「あなたのチームは、機能してますか?」から学ぶ愚かな意志決定の理由

Isoparametric
5 min readOct 22, 2018

--

「人」「物」「金」が揃っている会社がなぜ上手くいかないのか?

なぜ、どの企業の経営陣も愚かな決定をするのか?

それらの疑問に答えを与えてくれる本が「あなたのチームは、機能していますか?」だ。

この本に書かれたことは実話ではなく、寓話である。
しかし、何年も経営会議や経営合宿などに参加してきた身からすると、本質を捉えたストーリーになっていると言い切っても良い。

内容は「チーム作り」「チームを機能させること」にフォーカスしており、ビジネスをどう成功させるかは描かれていない。

なぜなら、ここで描かれる会社は既に競争力のある製品や、潤滑な資金、優秀な人材を持っており、ただ単に経営陣がチームとして機能していないというだけだからだ。

ただ、ビジネス的に欠けているものがある状況ではチーム作りを正しく描けないため、あえてチーム作りを描ききったのは正解だろう。

この会社の当初経営陣はお互いを信頼しておらず、まったくうまくいっていない。

多くの人が「経営陣がバカだから会社がうまくいかない、現場が苦労する」と感じたことがあるのではないだろうか?
「自分が社長だったらもっとうまく経営するのになあ」と思ったことさえある筈だ。

そう感じるとき、多くの企業ではこの本と同じようなことが起きている。
例えば、経営会議、役員会議、これらの場では様々な提案がなされる。
そのようなクローズドな場で、どのように企業としての意志決定がなされているか?

多くの人は優秀な役員達が意見を交わし合い、会社や社員にとって最善の意志決定をしようと議論を重ねていることを期待するだろう。

しかし、信頼のない経営チームではこれは成り立たない。
ある提案に対しあなたが素直に「正しい」と感じた反対意見や指摘事項を言えば、それは即ち他人や他の部署への攻撃に他ならないからだ。

意志決定の場で信頼のおけていない相手に「その提案はここがおかしいのじゃないですか?」と指摘することは、単なる宣戦布告でしかない。

大勢の人間がいるところで突然あなたに瑕疵を指摘された人物は「恥をかかされた」と感じるかもしれない。

そうなれば、次にあなたが提案をするときには、その相手から重箱の隅をつつくように攻撃されることは確実だ。

そんな摩擦を誰が望むだろうか?

このように衝突に対する恐怖が生まれると、人は正しく議論できない。

また、どうしても通したいような提案の場合は根回しをすることになる。

既に個別に説得を済ませており、議論もなく御前会議として行われる経営会議。

次に自分がスムーズに提案を通すためだけの容認と沈黙。

これが愚かな決定の正体である。

また、チームに信頼がおけていない相手がいる場合、いついかなる場合でも「弱み」を見せることが極端に難しくなる。

「弱み」を見せたとき、それを攻撃されるかもしれない。
そう恐れる人たちは大丈夫ではなくても「大丈夫です、順調です」と繰り返し、死ぬ寸前まで虚勢をはる。

それが、あなたの部署や、あなたのプロジェクトの危機的状況だとしても。

そして、多くのプロジェクトは死ぬべくして死んでいく。

なぜ死の淵に貧しているプロジェクトをうまくいくように皆が協力しないのだろうか?

答えは「信頼していないから」に他ならない。
むしろ、他のプロジェクトや他の部署の失敗を願っているケースすらある。
誰かが失敗するということは、相対的に評価されるチャンスだからだ。

本来であれば、経営会議や役員会議で提議され承認された事項は全員が責任感を持って取り組まなければならない。

承認した以上、それは全員が責任を引き受けたことに他ならない。
それが、オープンな場で議論を交わす意味だからだ。

しかし、信頼がおけてない状況では承認はすなわち単なる容認に他ならない。
「今回、私は反対しませんでしたから、次私が提案したときも反対しないでください」という思いで表面的に同意している人ばかりになる。

表面的に同意しているだけのチームは助け合うことはない。
それどころか、発言権を強めるためだけに「あいつ、絶対失敗するよ」とか「ほら俺が言った通りになっただろ」という批評家にすらなりかねない。

本当に信頼し合い結束が固いチームでは、アイディアをめぐって遠慮無く衝突できる。
決定や行動計画を全員の責任として捉えチーム全体の結果を達成することを重視できる。

この本はそのことを再認識させてくれる。

もし、あなたのチームに信頼できないメンバーがいて、それが全員に悪影響を与えているのであれば排除しなければならない。

多くの人間の失敗を願い、単にフリーライドを望む人間がいるならば追放しなければならない。

そうした英断が必要であることを教えてくれる。

私は社内政治が嫌いではあるし、まともな経営者、経営メンバーであればそう考えるはずだ。

それでも完全に根絶はできない。
人間は弱い生き物だからだ。
しかし、この本の教えは勇気を与えてくれるだろう。

経営メンバーがお互いを信頼すればみんなもっと幸せになれる。

--

--