カヤとクリスチャンの「対話」
昨日届いたCD。カヤ・ダンチョフスカ(ヴァイオリン)とクリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)による『フランク:ヴァイオリン・ソナタ』。録音:1980年7月、ミュンヘン。

ずっと前、学生時代に図書館の視聴覚室で、レコードを試聴した覚えがある。楽曲や演奏よりも(デュ・プレとダニエル・バレンボイムのハイドン同様に)ジャケット写真の方が印象に残っている。当時の私は、まあ「その程度」だった。
その後『フランクのソナタ』は、私に短編小説を書かせるほどのインスピレーションをもたらしたが、書き進めている際に聞いていたのは、グリュミオーvnとシェベックpfの盤で、私は今でもこのコンビの録音が一番好きだが、ひょっとしたら、カヤとクリスチャンのセピア色したポートレートが、着想の源として潜在意識に流れていたのかもしれない。
さて、レコードではB面の、シマノフスキ『神話』は、先日熊本県立劇場で催された、樫本大進のリサイタルで再会した。
いま思いかえしても、それは凄まじい演奏で、なまで聴いた樫本の意外な烈しさに比べれば、カヤたちのディスクに収録された演奏はかなり穏やかに聞こえる。けれどもそれは生演奏と録音物の、さらには1980年と2017年の時代の差であるから単純に優劣はつけられない。それよりもカヤとクリスチャンのデュオは、「神話」という題の持つアンニュイと、官能を表すのに工夫した跡がみえる。難所の細部が滲んだり霞んだりするのも、幻想的な雰囲気をかもし出す効果であるように感ぜられる。
さわりを聴いてみようか。
アルバムにはシマノフスキの作品があと2曲収められている。歌劇《ロージェ王》から「ロクサーナの歌」と、ポーランド民謡の旋律による「クルピエ地方の歌」である。
カヤとクリスチャンはともにポーランドの出身である。ショパンと並び称される祖国の作曲家、シマノフスキの作品を奏でるのに、特別な思いがあっただろうことは想像に難くない。そしてそのことが、青春期のポートレートと呼びたくなる一枚に独特の陰影を与えているのだと思う。鰯(Sardine)2017/07/24
