ベイビーのマーケティング報告

ベイエリアのキャンパス(主にUCバークレイ)で得られた知見を元に、今ドキドキが進めている、コミュニケーション・アプリ「Baby App」を製品マーケティングする上での発見や洞察をつらつらと書き記してみます。

・出会い系アプリへの食傷。

ティンダーの共同創業者の女性がセクハラによる降格が契機になって退任し、ティンダーと似ていながらも、レディー・ファーストを価値軸にしたサービス・デザインによるBumbleというアプリをローンチしました。

デートアプリの先駆けとして知られるTinderの元共同創業者であるWhitney Wolfe氏が、同じく元COOのChris Gulczynski氏とデザイン部門の元副代表であったSarah Mick氏と一緒に、TinderのUIに似たアプリBumbleをリリースしたと伝えられました(下は関連記事)。
http://thebridge.jp/2014/11/report-...

セクハラ云々や創業者チームの内紛などシリコンバレーならではの醜聞は話題になりましたが、そういうトラブルがあろうとなかろうと、ティンダーの苦境は起こり得たと思います。なぜなら、かねてから指摘されていたように、ティンダーで出会える確率は1%にも満たないからです。

要するに、男性からのオファーに対して女性が反応する事が、システマティックなレベルでとても困難になっている。結果、出会えない男性も不満が高まっているし、あまりにインフレ化してしまい、結果留まることのない男性からのオファーに対応するモチベーションを女性が失ってしまっている。

その一方、新アプリBumbleのアプローチは実にティンダーの反省に満ちたアプローチで、要するに女性が真面目に使おうと思えるサービスデザインを徹底しようとしている。レディーファーストは、たとえば対象が男性に限定されておらず(ティンダーも仕様的には同性の出会いが可能なのですが、異性間のセクシャルな出会いのイメージが強すぎる)、女性が女性と友達になるという視点も入っているので、そういった面で健全さや「量的ではない、質的な」出会いの機会を提供できれば、非常に可能性があるだろうと思います。

人が人と繋がることをやめることは今後も決してないですし、その機会の提供者としてティンダーは大きな転換(異性同士がフリーに出会えるオープンな場所を提供した。それまでは会員制などの閉ざされた商用的空間がすべてだった)をもたらしました。

ですが、それはセクシャルな出会いに限る必要もなく、またその先のより良いマッチングやコミュニケーションまでをカバーできないとソーシャル製品としては片手間だと言えます。出合い系で、物理的に出会えるということがコミュニケーションアプリの体験サイクルとしては重すぎて回らない(アポイントしてそこに出かけて初対面同士で会うということのコストの高さは想像できます)。その結果として出合い系アプリへの食傷が顕在化しているのではないか?

逆にそこを解決することができれば(つまり、気持ち良い出会いとコミュニケーションの機会)既存の関係性に留まらない、新たな出会いと繋がりのネットワークが生まれる可能性があります。いままで、いわゆる出合い系アプリが開拓した領域が、より健全で、なおかつ楽しい空間として、新たに提供できるのではないか?と、考えます。

良い出会いと、会話を超えるものはなかなか無い。

・おしゃべりは無くならない。

Bumbleも含めて、ほぼ全ての出会い系アプリはテキストチャットでコミュニケーションを行います。一方、特にアメリカのアプリユーザーは実に能くしゃべります。キャンパス内のあちこちでおおっぴらにしゃべる光景が見かけられます。

そう言う意味では、電話番号なり連絡先をわかった同士のコミュニケーション手法としての(声による)おしゃべりは、出合い系アプリが提供している「新しい友人との出会い」から先のコミュニケーションとしては、余り利用されていない。

が、実はそういうシチュエーションの方が、声によるおしゃべりが有効だと言えます。何しろテキストチャットは実に静的・機械的・紋切り型で心が込めづらい。一方で、「声」という媒体は、実に能く人の個性や感情や状態を雄弁に物語ってくれます。ちょっとした感情表現、抑揚や声量、或いはニュアンスの込め方次第で、少しの言葉が大いに意味を持ちます。

しかも、タイピングの手間がいらず、マイクに向かってしゃべるだけ、というお手軽さもあります。恐らくおしゃべりするという行為そのものは余り衰えない。が、一方で、今まではそれほど用いられてこなかった、新しい友人との出会いに於いて、声が非常に能く機能する可能性を感じます。

おしゃべりは究極のソーシャルではないか?

・会わずに、話せる。

様々なインタビュー、ティーンエイジャを含む女子学生中心のインタビューで見えてきたのは、「会わずに、話せる」という価値軸です。

つまり新たに友人を発見し、出会い、お互いが心を許せるようなサービスは従来だとmeetup.comとかdown to lunchなど何らかのイベントや会食、コーヒーミートアップなどリアルの出会いを入り口にデザインされたものが主でした。

ベイビーはそれを「近距離のユーザーどうしが、声を通じてマッチングをする」という方法論で出会わなくても話せる相手とマッチできるサービスとして、再度問題解決しようとしています。

確かに、出会うという接点から始まる関係性は信頼度も高いし、非日常の面白さもあります。が、日常的にそれを行うには実にコストが高く、発生する頻度も低い。日常的な「おしゃべりのできる友人を見つける」というゴール地点から考えると、手間隙がかかりすぎる。

なので、出会わなくても良い。しかも声を通じた出会いで、健全に楽しくおしゃべりの機会が得られれば、新たな問題解決(人がおしゃべりしたいとき、気軽にすぐおしゃべりできる)を出来るかもしれない。

もちろん、既存の電話帳に於いては、一定のおしゃべり相手をストックしている場合があります。

が、だからといって、そういう相手が「おしゃべりしたいときに直ぐに気安く出来るのか?」と、なるとまた別問題です(現実には、お互いが話したいというモチベーションを共有しない限りは、なかなかおしゃべり出来ない)。

ベイビーはそれを課題として捉えて、「会わなくてもお話ができる」ことを実現しようとしています。

話したい時、話したいことを楽しく話せる。実現できると素晴らしい。