非デザイナーのぼくが、UIデザイン会社でインターンをして1年。学んだことを書いてみる

Toshiya Isobe
13 min readOct 9, 2017

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「デザインの力を証明する」

その言葉に出会ってからそろそろ2年。その言葉を掲げている会社でインターンを始めてからまもなく1年が経ちます。

それまでの自分は、大学で旅サークルを作ったりアジアに関するメディアをやったり、ベトナムとフィリピンでライターや人事アシスタントとしてインターンをしたりと、“Design”に関わることはしてきませんでした。

でも、ユーザー体験(UX)という概念を知ってから“DESIGN”に興味を持ち、もっと知りたい!自分も実践したい!と思うようになったんです。

(Design=“見た目や表面の美しさなどをビジュアル面の設計”であり、DESIGN=“広い意味でビジネスやプロセス全体に対してデザイン的考え方を用いて価値を生み出す為の戦略”という違いがあるそう。

引用:DESIGN Shift: これからのビジネスはモノより体験が価値になる | freshtrax | デザイン会社 btrax ブログ

大学卒業までインターンは続けるので退職エントリーではありませんが(笑)、1年経ってどんな学びがあったのかを言語化しておきたいと思います。

※ 本記事一般論を伝えることではなく自分の解釈を述べたものなので、客観的事実と違う可能性もございます。予めご了承ください。

仮説は正しかった、と思う。

そもそも、どうしてデザイン会社でインターンをしようと思ったのか。きっかけについては以前インタビューしていただいた記事でも話したのですが、デザインとは、デザイナーだけにとどまらない普遍的なものなのではないか?という仮説があったからです。

UXについて調べていた去年の夏には、こんなメモをEvernoteに残していました。

他者との関係がある限り、相手に価値を感じてもらうという働きかけはいついかなる場合も成立する。すなわち、相手のことを考えてその人のためにという考え方を持っておくことは、どんなことの根幹にもなりうる。

なぜ論文のような文体で書いているのかは置いておいて(笑)、セブ島のマクドナルドでふつふつとやる気がみなぎり、「うおーーー!」となったことを今でも覚えています。

その後、すぐにWantedlyで次のインターン先を探し、気がついたら現在インターンをしている会社に行き着いたわけです。

時間をかけてたくさんの人のお話を伺ったり自分でも調べる中で、ある程度自分の持っていた仮説は正しかったと思えるようになりました。

なので大きな学びとして、非デザイナーもデザインに関する考え方を知っておいた方が得する、という答えが出ました。

では、具体的にどんな考えからそう導き出せたのか。3つの項目に分けて書いてみます。

(1 ) お客さん視点が身に付いた

以前から、自らイベントを作って開催してみたり、Webコンテンツを生み出したりすることは経験していました。読者やお客さんのニーズを踏まえていたのは事実です。しかし、本当の意味で届ける相手のことを考え抜いていたかというと、そうではないなと感じています。

これまでは、イベントを開催するという事実それ自体に面白みを感じていて、自分と運営メンバーばかりに時間を使っていました。掲げた集客目標を達成したり、予想以上にたくさんの人に記事を読んでもらったりしただけで満足していたのも正直なところ。

なので、見かけ上の成果と言えたとしても、来てくれた人・読んでくれた人にとって、本当の意味でいいことだったかまでは想像もできていませんでした。

そういった状態から、「人間中心主義」「ユーザー視点で考えよう」「カスタマージャーニーマップを描こう」といった考え方・実践方法を経て、届ける相手のことを考え抜く、という意識が高まったと感じています。

イベントの主催を例にすると、

  • 「このイベントを通して、お客さんにどうなってほしい?」
  • 「どんな感情になってもらえたら、このイベントは成功だと言える?
  • 「前提条件のないお客さんがこの場に来た時に抱える不安ってなんだろう?」

などといった問いを投げかけることが格段に増えました。

届ける相手を議論の中心に置くことで、わざわざ時間を割いてイベントに足を運んでくれる相手への敬意と、本当の意味での“来てよかった感”の醸成を大切にするようになりました。

“本当の意味”を考え出すとキリがないかもしれませんが、ぼくは「自分が相手の立場だったとして、一連の体験に価値を感じるか」と定義しています。

とはいえ、まだ見えやすい成果は出せていないので、引き続き挑戦していきます。

(2) 「とりあえず進める」が身に付いた

とりあえず進める力はわりと大事だなと感じていて、影響を受けたのは、間違いなく“プロトタイピング”という概念と手法でした。

これを読んでくださっているのは「自分はデザインについて知っているけど、非デザイナーの若造はどんなことを考えているんだろうか」と思っておられる方が多い気がしていますが、非デザイナーに伝えたい内容なので、念のためプロトタイピングの説明も入れておきます。

プロトタイピングとは、いきなり完成品を作るのではなく、不完全なものを少しずつ作り、そのつどフィードバックをもらいながら軌道修正を行う開発プロセス

引用:プロトタイピングは、何のため?プロトタイピングを中心とした開発プロセスとは | SELECK

従来型のウォーターフォール型開発ではなく、アジャイル開発のような素早く試作品(=プロトタイプ)を作っては壊して、を繰り返すプロダクト開発(ハード・ソフト含む)に関する用語のことです。ですが、マインドセットにまで拡張された概念でもあります。

(ものすごく雑に言うと、3割くらいの完成度でも一旦共有してみるという感じでしょうか…。数字は適当です。もし正確な定義があったらすいません…。)

ぼくが約10ヶ月ほど従事していたのは、自社プロダクトであるプロトタイピングツールの販促でした。

具体的には、広告運用や利用事例のインタビューコンテンツの作成と拡散、プロトタイピング全般に関わるコンテンツの執筆・編集など。

常に、プロトタイピングに向き合う日々であり、自分自身もプロトタイピングを実践しないとやっていけない日々でした。その中で、プロトタイピングが身に付いたのでは?と体感しています。

コンテンツ制作を例にすると

  • 一旦骨組みを作り、それぞれの見出しに内容を肉付けして、とりあえず最後まで書ききってみる。その時点でとりあえず進捗共有しつつ、時間を置いて改めて見返して、修正していく。
  • なんとなく気になる記事ネタに対して、一瞬考えた上でとりあえず調べて記事の体裁に内容を当てはめてみる。進めながら精度が低そうであれば、早い段階で方向性を変えるorテーマを変える。
  • 記事を頭から書き始めて、気の利いた書き出しが思いつかないときは、とりあえずキーワードを書き残して書けるところから書いてみる。後で戻ってから考える。

というように、とりあえず進めることを大事にするようになりました。最初から完璧は作れないという前提を持っているので、じっくり練っても仕方ないと割り切っていますし、小さなサイクルを繰り返す方がトータルで早いと思っているからです。

プロトタイピングを実践している、というのがなんだかかっこいいという究極のミーハーであると同時に、合理的に考えて質とスピードが圧倒的に向上できるという信念が身に付きました。

ちなみに先日、少し話題になっていたSlideshareのスライドで、「シリコンバレーの『何が』凄いのか」というのがありました。

話の方向性としては、“シリコンバレーのイノベーションには方法論があった”となり、デザイン思考やアジャイル開発、それらを統合したリーンスタートアップが鍵である、と導き出されていたんです。それぞれのキーワードについてここで説明しませんが、少なくともプロトタイピングが共通軸にあることは間違いないと考えています。

(3) なぜビジネスにデザインが必要なのかが理解できた。

上記2つはわりと実践に落とし込めている話ですが、3つ目に関してはまだ理解したというレベル感にすぎません。が、最近になって腑に落ちたことだったので3つ目に挙げてみました。

インターンしている会社でも、なぜビジネス・経営にデザインが必要なのかという話を繰り返ししているし、本や記事もたくさん出ています。デザイン思考という言葉もかなりもてはやされています。

しかし、正直にはごく最近までそれらの重要性を理解しきれていませんでした。

もちろん、デザイナー的に考えるデザイン思考が、根本的なマインドセットであるという文脈での理解はできていましたが、それがどのように実践に活かされるのか、というところまでつながっていなかっておらず、説明できるレベルではなかったのです。

なので問いとしては、「どうしてデザイン思考を身につけることがビジネスにとっていいのか」ということで止まっていました。

インプットを重ねる中で導き出した仮説は、「成果を出し続けるため」でした。一見、めちゃくちゃシンプルです。

ただ、成果という言葉がふんわりしているので、自分なりに分解してみると、「①成果までのプロセス」と「②成果のために必要な要素」に分かれるのではないかと考えています。

より解像度を上げると、「①’再現性の創出」「②’クオリティ・スピードの担保」だと言えるのではないでしょうか。

自分の中の解釈ではこんな感じになってます

再現性をデザインするために、成果を出すまでの道のりを組織として整備する必要があります。このように考えたら成果が出るよね、という共通認識が、巷で言うところの“デザインプロセス”なのだと考えています。また、デザインプロセスはアウトプットのクオリティを高め、スピードを早める具体的行動とマインドセットを包括していることが理想です。

つまり、デザインプロセスを作るためにはデザイン思考が大事だし、それを組織になじませるためには、その組織のメンバーがみんなデザイン思考を備えている必要があります。

ビジネスとして成果を出すための共通認識がデザインプロセスであり、それを武器にするためにはデザイン思考が大事。だから、デザインに理解の深い組織にする必要がある、というのが今の段階でのぼくの結論です。

先日、スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1というイベントにご縁があって参加したのですが、CDOが必要とされる理由とは、組織のデザイン力をつけることにあると解釈できました。

デザインに関心のある非デザイナーへ

色々書いてみましたが、結構ハイコンテクストになってしまい、1番届いてほしいデザイナーではない方々には伝わらない形になってしまったという恐れを感じました。

そこで、デザインに関心はあるけれどなぜ必要なのかがまだ見えていない、という方に向けて、「この前提を持つことって結構大事なんじゃないか?」と信じていることについて、3つ紹介できればと思います。

絵を描くスキルとデザインの理解には、関連性はない

人や動物、風景を描くという意味でのデザインと、非デザイナーに求められているデザインは別物であるという前提を持つことが大事な気がしています。

極論ですが、デザインの理解が進みにくい理由は、“デザイン”という言葉が多重な意味を持ちすぎていることにあるのでは?と思っているんです。

「グラフィックデザイン」「組織デザイン」「デザイン思考」「デザインスプリント」など、“デザイン”という言葉が指す意味の範囲がちょっとずつ違うのに、同じ言葉で語られている気持ち悪さが諸悪の根源ではないかと…。

冒頭で述べたように、英語だと装飾的デザインをDesign、設計的デザインをDESIGNと分けて表記することがあるそうですが、そういった棲み分けが必要なのではないでしょうか?

少しずれましたが、要は絵を描くスキルのことは気にしなくていいと思います。ぼくも中学校の時は、良くない意味での画伯と呼ばれてたことがありました…(笑)。

あらゆる言葉は、わりと近いことを言っている説

これは自分の理解度の未熟さゆえの説であることを、先にことわっておきます。

が、デザインの文脈で語られる多くは、わりと同じことを言っている、と思っています。

「デザイン思考」「カスタマージャーニーマップ」「デザインスプリント」「人間中心主義」「UXデザイン」「フィードバック」・・・。

色々ありますが、超々ざっくりくくると、「届ける相手に価値を感じてもらうこと」なのではないでしょうか?

デザインが関わるときは問題解決が関わり、問題解決が関わるときにはその問題を感じている人がいて、その問題解決へのアプローチがデザインなのだと思っています。

それに対し、届けたい人とその問題を設計しきらず、表現に重きを置くのがアートであって、ビジュアルで伝えるという手法は似ていても、根本が違います。

なので、「デザイン」という言葉に対して、身構える必要はないと信じています。

とはいえ、奥深すぎる

身構える必要はない、というメッセージと矛盾するかもしれませんが、そう簡単に理解しきれるものではないとも思っています。

正確には、デザインを体現するのが一番大変。

仮に「デザインスキルを身につけよう!」と考えたとすると、美術大学で学べばいいのでは?と考えそうですよね。表現するという行為は遠くないので繋がらなくはないと思いますが、おそらくそれだけだと不十分で。

ユーザーのことを考えるのであれば、人間の深層心理についての理解を深めないといけないし、ビジネス的結果にもコミットするのであれば、ビジネスモデルについても知っておかないといけません。また、専門知識が必要なプロダクトの場合は、その領域の知識(例えば、金融、旅行、不動産など)が必要だし、地球上のどこかの国でサービス提供するのであれば、その国の法律についての理解も必須です。

そのように考えると、「届ける相手に価値を感じてもらうこと」のみの理解では到底及びません。デザインの拡張性に関しては僕自身も全く太刀打ちできまないですし、実際に当事者にならない限り広げていけない領域なのかもしれません。

だから、デザインのベースとなる概念は理解しつつ、その奥深さが存在することも念頭に入れておく必要があるんだろうなと。

さいごに

ここまで来るのに1年もかけてしまったことに対して、少しだけ後悔しているし、時間をかけないとわからないことでもあったのでは?とも感じています。

同時に、前述したとおり全くデザインについて学んだことを成果に結び付けられていないので、まだまだすぎて笑えます。

でも、1年前の直感は間違っていなかったし、悪い方向には進んでいないと思うので、あとは行動に移して成果に結びつけるしかない。

そして、自分(たち)の成果によってデザインの力を証明できたらとても嬉しいし、お世話になりまくっているインターン先の会社に胸を張れるんじゃないかなと思ったりしています。

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Toshiya Isobe

94年生まれ / 好き → アジア・デザイン・編集・本/最近はnoteで書きます https://note.mu/isobe1048