TechBlog運用の難しさとHERPでの考えについて(TechHub公開に寄せて)

Ichiro Shoda
Mar 15, 2018 · 10 min read

HERPの技術発信の場として、HERP TechHubをリリースしました。会社のドメイン上ではなく、個人のブログのHubとしてのページを作成する形をとっています。 それに至った背景について書いてみたいと思います。


TechBlogのあり方を考えてみる

TechBlogの目的と内包している問題について、エウレカでTechBlogの開設・運用をリードした経験から得られた課題も踏まえて考えてみる。

TechBlogの目的

従来のTechBlogの開設・運用の目的は以下の3つにまとめられると思う。

  • ブランディングを通じた採用力の向上
  • エンジニアの個人ブランディング
  • エンジニア全体・技術貢献

ブランディングを通じた採用力の向上

エンジニア採用においては情報発信は欠かせない。もちろん一番大事なのは良いUXを提供できるプロダクトを作り、その品質を上げていくことだが、それだけでは社外の人間からして技術への考え方や、裏側の技術までうかがい知ることはできない。そしてエンジニアは過去のエンジニアたちが作り上げたものの上で自分は開発をしているという意識が強く、情報や知見は共有すべきものであるという思いが強いからして、自社で技術を活用する中で得た知見は共有すべきであるという考えも存在していると思う。このような要請から、昨今は有名なプロダクトの技術スタック、開発に付随して得られた知見が数多くインターネット上で確認することができる。エンジニアの転職は求人媒体や、エージェントさんから得られた情報だけではなく、インターネット上や知人のエンジニアから入手した情報によって意思決定されることが多いのは簡単に情報を得られる素地があるからだ。

企業としての技術発信は採用力向上のためには欠かせないものであり、TechBlog開設もそういった目的を設定していることが少なくないはずだ。

エンジニアの個人ブランディング

上述の通り、開発に関わる知見は広くインターネット上で共有されるものであって、同時にその著者が誰かというのは一目でわかるようになっている。そして自分の知りたい知見を得られたことへの感謝の気持ちもあいまって、知見をシェアする側のエンジニアは一定の認知を獲得し、それが大きくなると、エンジニアの間で有名な存在になる。そういう状態になれれば、転職の際はもちろんプラスの影響を得られるだろうし、企業側からすると、そんなエンジニアが採用できればその知名度をフックとして入社希望者を集客できるかもしれないと考えるのが普通である。だからこそ、エンジニア個人は自分の知名度を上げたいと少なからず思っており、TechBlog上に個人名で記事を寄稿することはこれに繋がる可能性がある。

技術貢献

これも上述の通りだが、エンジニアはエンジニアコミュニティに貢献をすべきである、恩を返すべきであると感じていることが多く、TechBlogを通じて知見をシェアすることでこの目的を果たすことができる。

TechBlogの運営における問題点

これまでのTechBlogの運営において企業で起こりがちな問題点を考えてみる。こちらは内容に被りもあるが以下の3つに分類してみたい。

  • 優先順位上げられない問題
  • 編集長絶対必要問題
  • インセンティブ設計難しい問題

優先順位上げられない問題

エンジニアが業務において本来やるべきことはプロダクト開発であるし、現代のプロダクト開発において開発スピード、プロダクトリリースサイクルを早くすることはとても重要である。であるから、基本的にエンジニアはとても忙しい。そして忙しく開発をしてもらうことは経営者からするととてもありがたいことで、この開発業務のスピードを下げてまでブログの執筆をして欲しいと思うシチュエーションはあまりないと思う。だからこそ、会社の採用のため、技術貢献のためには必要であるとは理解しつつも積極的にブログ執筆に時間を割くことが難しい。

編集長絶対必要問題

上記の問題に関連して、結局ブログ運営自体を誰かが統括する必要が出てくる。エウレカで採用広報担当をしていた時代にはここにかなりの時間を使っていた。月間で最低限投稿したいブログ本数を決めて、誰にお願いするか、何を書いてもらうかまで編集部側で考える。そして会社としての投稿になるため、ある程度の内容確認、クオリティコントロールの必要が出てくる。クオリティコントロールになってくると、採用広報担当では賄いきれないので、今度はエンジニアのマネージャークラス以上の協力を仰ぐ必要が出てくる。全体的にかなりコストのかかるプロジェクトになりがちである。しかも、編集部が機能しなくなると途端に記事執筆・リリースのサイクルが回らなくなり、ブログ自体放置され、アドベントカレンダーは頑張ろう、みたいになったりする。

インセンティブ(KPI)設計難しい問題

業務時間に書いてもらっていて、しかも会社側の目的で書いてもらっているからには、何かしら報いる必要が出てくる。会社の看板を使って記事発信をして個人のブランディングにもなるのだからメリットもあるけどなぁと思う気持ちもあるのだが、それだけだと常に協力しようとは当然ならない。だからこそ、何かしらのインセンティブを考えねばとなることが多いように思う。このインセンティブがまた難しい。有名な実績解除や、表彰に組み入れたりと色々なトライがなされていると思う。ただ、これも上記の問題に付随するが、業務の手を止めてまでブログに向き合おうと思えるインセンティブを設計するのはとても難しい。そもそも目的がブランディングであって、明確なKPI設計が難しいからこそ、公平なインセンティブ設計をしようと思うこと自体間違っているのかもしれない。

この問題が全部クリアすることが目的になっていて、本来の目的に対しての進捗を追うことができていない状況もあると思う。

会社側の目的>個人のメリット という状況が課題

個人に報いられてないのが根っこの問題ではないかなと感じてくる。起点が会社の認知度向上・採用力向上・ブランド価値向上であることが多いとすれば、こうなって致し方ないとも思う。そして会社の目的が大きいからこそ、頑張ってはみても結局息切れしてしまうんだと思う。


HERP TechHubの思想

手前味噌ながら、上記の課題を踏まえて、社内のエンジニアと相談の場を設けた。その中で出てきた意見は以下のようなものだった。そしてHERP TechHubの形はエンジニアから出てきた意見を元に生まれたものである。

  • 会社ブログでこのブログは絶対読んでるっていうの、日本のブログでそんなに多くない
  • クラスメソッドのブログはすごいけど
  • 個人の人のブログでこれは読む!みたいなのは結構ある、そういうのはfeedlyとか登録してる
  • 個人ブログは自分の時間に自分の学びの棚卸しにも書こうと思える
  • デザインも結局編集部側の意向で決まるから面白みない
  • ブログ自体もめっちゃはえーとか、この読みやすくする仕組み可愛いとかあったほうがいい

社員エンジニアが関わっても良い、関わりたいと思える要素を作る

個人のブログに飛ばすHubとして運用する

エンジニアは個人ブログがたくさん見られることが一番メリットがあるし、嬉しい。そして個人ブログだからこそ、仕事と分けて考えることもできる。会社ドメインで作られたブログの一執筆者として書くのではなく、個人のドメインかつ自分が所有しているブログ上の記事をピックアップして流す場所として会社の情報発信をしていけばいいのではという考えに至った。あくまでもFeedのようなページを用意して、会社で採用している技術に関するブログのみ流していく場所として運営することにした。言い方はよくないかもしれないが、個人ブログだから過度に会社としての検閲、クオリティコントロールは必要ない。もちろん流す記事は最低限確認するが、選んだ記事を流すだけなので、そもそも基準を満たすもののみ流せばいい。

こうすることで、個人の執筆モチベーションを無理に作るよりは、自然な形で運営ができると考えている。

ブログ自体を静的ジェネレーターで開発し、みんなで可愛く読みやすくする

規定のデザイン、CMSの中で執筆だけをお願いするのではなく、ブログ自体も一つのプロダクトだと位置付け、GitHub上のプロジェクトとして管理することにした。趣味感覚でみんなでいいものを作っていこうと考えた。インターン生がPRを出してももちろんOKだし、OSSとして社外のエンジニアの方からPRをもらえたりしたらとても面白そうだなと思っている。例えば、プロフィールの表示形式がどんどん変わって言ったり、読み込みの速度が格段に上昇したり、おすすめレコメンド機能が生まれ、その精度が向上したり。いろんなことができる。また、PRを受け付けることで、読者の方々の要望にも答えやすい仕組みになるかもしれない。エンジニアにとっては直接メール文章を作って要望を上げるよりはハードルが低いんじゃないだろうか。今回の実装は@mazamachiが担当してくれた。OSSとして公開する準備を進めているので、整い次第改めて共有もしていきたい。

こうすることで、エンジニア全員が関わっている一つのOSSプロジェクトのような運営ができると考えている。

会社としてはFeedly等、RSSに登録される数が増えればいいなと考える

記事のPV数や、SEOはもう気にしない。すごいエンジニアのブログをRSS経由で購読するかのように、HERP TechHubも認識されたらいいなと考えることにした。これは経営者としては一つのデメリットかもしれないが、あまりあるメリットがあると今は考えている。

こうすることで、難易度の高いKPI設計をしてトラッキングする必要もなくなり、管理コストが圧縮できると考えている。


採用担当(経営者)として

エンジニアの採用はどんどん困難な時代になり、採用担当にも経営者にもさらにエンジニアの理解が求められてきていると思う。今回のHERP TechHubに関しても、僕自身の考えでこういう形になっているのでは全くなく、エンジニアとの率直な対話を通じてこのような形でのスタートに至っている。特に、@hiroqnの意見を踏まえて、みんなで議論してこういう形に至った。経営者としては会社の技術力をどうPRしていくのかをもっと科学していかないといけないと思っているし、そのためにはエンジニアを理解をするための対話が重要な一要素だと改めて感じた。

今回のこのTechHubの形もまだなんの実績もなく、始まったばかりなので、さらに良い情報発信、技術貢献、技術力のPRの形を考えつつ、社員にきちんとメリットを作れる仕組みを考えていきたい。

Ichiro Shoda

Written by

株式会社HERP 代表取締役CEO/採用の事務作業を自動化するツール HERP の開発・提供/採用コンサルティング/https://herp.co.jp/

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