10841キロメートルの愛。

京都にはSXSWが足りない。SXSWには京都が足りない。

takahito iguchi
Feb 26 · 13 min read

東京が燃えている…。

最初、サウスバイにコミットしたのが、2011年3月11日。その日はまさに東北大震災の初日でもあって、オースティン空港到着後 即当時僕の会社の CFO 井上さんからの「井口さん、東京が燃えています」という最初の一報を電話で受けた時には、空港内のテレビスクリーンにCNNの伝える燃え盛る東京湾の様子が生々しく映し出されていました。

そこから10年近くが流れ、当時自社の主力商品だった拡張現実アプリのセカイカメラが、東北の震災ではほとんどお役に立てなかったと言う痛恨の想いは未だ燃え続けています。それが今でも自分の体内で常に滾り続けている、サウスバイへのコミットの原動力になっています。今今手掛けている音声ソーシャルのダベルもその原動力から生れ出たモノです。

今回「 10841 」という謎な名称のコミッティを立ち上げて、ほぼ一ヶ月という短期間に、京都ではある意味史上初ともいえる本格的なサウスバイ・サテライト・イベントを実現する機会を得られたのは、本当に幸いという他ありません。

最初のキックオフは渋谷円山町だった。

2011年サウスバイの興奮の後アメリカから帰国後、翌年 2012年のサウスバイに参加したい起業家をアジテートするためのミートアップイベントを開催させていただいたのは、渋谷丸山町のクラブでした。

その時点では 10年ほど掛けて、通算で 1,000名前後のサウスバイ参加者が生まれ出るのを期待して始めた運動だったのです。ところが今では単年度でも軽く千名を超える日本人が海を渡ってサウスバイに参加するまで成長を遂げました。有り得ない!(いい意味で..)

とはいえ、関西、特に自分がサンフランシスコにいない期間中の仕事場と居住地にしている京都に於いては、サウスバイはまだまだ全く認知されていません。

実際サウスバイ期間中のオースティンで京都本拠の大企業や、大学、研究機関、クリエーター、アーティスト、起業家、スタートアップなどを見かけることは非常に稀なことです。

考えてみれば自分自身が日本での拠点を東京から京都に移してから、この5年ほどの間、京都の地でサウスバイに関するイベントの開催とかそれにまつわる展示などだけでなく、そもそも日常の雑談内でも「サウスバイ」のキーワードが出て来るることは全くありませんでした。

ですので、立命館大学食マネジメント学部准教授で昨年のサウスバイで、日本酒ゼリーを展開されていた野中先生から「井口さん、ぜひ、この京都でサウスバイのイベントをやりましょう!」という投げかけをいただいた時は「そうだ、それをやらなければ!」と、即決即断したのでした。

そうだ!京都にはサウスバイが足りないし、サウスバイには京都が足りない!

とはいえ、それはサウスバイ開催期間の3月の直前のタイミングで、しかもSXSW不毛の地の京都で、しかも運営母体の無いままミートアップイベントを超短期間に立ち上げ、それをちゃんと成功させなくてはならない!という難題なのですから、決して実現容易なアイデアではありませんでした。

そこで、いくつか、成功の確度を上げられるようなアイデアを頑張って捻り出しました。時間も資本金も組織力も影響力も何もかも一切が無い弱小零細「10841」コミッティとしての苦肉の策です。

超困難を可能にするアイデアとは?

1)そうだ、サウスバイ経験豊富なSXSWerの皆さんに協力をお願いしよう!

東京にはサウスバイを何回も攻略し、既に大きな成果を収めた玄人が大勢いますし、彼らの経験と熱意と行動力はそのままサウスバイ・コンテンツとして最高品質なのですから、先ずはその皆さん、諸先輩がたにお声がけすることにしました。

それで20回以上もサウスバイ参戦して来た元サウスバイジャパンオフィスの生ける伝説オードリー木村さんを筆頭とする名うてのSXSWerの皆さんに芋づる式にお声がけして、企画検討段階からのご協力をお願いすることになりました。そして、それらほぼ全ての方々がわざわざ関東から関西へ大挙移動して、このイベントに全面協力いただけることになりました。

あり得ない!と言うか、幾千万の味方の助力を得られました。富士通総研佐々木哲也さんやあの伝説のスナックゆかり主宰加藤優香理さんなど豪華参戦です。

2)予算交渉など、お金周りの仕事を皆無にするために経費ゼロでやろう!

お金があればあったので、それを出し入れしたりする管理コストも掛かりますし、そもそもその資金を獲得するコストも、その後の説明コストなども決して少なくない上、参加する皆さんとの折衝やその後の支払いなどの事務処理コストもまあまあ掛かります。しかも我々には何ら運営母体的な後ろ盾もバックオフィスも存在しない。

ですので、一律コストゼロで、スピーカーの皆様へのお支払いや(逆に)イベントを通じた売り上げの管理などは一切行わない方向で船出しました(例えば仮に物販等をやった場合も手数料や収益などは一切求めない)。それでもご参画いただいたスピーカーやパフォーマーの皆様には、本当に感謝の言葉もありません。

そして、全くあり得ないようなことが現実に起こりました。

個人的には博報堂「広告」編集長小野さんとインフォジーンの代表取締役 CVO 小林さんの参画は、ある意味嬉しすぎる誤算でした(コバ編には渡米直前羽田からのビデオ・コールに応えて頂いたビデオレターを通じて参加してもらいました)。

3)インパクトのある人たちの参加表明を早めに取り付けてアナウンスしよう!

そして、そもそもイベントをやる以上は最高のコンテンツでサウスバイのタネを京都に撒きたい!本気でそう思いました。ただ、関西あるいは京都で SXSWerのスピーカーやパフォーマーの方をお願いするのはほぼ無理!です。とはいえ、サウスバイ的感性や行動力の人は京都および関西にわんさかいます。

ですので、そういう人たちをドンドン巻き込んで、いち早く名乗りを上げていただくことで、イベントそのものの初速がずっと上がるだろうと考えました。

ここのパートは共同発起人の立命館野中先生や、モノ作りスタートアップ支援の京都での立役者でもある、Darma Tech Labs 代表取締役 牧野さん、そして博報堂関西支局の福田卿也さんにお願いすることにしました。結果立命館総長の仲谷先生や、京都大学総合博物館の塩瀬先生、造形大の漫画学科長の鴨志田さんや経産省の万博推進室の室長岩田さんなど凄いメンバーが次々と集結する異常事態が起こりました。本当にあり得ない!

4)会場の運営とコンテンツのマネージメントはファブカフェマテリアルの人とサウスバイの人に一任してしまおう!

そしてサウスバイのコンテンツに関してのクォリティ管理など、難しいと同時に非常に大事な部分はサウスバイジャパンオフィスの曽我さんにお任せして、そして最も困難が予想される会場の設営や運営、そしてイベント告知に関わる情報の出し入れに関しては本イベントのメイン会場、ファブカフェマテリアルの木下さんにお任せしました。

無茶振りすぎるご提案に瞬時にご快諾いただいたことには僕自身驚きましたが、京都にサウスバイのタネを蒔く事の潜在的価値について、お互い、疑いようの無い確信が持てたのだと思います。

実際にこのパートは大変な複雑作業の連続だったのですが、お二人の八面六臂のご活躍であらゆることがスムースに進みました(と、僕が感じてしまうということは、水面下のお仕事がいかに大変だったか!?ということの証左なのだと思います)。本当に凄すぎてあらゆる異常事態がスルスルと解決されていく様子を呆気にとられて見ておりました(自分はそう言う処理能力ゼロなので、もはや神業と感じました)。

5)サウスバイのカルチャーを伝えるには会場は一拠点ではダメだ!

ご存知の方も多いかも知れませんが、サウスバイはオースティン全体のお祭りと言っても良い都市全体での展開が壮観ですし、その都市全体の騒然としたカオスが醍醐味でもあります。そうするとファブカフェマテリアルの一拠点だけではサウスバイの魅力を伝えるにはどうしても限界が有ります。

そうだ!その周囲には素晴らしい仲間たちがいるじゃ無いか!?それに気づいたので、早速五条楽園のアンノウン主催はてな近藤さんと、これも同じくご近所の天空のカフェ マールカフェ主催友添さんにお声をお掛けしたら、ほぼ即断でオフィシャル・パートナーを引き受けてくださいました。

そして前夜祭はアンノウンで、その上でフィナーレの打ち上げパーティはマールカフェでやることになったのですが、当然来場者もカウントできていない上、客層もそのプロフィールも全く想像できていない中飲食の準備や場所作りをどうするのか?正直全く見当付きません。

とは言えミートアップの前後、またはその最中の飲食や、濃密で鮮烈な人と人との交流や語り合いこそサウスバイの素晴らしさを彩る大切な要素。とにかく何とかなるに違いない!と、それぞれ前夜祭とフィナーレ・パーティ準備のためのチャットスペースでは日夜熱い議論が重ねられ、結果としては有り得ないほど最高に素晴らしい場が、メイン会場以外でも生み出されることになりました。有り得ない!(いい意味で)

6)インタラクティブなピッチイベント無くしてはサウスバイの醍醐味は伝えられない!

そして、何よりこれはやる他ない!なことが最後に一つぽっかり未解決なまま残っていました。そうです。ピッチバトル的な参加者自身が自ら主役になるプログラムの設計と実施です。

サウスバイ期間中はおそらく数百?規模で様々なスタイルのピッチやプレゼンのセッションやミートアップが自然発生しています。

きっとサウスバイ主催者自身すら把握してない非常に広汎な範囲でカフェやバー、キャンバスやオフィスなどあらゆる場所や空間が新しい価値提案とその評価というインタラクティブな場になっているのです。

ここは造形大の川向先生(TEDx Kyotoでお会いして以来の仲です)と立命館の野中先生と富士通総研の佐々木さんに丸投げしました。なぜなら自分自身が急遽サウスバイの準備のためこのイベント手前の一週間は日本国内におらず、ずっとテキサスオースティンに居ることになったので、とても自力では回し切れないことが明らかになったのです(イベント直前の土曜夜に京都に帰還するというギリギリの綱渡りでした)。

本当に酷い話ですが、とは言え凄腕の皆さんのこと、きっと奇跡を起こしてくれるに違いない!と勝手に決め込んで(本当はこういったセッションをオリジナルで発案して実施するのはそもそも簡単にできる物ではないですし、レギュレーション設定も必要な役割の人たちのアテンドや現場での指示取り回しなど考えるとそもそも出来る訳ない!という判断が妥当な筈です)羽田を飛び立ったのでした。

が、最終的に蓋を開けてみると、コミッティも驚くほど最高の仕上がりになりました。それこそ今回イベント最高の成果とも言えるクライマックスだったと思います。まさにアリエナイ!ことが予想や計画や準備を超えて現実に目前に起こったのでした…。

10841って、そもそも何なの?

さて、なんともかんともアリエナイことだらけだった、今回のサウスバイ京都サテライトイベントですが、じゃあ10841とは何だったのか?と言いますと、ともかく京都にサウスバイのタネを蒔くための臨時組織された即席混成チームです。

名称はひねりにひねって、京都とオースティンの直線距離10841キロメートルをそのままコミッティ名称にしました。

契約も覚書もルールもレギュレーションも何もないまま、そもそもすり合わせのための事前会議とかそういうプロセスもほぼ無いままよくぞ立ち上がり、現実化に漕ぎつけ、その上これだけの異常とも言える時空を作り上げられたものだ!と、発起人の自分自身でさえあっけにとられるばかり…です。

そんな驚くべき出来事を通じ、茶の湯で言う一座建立(招いた者と招かれた客の心が通い合い気持ちよい状態が生まれます。このことを「一座建立」といい茶道ではとても大切にします。.. 裏千家のホームページより)とも言えるグルーブが出たのは、この即席混成チームの「むしろ、カオスを良しとする」気概や挑戦心の賜物ではないか?と思います。

ですが、本当にこんな機会を与えてくださった野中先生には感謝の言葉もなく。そして苦楽を共にした、牧野さん、曽我さん、木下さん、博報堂の福田さん、ロフトワークの田根さん、更には友添さん、近藤さんなどコアとなる皆々様にはこのブログを通じて改めて心からのお礼の気持ちをお伝えしたく。もちろんオードリーさんや優香理さん、佐々木さんたちを筆頭とする SXSWerの方々にも心から感謝申し上げます。

サウスバイの2020は一体何が待ち受けているのか?

あと15日ほどでテキサスオースティンの地では、また新たな伝説が生み出されるべく、数えきれない大勢の人たちが準備に余念ない筈ですが、我々も負けていられません。新しいアイデアと情熱と行動で世界を塗り替えていく気概さえあれば資金や組織力や影響力など関係なく、全く新しい行動を起こせることを自ら体現しようではありませんか?

10841としても、次何が出来るか全く不明な現状ですが、サウスバイ2020直後からネクストアクションを改め考えたく思っていますので、「こう言うことをやりたい!」と言うスリリングなアイデアをお持ちの方はぜひ直接コンタクトしてください。では、再見!再見!

takahito iguchi

Written by

Tonchidot & Telepathy & DOKI DOKI!!

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