小規模・中小企業の経営の困りごと(その2)

モノに関するつかみ所のない悩み

小規模・中小企業の経営者の多くの方々が「売上増大どころか維持することが課題となっている」と仰るのをお聞きすると、何故かとてもやる気が出てきたりします。これまで、そういう方の会社には、可能性がまだ多く残っていることを見聞きしてきましたし、あるいは、大きな飛躍の機会が残されているのではないかと思えてくるからです。

経営者が「売上維持こそが課題だ」という時、多くの場合、それは、既存商品による、既存ルートにおける、既存のやり方では・・というように、これまでと同じ状態や条件を前提としていると思いますが、まず一番始めにお薦めしたいことは、今の姿を数値や図表などに詳らかにして、もう一度良く鳥瞰してみることです。

分かっていることの確認から

商品別売上、取引先別売上、そして、それらを組み合わせた取引先別商品別売上などは、既にほとんどの経営者が目を通して、自身でも確認しているよと仰ると思いますが、取引先別商品別を逆さまにした商品別取引先別売上も作って検討みたりするという、既にある情報から、すぐにできる、とても単純な比較の検討方法があります。

私自身がかつて営業職として、ある大手量販店担当仕入部長の合意を取付けた提案の例では、季節モノ商品の店舗業態と通販業態の実売期日の実績差異を比較して、当時では、9月末ごろからの展開が常識であった商品を1ヶ月早く展示、広告することで、例年の単月度の売上を総合でおよそ14%伸ばすことを思い出します。

とてもシンプルな発想ですが、店舗業態より、通販業態の方が同じ季節モノでも実半のピークが早く発生しているのは、通販の方が、店舗より早く季節モノをカタログで紹介し始めることに原因があるのではないかという仮定に、時の仕入担当部長が合意してくれたため、例年よりほぼ1ヶ月早い展開、そして、広告の打ち出しが現実化しました。移動平均売上金額グラフなどはエクセルで簡単に制作できるため、グラフで際だった印象を提示できる場合にはとても効果的であると思います。

また、ある企業では、総合計としての商品別、取引先別売上額は、経営者自身、頭の中に入っていたものの、改めて、商品別地域別(取引先店舗別)売上表というものを制作し直し、グラフで確認してみたところ、エリア毎では売れている商品に大きな開きがあることが分かり、要望に従うだけでなく、取扱い商品種類の幅を広げてもらうように、具体的に提案することが不足していることに気付き、実際に行動することで、例年より売上を一挙に伸張させたという例があります。

コンサルティングでは、事実のデータの掌握が基本とされますが、これらの例や、それに似た例は至る所で見受けられるため、思い込みなのか、事実なのかを再確認するという、いささか面倒ではあるものの、すぐに調べられることから再確認することの大切さをいつも感じています。

創業時の心意気をもう一度

企業は創業時というものを必ず持ちますが、まだ恒常的な売上が確定せず、毎日が新しい人びとと新しい機会の出会いであった頃を思い出してください。創業時においては、何事に依らず、全力で対応しおうとするというのが、多くの企業の姿です。しかし、一度、売上が常態化し始めると、ヒトは途端に現状維持を前提とするように考え始めるものです。

新しいものとの出会いは、それが未知のものである故に、懸命に考え、全力で対応するということがなければ、取れるモノも取れなくなってしまうことは、ご存じの通りです。それはとても疲れるものです。疲れても、我武者羅にそれを追うことができるのは、そこにワクワクする自分の展望が見えているからです。いえ、見える気がするというべきでしょうか。つまり、「展望」「ビジョン」というものがあったから、つらいことをつらいとも感じないというフローの時機であったはずです。

フローとは、チクセントミハイ博士の説明の通り、自身の能力と挑戦の質量がバランスした、一種の無我の境地ということができるでしょう。そのバランスが崩れる時、フローではなくなり、不安や心配がストレスとして感じられ、あるいは、退屈で、何もしたくなくなる状態に至ると考えることができます。

自分の想いや目標を改めて見つめ直し、自分の現状の能力を再確認し、やれること、可能性の高いものから着手し、もう一度、創業時のようなワクワクしながら、疲れを知らぬフローの状態を取り戻す工夫が必要です。

いずれにせよ、今の状態を見つめ直すことから、しようと思えばすぐに分かることの確認からし始めるということが、モノの見直し、ビジョンの再確認に有効で、もっとも簡単な方法となるでしょう。