【書評】『エンジニアのための時間管理術』を読んだ話
3連休ですね。私は美術館に行く、映画を見る、など芸術の秋らしいことをし倒してみました。
怖い絵展面白かったです。
閑話休題。
表題の本を読みました。今回はその読書ログです。
エンジニアの、と書いてますが、内容自体は文系職でも、銀行員でも全然使える内容です。
昨今『働き方改革』なるワードが取り上げられています。ニュースでの文脈はどちらかと言うと
・企業がリードして
・従業員は(半ば強制的に)フォローし
・とりあえず施策導入=成果とみなされる
という、トップダウン・アプローチの色合いが強いですが、この本は言わば『働き方改革をボトムアップ・アプローチで考える』ってところでしょうか。以下3つのポイントから解説します。
Point1:原理原則は簡単。やり切り方にフォーカス
正直、そんな難しいことは書いてません。例えば、冒頭で『タイムマネジメントの原則』ということで6つ紹介されていますが、
・タイムマネジメント情報を1つの「データベース」にまとめる
・能力は重要な作業のために温存しておく
・日課を定め、それらに従う
・習慣やモットーを養う
・「プロジェクトタイム」の間は集中力を保つ
・日常生活の管理にも、仕事で使用するのと同じツールを使用する
これ自体はどこでも見かけるありふれた内容です。
この本が優れているのは、上記を具体的にやりきるための方法まで突っ込んで記載していることです。電子メールの管理や文書化といった内容でまるまる1章割いていたり、はたまたストレスの管理という精神論で片付けられがちな文脈にも触れています。
なので「大事なのはわかっているけどやり方が・・」という方におすすめできる本です。
Point2.性悪説から考える
この本が優れているのは、「いい意味で人間やその能力を信用しない」、言わば性悪説に基づいて書かれていることです。
例えば4章にこのような記述があります。
平均して、人間の短期記憶能力は7個前後(プラスマイナス2まで)です。(中略)筆者の作業リストを開くと、項目が20個ほど並んでいます。(中略)20個の項目を脳が記憶していることなど、とうてい信用できません。
よく仕事の速さの話になると「私は能力が低くて、、、」というところから話が進まなくなることがありますが、この本は人間の能力なんか大したことない!と割り切った上で、じゃあそこからどうするか、が紹介されています。
極めて建設的なアプローチであり、取り組むハードルを下げてくれる重要な考え方と思います。
Point3.具体的すぎて明日から使えるやばいTips
Point1で触れた「やり切り方」が非常に細かく具体的であることも特徴かつ、ここまで詳細に触れた本はなかなか見かけないと思います。
例えば、11章で『会議の進行係へのアドバイス』という表題で、無駄な会議を防ぎ生産性を上げるための9個のTipsが紹介されています。この内容がかなり細かく実践的です。特にヤバいと思ったものを抜粋します。
・常に24時間前に告知メールを送信する
・進捗会議と作業会議のどちらであるかを明確にする
・必要なドキュメントへのURLを盛り込む
・議題の一覧を盛り込む
・5分前に到着しているようにする
私も職場で直面するたびに言ってますが、無駄な会議はだいたいアジェンダが不明確で、何を解決したいのか設定されていません。かつそういう会議に限ってオーナーの準備が適当で、資料の検索に時間がかかる、設営に時間がかかる・・・といった具合で参加者の時間がどんどん浪費されていきます。
そしてちょっとしたことなんですが、上記のポイントが守られている会議は本当にスムーズに終わります。なんなら時間より早く終わります。
と言った感じで、明日から使えるTips揃いなのもありがたいポイントです。
まとめ ~働き方改革はひとりでできるもん~
謎の副題を付けてみました(笑)
冒頭に書いたとおり、この本は主に個人を起点とした生産性の改善方法について書かれた本です。
一方よくありがちな意見として「一人でやったところで誰も協力してくれないし・・・」というのがあります。
違うんです。協力なんかいらないんです。巻き込むんです。
例えば上記の会議の進行で言えば、およそ8割の人はアジェンダが事前に共有されているかどうかは気にしません。なぜなら1個1個の会議のセッティングにまで気を割いている余裕が無いからです。
そういうところから徐々にメソッドを導入していき、結果でみんなを納得させることができれば、1チームで始めた取り組みがやがて会社全体に広がっていく、なんてこともありえます。
参考までに私の会社というか私のチームでは、以下を全ての会議で徹底しています。
・基本30分
・議事録をExcelで共有フォルダの特定の場所に固定(1日分を1シート)
・アジェンダを事前記入し、コメントまで済ませる
もう半年くらいやってますが、他のチームに比べMTGに割く時間は1/2以下で同等かそれ以上の生産性を叩き出しています(詳細は書けないのですが)。アジェンダの事前共有など、真似されるケースも増えてきました。大したことじゃないんですけどね。
トップダウンで降りてくるおじさんの施策にはファクトと結果で対抗する。この本はそういう大事なことを教えてくれていると思います。