銀行はメルペイと積極的に組むべきという話

Kabukibanker’s blog
7 min readDec 4, 2017

--

皆さん、メルペイをご存知ですか?

現時点ではWantedlyの採用ページがあるのみ

まぁ私も知らんのですがw
メルカリが金融関連の新規事業を行うために設立した子会社です。下記のリリースにある通り、代表にはGREEでCFOとして活躍された青柳直樹さんが就任するなど、早くも凄そう感が満載です。

今回はそんなメルペイが手がけていくであろう分野の予想や、私達銀行・銀行員はそんなメルペイと積極的に組んでいくべきです!という話を書きます。半分妄想なので外れたらすいません。

メルペイは何をやろうとしているのか

ぱっとイメージできるのは、アリペイ(中国アリババの決済子会社)が担っているのと同じような、モール内での買い物にも外部の決済にも使える決済手段です。

アリババ経済圏のスキーム

メルカリは今のところクレジットカード・キャリア決済・コンビニ・銀行ATMでの決済が可能です。今日本でできる決済手段は一通り押さえています。
一方で、今のこの決済手段には大きく2つの障壁が存在します。

入金の手間

クレカにせよ何にせよ、外部からお金を入れるか、外部の決済情報を登録する必要があります。クレカがあれば多少は楽ですが、例えばコンビニ決済等であれば手数料がかかります。

出金の手間

出した品が売れてある程度貯まって、外部で何か買い物に使いたいとしても、売上を引き出すには手数料等の制限がかかります。

この負を解決する手段として、1.売上や購入代金をスムーズに出し入れができて、2.外部のお金の流れともシームレスに連携できる ような仕組みがあればユーザーとしては楽です。
かつ、日本国内だけでも5,000万ダウンロードを誇るメルカリであれば、わざわざそういう仕組を作っても十分ビジネスにできそう(コストに見合うような利益貢献が見込めそう)です。

メルペイは銀行預金を食いかねない

ここまで書くと「なんだ単なる決済システムじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、個人的にはメルペイは中長期的には銀行預金を食いかねないポテンシャルを秘めていると思います。

アリペイと銀行の関係。取引その他アリババ経済圏でのトランザクションに銀行やクレジットカードは関与できない

Amazonでも楽天でもヤフオクでもなんでもそうなのですが、これまでの決済システムはクレジットカードや振込など旧来の金融システムに立脚していたため、旧来の銀行やクレジットカード会社が(直接・間接の差はあれど)介在することが不可欠でした。逆に言うと銀行口座やクレジットカードを持っていない層にはハードルが高いものになっています。

下記の記事にもある通り、メルカリの成長ドライブのひとつには『 自分が物品を販売して得た売上金を、メルカリに預けておくことができる』仕組みがあったと考えられます。法的な整理をどうするかはさておき、メルペイもこのベクトルを更に強めていくのではないでしょうか。

つまり、作るのが面倒な銀行口座やクレジットカードを作らなくても、メルペイが外部の経済圏とのつながりを作ってしまえば(あるいはメルカリ経済圏の中で生活に必要なサービスをすべて揃えれば)メルペイで生きていくことすら可能になってしまいます

経済圏を持たない銀行やカードは忘れ去られる

加えて、メルペイには『5,000万人が使う市場とつながっている』という大きすぎるメリットがあります。

今日日銀行やクレジットカードが提供するサービスはどんどんコモディティ化しているので、金融の中に閉じてユーザーにメリットを訴求するのはかなり難易度が高くなっています。
打開策として、新生銀行のようにTポイントと連携して外部の経済圏と連携を図り、『Tポイントユーザーなら新生を使う』という流れを作る動きがあります。外部のネットワーク効果に乗っかっていこうというものですが、メルペイは最初からこのネットワーク効果を持った状態で参入するのです。

わけの分からない書類を書かされ(あるいは二度と使わない口座開設アプリを落とさせられ)、開設完了までに審査などで1週間もかかり、日々の手続きにいちいち手数料がいるサービス。
開設はスマホで一瞬で完了し、自分が普段良く使うサービスと連携していて、手数料も最小限で済むサービス。
どちらが選ばれるかは明らかです。経済圏を持たず不便なサービスはただ忘れ去られるだけなのです。

銀行はいち早くメルペイと連携して5,000万人の経済圏のメリットを享受すべき

では銀行はこの流れをどう捉えるべきなのか。結論、(先行している中国の動きなどを見ても)この流れは止めようがないのと、銀行から同様のサービスを立ち上げる(=5,000万ユーザーを獲得する)ノウハウもスキルもないでしょうから、うまくメルペイと連携してその経済圏のメリットを享受するのが賢いと思われます。

以下は私案です。

1.資金量を減らす代わりにトランザクションフィーで儲ける

前段では強めに書きましたが、そうは言っても日本は現金社会、すぐに給与振込という文化が消えるわけでもないので、しばらくはメルペイからして『既存の銀行口座から預金のシェアを奪いたい』というニーズは強いはずです。
そこを銀行としてはポジティブに捉え、銀行⇔メルペイのユーザ側での手数料をなくす代わりに、B2Bでfeeを設けるなどして収益機会を作ることが考えられます。

2.銀行代理業のスキームを使って、メルペイの残高を取り込んでしまう

メルペイを銀行代理業者にする形で、預金受け入れに当たるような業務を全て受託してしまうという形も考えられます。例えば顧客ID9999999のメルペイアカウントの残高は、同一ID(口座番号)の◎◎銀行メルペイ支店の残高として管理する、等

海外ではホワイトラベルと呼ばれ、フロントとバックエンドを分担することでより銀行業務に参入しやすくするスキームとして下記のような活用事例があります。

前提としてシステムの連携しやすさ(API化など)がマストにはなります。

まとめ

半分以上は先行事例を参考にした妄想ですが、要は「この流れを掴んでおかないとやばい」ということが言いたいのです。

繰り返しですが、ロクな経済圏も持たず手数料も高く、口を開けばいらない商品の押し売りしかされないような口座やカードが顧客から選ばれる時代はとっくの昔に終わっています。
銀行が銀行であることのプライドを捨てて、大きな流れの裏方として生き残っていくことも選択の一つではないでしょうか。

--

--

Kabukibanker’s blog

リテール金融やFintechにまつわる話題や情報を取り上げます。