イケてるしヤバい海外のFintechプロダクト Vol.1 Movenについて

Kabukibanker’s blog
8 min readNov 20, 2016

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ちょいと日が空いてしまいましたが、海外Fintechプロダクト総ざらい!第1回はMovenというサービスについて取り上げます。

目次

  1. Movenについて
  2. どうやってやっているのか
  3. つかい方
  4. こんなことができる
  5. カスタマーからの評価

Movenについて

一言で言うと、「モバイル専用銀行」です。
ですが、その中身は「銀行」というイメージとはおよそかけ離れた、非常に洗練されたものです。

これだとわかりにくいですが、LPのヘッダーは動画になっていて、使用感とかをイメージしやすくなっています。

このindexに思想のすべてが集約されています。要はお金にまつわることをすべて一元化し管理できるツール。
日本で言うと、マネーフォワード×Banking、といったところでしょうか。

FounderのBrett King氏は経営者としてはもちろん、執筆家としても有名です。
Bank3.0など、所謂「生き残るための銀行の戦略・戦術」とかそういうテーマでの書籍を多く出版しています。
なので、その理想を体現している場所とも言えそうです。

(余談ですが、この手の書籍をamazonでみると、まっっっったくと言っていいほど日本語レビューがないことにいつも疑問を覚えます。絶対に今後のリテール金融にとって不可欠な情報を扱っていると思うのですが・・・)

どうやってやっているのか

彼らは独自で銀行システムを立ち上げているわけではなく、FDW Bankというカンザスにある銀行とアライアンスを組んでいるようです。

正直全く知らない銀行というか、HPのショボさなどを見るにUSの地銀という印象です。
しかし、Fintech界隈ではこの銀行は結構有名なようです。Fortuneに記事が載ってました

大変興味深い事例ですね
・この銀行自体は124年の歴史を持つカンザスの銀行だが、リーマンショックで潰れかけ、FDICの管理下に置かれていた
・それをgoogle出身のエンジニア、 Suresh Ramamurthi氏が私財を投じて買収した(どんな私財だよという感じですが・・)
・ Ramamurthi氏はゼロから銀行オペレーションを学び、システムの複雑さが課題と見抜いた。当初はベンダーに直させようとしたが無理だったので、開発専門の別会社を立ち上げて、数十人の組織でシステムを全部作り直した
・それとともに、ビジネスモデルを「自社プラットフォームを用いた他事業者との協業」に転換
・結果として預かり資産がこの7年で700万ドル→2,000万ドルに、非手数料収益が年間200万ドルに
・Movenを始め多くの決済に関連するスタートアップが、同社のサービスを使っている

ビジネスのコアバリューを融資や運用ではなく、システムに置くというのはいかにもex-googlerらしい発想です。
かつ、このニーズはFintechでは絶対に出てきますよね。以下、Movenの代表のAlex Sion氏のコメントが言い得ています。

“Fintech can’t be two kids in a garage who decide to launch a bank,”
“You have to operate in this ecosystem, and you need to find a bank partner.”

要は金融エコシステムの外側で(自社のフルスクラッチなどで)ビジネスを展開することはFintechの場合非常に難しいので、銀行パートナーを探す必要があると。日本でも同じようなことはできそうなもんですけどね。

・・・だいぶ脱線しましたが、つかい方に移ります。

つかい方

PCからサインアップを試みたときの画面。非常にシンプル

Movenは日本からはアカウント作成やDLが基本的にできません。なので以下に書く内容はLPやその他情報をまとめたものです。

立ち上げは以下のように行うようです。

  1. アカウント作成
  2. デバイス選択(web or App)
  3. それぞれに従いDLなど→使用開始

1のプロセスでUSのSocial Security Number(日本で言うマイナンバー)を入力することで個人認証をやっているようです。
余計な身元確認などが要らなくなるのでこの辺は簡便で良いですね。

3のプロセスで口座番号が発行され、入金が可能になるようです。他の銀行から直接送金なども可能なようですが、通常の電信送金を扱っていないようで、どうも日数がかかるみたいです

FAQを見る限り一番スムーズに入金できるのはコンビニ入金のようです。日本ではあまり見かけませんが、Mastercardのデビットカードの仕組みを使って、USのどこでも入金ができます。
「いちいち銀行に行かなくても生活範囲で入金できます」が売りなのかなと。

こんなことができる

基本的には日常の決済等を可視化する、というところに特化しており、他の機能(定期預金とか運用とか)はありません。

・支払い等をすべてMovenカードに紐付けることで、お金の流れを一発で可視化
・External Account(要は外部銀行等のアカウント連携)により、家計を一括で管理可能
・メール等で簡単に送金が可能

おそらく最初はそのへんのデータをひたすら蓄積し、ある程度溜まってきた段階で外部との協業とか、新しいビジネスに踏み出して行くのではないかなと。

カスタマーからの評価

App Storeやgoogle Playに評価が載っているので拾ってみました。

google Playでのアプリレビュー

レビューを細かく見ていくと、やはり決済機能や、家計管理の部分について良いレビューが多いようです。

「他社サービスは時間の無駄」というなんともわかりやすいコメント。

あと、CSの対応の良さも上がってますね。この辺人が対応する部分はきっちりやりきるというのは、昨今のECスタートアップの流れでもあります。

「レスポンスが早くて助かる」と。全レビューに中の人が返信しているのも好印象

Movenについてのまとめ

・決済と家計管理に特化したモバイル銀行
・銀行システム自体や決済の仕組みは他社システムを活用し、コスト低減
・プロダクトのシンプルさとCS対応の良さで好評

Brett King氏の著書をそのまま体現したらこうなりました、という感じの銀行ですね。
またビジネスの取り組み1個1個の事例だけ見ても、日本の銀行でも即試してみる価値のあるアイディアが沢山見受けられました。

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