サービスデザインから考えるベイマックスの面白さ

BIG HERO SIX(ベイマックス)を改めて見返している。

丹念に見るといろいろと発見がある。そして何度見てもベイマックスの製品性設計が実に良くできていることに驚く。それ自体、現実に在るサービスデザインとして真面目に検討できる品質レベルだと思う。

その起動方法:

ベイマックス、「アウチ!」で起動するのはGoogle GlassのOkay Glassに比べると面白い。無意識な痛みの発生が起動条件と言う良案。利用シーンが非常によく練られているとも言えるし、逆に言えば意識的な利用には向かない起動条件とも..。

ベイマックスが起動時に必ず自らの名乗りをあげてそのサービス内容を明示するのもなかなか面白い。私はヘルスケアコンパニオンです!と、明示することでサービスを受ける側にもその場で適切な心構えができるだろう。

サービスプロセスの妙味:

「アウチ!」の起動条件を満たした後は「痛みは何段階ですか?」と尋ねることで、その後の対応を準備できる。また、人体のスキャンを行うというプロセスに進む際にも、その手続き実行を明示的に述べているのが面白い。

ただし、痛みを段階で聞くという初期プロセスは物語内では余りうまく機能しておらず、人体のスキャンも作中を見る限りは好意的に受け入れられていない。これは改良の余地ありだろう。

ヘルスケアコンパニオンであることを名乗るのは、どうやら初回だけではなさそうだ。二回目にも自己紹介の言葉が繰り返されるのだけど、それには何か意味があるのだろうか?個人的には、初回時のみの自己紹介に限って良いような気がする。とはいえその自然なサービスへの入り方や能率的ながら心のこもったコミュニケーションスタイルは好感が持てる。

サービス終了条件について:

終了条件は「ケアに満足した」の言明による。これは物語のエンディングに向けて大きな伏線にもなっているのだが、逆に「満足しない」という場合の再帰的なプロセスにも興味が湧く。

カードスロットの存在:

ベイマックスの胸部には記憶を差し替えられる複数のカードスロットが有る。本来のヘルスケアメニュー以外に戦闘的なメニューを追加することでパワーアップする様子が描かれているが、その一方ではヘルスケアのコアソフトを外し戦闘的マインドのみになった際の暴走状態をもたらすこともあるといったシステム的脆弱性・危険性も描かれている。

バッテリー問題:

あらゆるモバイルデバイスで課題になるだろうバッテリー寿命だが、ベイマックスの場合は省エネモードを設けることで電力消費を極力抑えて、少なくともベースステーションまでは戻れるように工夫している。また、その際にはよっぱらったサラリーマンのようなファニーな存在感、振る舞いの滑稽さを演出することで省エネ状態でのサービスレベルの低下による悪影響を抑えているようだ。実に巧妙な製品デザインと言えるだろう。

コミュニケーションロボットとして:

ヒロが深く傷ついて心理的なケアが必要な場合、ベイマックスはPCにアクセスして彼を癒すことができる最良の友人たちをチョイスし呼び出せる。実にこまやかなアプローチだし効果的なソリューションだ。

物語内の描写を見る限り、そういった場合のケアに関してはPC情報を用いた学習を行っているように見える。つまり、イレギュラーな対応に関しても自己学習できる能力がベイマックスにはビルトインされているのだ(すごい!)。ソーシャルグラフから友人を選びコールするところまでは今の技術でも可能だが、それを状態情報から読み取り、自発的に選択し実行しているところが実に素晴らしい。ロボット自身の学習による能動的コミュニケーションが持つ可能性が読み取れる。

ロボットの自己定義と柔軟性のバランス:

ベイマックスは自らのキャラクターに対して忠実であり、それに合致しないようなセルフイメージ、戦闘能力や戦闘的外観、飛行能力などに対して素朴な疑問を呈する。また、新たな能力を入手した際の能力の定義や呼び出し方にも工夫を感じる(技はその技固有の名前で呼び出される)。設定ツールの存在なども興味を覚えるし、外装部分を3Dプリントでカスタマイズできるなどの自由度にも魅力を感じる。

自己定義に忠実であることと(用途が明確)、その一方でニーズ次第でカスタマイズ可能な自由度のバランスはベイマックスの魅力の一端だろう。

人に寄り添い成長するロボット:

物語は、主人公ヒロの成長の物語であるだけでなく、ベイマックスにとっても成長の物語だ。ロボットでありながらヘルスケアによる寄り添いを通じて、特にその心のケアに於ける最適化のプロセスは注目に値する。自然な質問の繰り返しによってヒロのニーズを探り出して、それに懸命に応えようとする学習プロセスが非常に素晴らしい。

それはある意味適正にデザインされた利用ケースとソリューションの結合の成果とも言えるだろうし、だからこそ生まれるヒロとベイマックスとの親密さや相互理解の深さとも言えるだろう。マンマシーン・インターフェイスという言葉が隆盛した時代とは隔世の感を禁じ得ない。人とマシーンが相互に人間的に寄り添う状態が米マックスの魅力でもある。

もはやロボットは、人と向き合える対等の心理的共感共有を志向する時代に向かっていると言えるのかもしれない。それはもう、ロボットの有するべきメカニズムをどう効果的に実現するのか?というハードウェア的課題への挑戦を超えた、人の「心」、ソフトウェアとしての課題だと思う。

Tonchidot & Telepathy & DOKI DOKI!!

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