の承認を得るため、本質に一番近い議論をしているのは誰かを決めるための戦いの場になってしまったように感じます。今年はnoteも大流行した年だったかなと思いますが、その起点はTwitterだと思います。インフルエンサーのnoteの利用をフックにいろんな職種の人たちがどんどん考えをnote上で発信するようになりました。

そんな中で軸(個性・色)のある施策はとても目立った

個人的に、そして勝手に今年印象に残っている採用施策についてどんな軸で良かったのか考えながら振り返ってみたいと思います。僕の個人的な意見ですので、お付き合いいただければ。。勝手に転載したり画像を貼ったりするのもあれかと思ったので、Twitterのリンクを除き、テキストが続くことをお許しください。施策担当の方々で何かしらリンクしていいものがあれば直接教えてください!

1. 触れる美しいクリエイティブ軸(hey社)
何と言ってもhey社さんの活動がスタートされたタイミングのインパクトはすごかったです。業界の著名な経営者の方々が結集し、新しいブラックホールが生まれた瞬間でした。
何と言っても、そのクリエイティブの美しさ、そしてグッズ戦略、イベント戦略。畳み掛けるようにどんどん施策が打たれるけれども、一つ一つが洗練されていてブレない印象がとても強く残っています。触れると表現したのは、グッズが多様に用意されていること、そして多種多様なイベントが開催され直接肌で感じるハードルも低かったことを意味しています。

かわいい

あのキットカット可愛いなぁーーーとかTシャツおされだなーとか思った人も多かったんじゃないでしょうか。

2. 圧倒的巻き込み軸(SmartHR社)
SmartHRさんの世の中や、候補者との距離の取り方は本当に秀逸で、真似しようと思ってできるものじゃないなと感じました。特にエンジニア歓迎会の練習。

一見採用イベントに見えますが、イベント自体の開催に至る社内の素晴らしい雰囲気と、転職とかなんとかそんなものより、なんか行ってみたいと思わせる空気感、そして会場はサイゼリヤ、感服だなぁと感じました。7名のエンジニア採用につながっているなんて凄すぎますね。

3. 働き方多様軸(Mirrativ社)
赤川さんが独立されるというニュースも一つの大きな出来事だったと思います。そして時代の流れをしっかり掴んだ、日本一副業で働きやすいスタートアップを目指すという宣言。秀逸でした。

庄田の就職活動時代からのお友達の Yuka Iwasaki率いるYOUTRUST社のサービスであるYOUTRUSTをフル活用した人材の獲得は記憶に新しいのではないでしょうか。YOUTRUST自体も業界の注目度の高いサービスだと思うので、拡散力に拍車がかかっていたと思います。

4. 買収軸(DMM社)
これは実行できる会社のかなり限られる施策ですが、BANK社に始まり、DMM社の買収件数は今年飛躍的に増えた印象があります。

これは僕の目には一つの採用施策に映りました。M&Aはれっきとした採用施策であるということが証明されたとも言えるのではないでしょうか。たくさんの優秀な起業家、そしてメンバー達がDMMグループ入りしていることは事実です。アランプロダクツ社(ユナイテッド社)、XTech社の買収劇にもこういう色があるのかもしれません。

5. Twitter軸(ポジウィルさん、キャスターさん)
Twitter経由での転職も異常に増殖しているように見えました。金井さん率いるポジウィルさんの候補者の共感を圧倒的に醸成することによる求心力、そしてbosyuの買収劇と石倉さん個人の影響力の相乗効果から生まれる採用施策も秀逸でした。

Twitterでbosyuを検索するとたくさんのツイートが見つかります。これも今年の新しい動きなんじゃないでしょうか。Twitterに働く人たちが戻ってきた時流を的確に捉えていると思います。

以上、勝手に今年印象に残った採用施策についてまとめてみました。

② 働く人に注目されるには

上記の振り返りを経て、働く人とのオンラインコミュニケーションには、狙って注目をしてもらうという考え方が重要であると感じました。狙ってという言葉を使うのは、ユーザーの置かれているリアルな環境や、広い意味でのそもそもの労働環境、そして競合との差分などを採用においてもしっかり意識する必要があるという考えを表したいからです。今回は採用した社員がどれだけ自己実現できるか、企業価値向上に寄与するかという視点をあえて忘れて、採用に特化して考えてみました。

ストーリー(色を出すこと)を意識すること
いい施策には必ずストーリーがあります。そしてそれはその企業の文化・ビジョン・経営陣の考え方・社員の空気感・カルチャーといった企業の色があふれています。2日の marumaru の記事に記載のあった美意識と呼べるものなのかもしれません。現代の労働者、特にインターネット業界の労働者のように自主的に働く場所を選択しようとする人たちはストーリーへの共感を求めていると思います。コンテンツにあふれ、全てのニュースに目を通すのもやっとというこのご時世、人の目を引くものには必ずストーリーがありそれに共感するというUXが存在しています。これは意識しまくらないと作れないものであってかつめちゃくちゃ頑張ってもなかなか作れないものです。とりあえず広報・とりあえず記事には絶対に含まれないものだと思います。

時代を読む力
こうかくとなんか偉そうな物言いですが、とても大事な視点です。めちゃくちゃファジーな言い方をすると、今のベンチャー業界ってこうだよな、今の転職顕在層の人たちの思考ってこうだよなっていう妄想をどれだけリアリティを伴ってできるか。センスって言ってしまってもいいと思います。そしてこのセンスを鍛える方法が幅広い経験を積むことだと思うのです。事業を経験した採用担当者は強いとか、経営陣が結局最強っていう理論はこのセンスの高さを表しているんじゃないかなと感じてしまいます。幅広い経験から生まれたストーリーをベースにしたUXには深い味わいがあります。そして、このセンスがある人は良いコンテンツの味わいにも敏感になり、学びのサイクルが循環するのではないでしょうか。

クリエイティビティで資本に勝つ
ベンチャー企業の経営において人材は何よりも重要であると言えると思います。そして同時に、資本力でぶん殴るっていう戦略が一程度通用することを理解すべきです。人材紹介会社さんに100%のフィーをお支払いすることでもいい、媒体をフル活用してスカウトを大量に購入してもいい、採用代行業者様に採用業務をフルサポートしてもらうでもいい。それが合理的な手法として通用します。現代の日本においては、企業の求人数に対して、圧倒的に人材が不足している、それが現状です。そんな状況において採用担当のすべきことはなんなんだろうか。考えるべきだと思います。経営陣としての意思決定は、大型調達をして、厚い予算を採用に割くこと、これが一番合理的な意思決定かもしれません。

その現状を理解して、何が資本を上回るインパクトを産むのか考える必要があります。そして、それが上述した、候補者が本質的に求めているUXを作り出すクリエイティビティなんだと思います。でも悲しいかな、振り返りのパートで記載した施策はどれも経営ボードの方々が施策のボールを持っているものしかないように感じてしまいます。

ユーザーに立ち返って考える
そしてめちゃくちゃ基本に立ち返る形になりますが、採用担当者のユーザーは候補者であることを忘れないことです。どうやって彼らを巻き込むか、自社のストーリーを知ってもらい個別のエンゲージメントを産むか、そもそもどんなストーリーが求められているのかそれを常に考え続ける態度が必要です。正解は自社の組織と事業にしかないのだという論調は結局誰がユーザーなんだっけっていう問いに答えるプロセスで生まれるのだと思います。採用施策・広報施策を一つのプロダクトだと捉えて、施策開発プロセスにユーザーの方にどんどん参加していただき、フィードバックを得るのもいい手法だと思います。最終的に入社に至らなかった候補者の方や、いつか一緒に仕事をしたいと感じている人に、採用の施策に関してどう感じるか教えてほしいって連絡するのは簡単ですよね。

③企業活動の中心が採用担当になってほしい

採用業務、採用担当のアップデートのタイミング

今年は色々なところで2.0とか3.0っていう表記が多い年だったのではないでしょうか。弊社も採用2.0を掲げていますが、GoogleがRecruiting 2.0を標榜していることを知った時はかなりビビりました。w
それほどに、世の中全体が何かをアップデートしようとしているタイミングなんだと思います。

逆に言うと、一つの何かが変わるタイミングに同居している、存在しているとも捉えられます。採用も同様にアップデートが行われていきます。

企業のセンターピンを担う存在に

そんな中でシンプルに採用担当がもっと企業活動の中心になったらいいなと思っています。経営陣と一緒に自分たちにしか作れないストーリーを考え、働く人たちを惹きつけ、そして仲間として手を取り合い価値を作る、その全てに深く関われるポジションが人事であると思うし、そうあってほしいなと思います。色々考えましたが、結局はこれが経営における競争力を形作る全てだと思います。そして現代は採用大戦争時代、企業の総合力が必ず問われるからこそ、社員全員をまとめるブレない強いセンターピンが求められています。

④最後に

こんな変革期に、我々はツールの提供を通じて、いい意味で人の価値を無くしていきます。これまでは人が頑張って努力して行ってきたことを、誰でも行える状況を作っていきます。それこそがツールの価値であり、我々の役目だと思います。

そして、センターピンを担える採用担当の人たちがどんどん増えれば日本の企業の未来も明るいんじゃないんかなと思っています。

何度も記事を読み直して、どれだけ編集してもフワッとしてて尖りのないつまんない記事だなぁと思われて仕方なかったので、簡潔に伝わるであろうポエムVerを作ってみました。こっちも良ければ読んでみてください。w

明日は Kodai Teraguchiさんの記事です。楽しみです!!

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Ichiro Shoda

株式会社HERP 代表取締役CEO/採用の事務作業を自動化するツール HERP の開発・提供/採用コンサルティング/https://herp.co.jp/