自治体職員のメンタルヘルスと首長の本音

石井淳平
Aug 17, 2018 · 6 min read

ある地方自治体の議会で職員のメンタルヘルスについての質疑がありました。なかなか衝撃的な答弁が続きます。けれど、世間一般の60歳から70歳の役員の方々の本音は以下の答弁とそれほど違わないのではないかと思わせる内容です。


質問(議員)

先般、1人の方、職員の方が退職という話も聞いていますけれども、町長、どうなんですか、庁内の中に悪い気があるのかどうかわかりませんけれども、やっぱりコミュニティ能力といいますか、こういうのを職員にもうちょっと養わないと、こういう傾向が出てくるんではないかなと思うんです。(中略)どうです、その辺何か改革する用意はありますか。

役所の職員がメンタルヘルスを病んで退職するケースが増加しているとの認識のもと、町の対策について質問しています。

答弁(副町長)

正直、実際に昔、我々が入ったときには、上司がいて、同じ年代の人たちが課が違っているということで、上司との関係、縦との関係と横との関係でつながっていたわけでございますが、なかなか仕事もそれぞれパソコンが入ってくると、一人ひとりの仕事みたいなことになっておりまして、上司、部下という接点が、仕事で教えてもらうというよりも、個人的なというか、アドバイスはもらえるけれども、その仕事はあなたのこれよ、私のこれよみたいな感じにはなっているなという気はしております。(中略)

副町長さんの答弁は、職員のおかれた状況や過去の働き方との比較についてのべていますが、なかなか適切です。

業務の縦割り化が個人レベルまで進行している点を指摘していることは重要です。コンピューターの導入によってこうした状況が加速したとの認識も説得力があります。

答弁続き(副町長)

やはり課長初め縦のつながりよりも、やはり横のつながりを大事にして、上司がいないときは上司の悪口で一杯やるようなくらいの、横のつながりがあればいいのかなというふうに一番思っております。

「横のつながりを大事に」という点を指摘していますが、具体的な対策として「上司の悪口で一杯やる」という「飲みニケーション」に帰結してしまっています。少し残念です。

質問(議員)

受付係のほうに上司との関係を質問したら、今の若い人方は、何であんたと一杯やらなきゃ駄目なんだと言われたと、大変課長が嘆いていました。今、聞くと、まさにそのとおり上下の関係がうまくいっていない。たまに1カ月1回くらい、その課ごとに課長を中心に一杯やるというくらいのコミュニケーションをとるべきだと思うんです。(中略)

議員さんも飲みニケーション肯定派のようです。せっかく議会で職員の労働環境やメンタルヘルスの問題を提起したのに、これはもったいないところです。

質問続き(議員)

今、聞くと随分、心を病んでいる方が多いなというのは、我々も見ていて心配するところです。町長、そういうこれからの対策といいますか、何か考えているのかどうか。

議員さんは職員のメンタルヘルス対策について尋ねています。飲みニケーションで終わらず、組織的な対応を確認する良い質問です。

答弁(町長)

病んでいる職員がいるということで、病んでいるというのは、もう病気だということですから。私は、町の職員というものは、町民の最大のサービス産業であるこの役場が、町民に対してまともなサービスができないような職員はやめていただきたいと、こういうふうに思っております。(中略)

いきなりすごい答弁です。病気の職員は辞めてほしいと公言しています。いわゆる「ブラック企業」と言われる企業の経営者でも公式記録の残る場でここまで思い切った発言はできないでしょう。

答弁続き(町長)

病むというのは、恐らくなれ合いの結末なわけである。周りも隣近所もみんななれ合いだからそんなことになる、というふうに思っています。(中略)

メンタルヘルスが「なれ合いの結末」という新説が披露されました。どうして馴れ合うと病気になるのか理解に苦しむところですが、「甘ったれているから病気になる」ぐらいの精神論として解釈して先に進みます。

答弁続き(町長)

以前から私は考えておったのは、自衛隊に2カ月くらい入れようかなと思ったこともありました。自衛隊に行くと、大体6時くらいからたたき起こされて、表で敬礼をして、それからというふうな訓練も必要だなと思いながら、それよりも民間でどんな人間がそれだけ精魂込めて仕事をしているかを、きっと本人も味わえば、役場の仕事というのはまだまだ軽いなと思うだろう、こういうことで、今、始めたところであります。

先ほどの「馴れ合い」や「甘え」防止の対策が職員の自衛隊入隊経験のようです。自衛隊に入ると「馴れ合い」や「甘え」がなくなるという理屈がよくわかりません。「馴れ合い」や「甘え」があると訓練についていけない、というのはわかりますが、訓練によって「馴れ合い」や「甘え」がなくなるのかどうかはわかりません。

そもそも、「馴れ合い」、「甘え」がメンタルヘルスの原因かどうかが不明なのですから、なかなか思い切ったアイディアです。


仕事は楽かもしれないが、雇われの身は楽じゃない

一連の答弁の中で、副町長さんはある程度職員のおかれている状況がみえているようです。一方、町長さんは意図的なのかどうかはわかりませんが、職員の働き方にはまったく無頓着のようです。

この自治体のメンタルヘルスに関する知識や対策のレベルは残念ながら高くないでしょう。とはいえ、この自治体が特別に悪条件というわけではないはずです。どの自治体でも幹部職員の認識は似たりよったりでしょう。

「自治体職員は楽な仕事だ」と思われがちですが、「使用者の意識」という点では、自治体職員もなかなか厳しい状況にあることがわかります。

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