起きられない朝に奇面組の名前を思い出す

その日はどうしても早く起きてやりたいことがあったので、ベッドの中でいつまでもぐずぐずしているわけにはいかなかった。

とにかくなるべく早く頭の中を覚醒させなければならない。

でも冬の朝のぬくぬくとした布団は、まるで電柱の下の段ボールに置き去りにされた子犬のように、ぼくの心を捉えて離そうとしなかった。

そのとき、なぜかひらめいたのだ。

『ハイスクール!奇面組』に出てくる名物集団のメンバー名を思い出して、5人全員思い出せたら、そのときは覚悟を決めてベッドから起き上がろうと。

『ハイスクール!奇面組』は昔から大好きで、そうとう読みこんだ漫画だ。

ジャンルとしては、学園ラブコメディになるのかな? 「一応高校」という高校を舞台にして、主人公の一堂零(いちどう れい)が率いる5人組・通称「奇面組」がドタバタを繰り広げる。

奇面組以外にも、学園には個性的な5人組の名物集団がいくつかあって、代わる代わる登場する彼らと奇面組のやりとりに、思わず吹き出した回数は数知れない……。


さて、ゲームを開催するにあたり、まず主人公の「奇面組」は除外した。

一堂零、冷越豪(れいえつ ごう)、出瀬清(しゅっせ きよし)、大間仁(だいま じん)、物星大(ものほし だい)。ほら、いまも何も見ないですらすら書けます。これでは目を覚ますのに意味がない。

ということで、「ただし、奇面組を除く」とルールを改定したうえで、覚醒ゲームをスタートすることにした。


まずはイケメン集団「色男組」から行こうか。リーダーは切出翔(きれいで しょう)。わりとストレートな命名。それから頼金鳥雄(たのきん とりお)というのもいたな。これはすでになんのことかわからない人も多そう。あとは、なんかダンディーなリーゼントと五分刈りっぽい短髪と、パーマネントがいたな。鏡……鏡ウツル? いや、そんな名前はいなかったな。そういえば「男は度胸」みたいな名前がいなかったっけ? うーん、ギブアップ。

「色男組」は漫画の初期から最終巻までずっと登場しているキャラなのに、初めからこれでは先が思いやられます。

次は脳みそ筋肉集団「腕組」だ。リーダーは雲童塊(うんどう かい)。一堂零とは体育大会などでいつも張りあっていたので、すぐに思い出せる。あとは筋力(すじ ちから)というのがいたな。確か頬骨が出てる感じの。あと今條豊(こんじょう ゆたか)。それと、亜切須腱(あきれす けん)。彼はジャンパーのお姉さんがいて、終盤に突然登場したんだよな。さあ、あとひとりだ。あとひとり、誰だっけ? あれ? 顔も思い出せない。ダメだー。

惜しかった。もうひとりが印田灰進(いんたはい すすむ)だとわかったのは、のちの話。そうだよ、インターハイだよ。

次は不良集団「番組」に挑戦。リーダーは似蛭田妖(にひるだ よう)。筋のとおった不良で格好いいんだ。米利堅作(めりけん さく)という名前でメリケンサックを知ったんだっけな。中須藤臣也(なかすどう おみや)は抜群のネームセンス。あと田打肥(たぶち こえる)という巨体で無口の男がいました。さあ、またもやあとひとり。もうひとりはあのサングラスのキャラだよ。まずい、思い出せないか? 男は度胸? 違うな。あーなんだっけ。あー。

実はこの時点でほとんど覚醒しているのだが、ゲームは続きます。

じゃあさ、女性キャラにしてみよう。女性名物集団といえば、スケバン集団「御女組」。リーダーの天野邪子(あまの じゃこ)は実はいいとこのお嬢さんなんだよな。左真紀(ひだり まき)はいっつも口が開いていて、作中によく出てくる作者の似顔絵に似てるんだよな。三段腹幾重(さんだんばら いくえ)は頼れる姐さんで、そういやニッチェの江上に似ている。あとはふたり。トサカみたいな頭のキャラと、黒髪ストレートのキャラなんだけど、うーん、これは案外5人全員思い出すのは難しいぞ……。

実はこの時点で、コミック最終巻まで通しで出てくるような、主要な名物集団を使い切っている。

そうだ、人気がなくて『3年奇面組』だけの登場に終わったガリ勉集団「骨組」がいたぞ。リーダーは骨岸無造(ほねきし むぞう)。早稲田慶応(わせだ けいお)というのもいたな。胸板段(むないた だん)は名前の由来が今でもわからない。来津輝(くるつ てる)は頭が良すぎてネジが飛んでるキャラでした。さぁ、あとひとり。えーと、確か仲本工事に似た顔つきのキャラだと思うんだけど、なんだったっけなー。えーと、あー。……。

その後も、マイナーな生徒会集団「取組」、ミュージシャン集団「ルッ組」、応援団「仕組」などを思い出してみるが、どれも2、3人しか名前がわからなかった。


もうダメだ、あきらめて普通に起きよう、と思ったその時、もうひとつ覚えている名物集団がいたことに気づいた。

その集団は、奇面組が空手部に体験入部した時に、ひょんなことから対決することになった「憎組」だ。

リーダーは怒裸権榎道(どらごん えのみち)。そう、確か彼ら憎組と奇面組は、五重の塔みたいな道場で戦ったんだった。その対戦をひとつひとつ丁寧に思い出していけば、きっと5人全員思い出せるはず。

五重の塔1階で大くんと戦ったのは、坊主頭の少林司(しょう りんじ)。確か虫が苦手で大くんに破れたんだっけ。

2階で奇面組を待ち受けていたのは、龍野忍志也(りゅうの にんじや)。いまさらこんなことを言うのもなんですが、漢字までは思い出してないですよ。名前の音を思い出せればオーケー。

3階で対戦したのは爺面七重吾(じいめん ななじゅうご)。最近のひとには名前の由来が何のこっちゃわからないかもしれないけど、ぼくの生まれたころにやっていたドラマの名前なんです。

ほら、4人まで思い出したよ!

最後のひとりは簡単だ。それ、若気市猿(じゃきいち えん)。やった! 4階で豪くんと死闘を演じたのをよく覚えていたのが良かった。

5人全員コンプリート!!!

ありがとう、憎組! 君たちが『ハイスクール!奇面組』に登場していなかったら、ぼくはきっとこの朝こんなに爽快な気分で目覚めることはできなかったです。


このどうでもいいストーリーの要点は、とにかくモデルがいるキャラは強いってことです。

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