銀行員はビットフライヤーやコインチェックのアプリのUI/UXデザインを叩き込むべきであるという話

Kabukibanker’s blog
5 min readNov 23, 2017

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2017年もあと1ヶ月ちょっとになってきました。このブログを始めて1年ほどになりますが、思ったより世の中の変化が大きく、それは金融業界においては特にそうだったかなと。

その中でも一番のホットトピックが、ビットコイン・仮想通貨です。
値動きがどうということよりも、そのシステムのあり方、顧客の捉え方、体験等、未来の銀行はこうあるべき、と強く思わされました。

その中から今回は、日本の仮想通貨取引所のトップに立つビットフライヤー、コインチェックのアプリ、および(既存の銀行のプロダクトと比較した場合の)強み、学ぶべき点について紹介します。

学ぶべき強み1:画面設計がシンプルであること

両者のアプリとも徹底的にシンプルである、というのがまず最大の強みかなと思います。

ビットフライヤーアプリのホーム画面

ビットフライヤーのアプリの場合、ホーム画面はだいぶ簡素にできていますがとてもわかりやすいUIと感じられます。総資産のように誰もが確認したがる情報が最上部にある、機能紹介はアイコンでイメージしやすくしている、等細かいところのこだわりが功を奏しています。

コインチェックのコイン選択画面

コインチェックの場合は同様にシンプルなのですが、全体的にポップでいい意味で金融商材らしくないワクワク感があります。マテリアルデザインを多用する、色使いを工夫する、等の成果です。

みずほ銀行バンキングアプリのホーム画面

銀行アプリの場合、多くはそもそもテキスト中心でぱっと頭に入りづらいのと、フォントサイズ等の細かい平仄が取れていないため全体的にガタガタした印象を与えていることがよくあります。そういった細かいUI/UXのこだわりの差異が、使いやすさやその印象に反映されていると考えられます。

学ぶべき強み2:体験1つ1つがスムーズであること

実際触ってみて思いますが、両者とも動作が非常に軽く、読み込みで変に待たされることがありません。細かいですがこの辺の使い勝手はボディーブローのように満足度に響いてきます。

個人的には、コインチェックのアプリの各機能の読み込みの速さが特に優れていると感じました。通信エラー等もほぼ起こらないため、バックエンドのAPI等の構造からしっかり設計されていると感じられます。

ただこの点、既存金融機関はそもそもAPIという概念を近年継ぎ足してやり始めているため、どうしても不利ではあります。

学ぶべき強み3:中途半端な機能の盛り込みや誘導がないこと

両者ともPCやSPブラウザでのサービスに比べ、アプリでは機能を落としています。FX機能やアフィリエイト機能など、明らかにアプリで不要な機能はリンクすらありません。

銀行アプリの場合、大体アプリでできるのは残高照会と振込程度です。あとの機能を(ブラウザの)オンラインバンキングに誘導しているケースが多いのですが、そこからさらにPCサイトに誘導しているケースが有ったりします。それならリンク自体いらなくない?と思います。

みずほのバンキングアプリで投資信託を選択すると、アプリからログアウトの上誘導される画面。どの道SPでできないなら最初から誘導すらないほうがよい、、

無意味なリンクや誘導は、本来顧客に使って欲しい機能を相対的に薄めてしまうので、特に画面の限られるアプリの場合には引き算は鉄則です。ビットフライヤーやコインチェックの場合、それが徹底されているのが素晴らしいと思います。

まとめ

3つの要素に分けて書きましたが、一番大事なのは『限られた可処分時間を奪いに行くかどうか』という根っこの考え方だと思います。

銀行サービスは全体的に「使われるのは前提」で、アプリはそのゲートウェイの1つ、という役割が優先されていると思われます。
仮想通貨のサービスは「使われること」がまずKPIなので、細かい点までこだわることでユーザーが能動的に可処分時間をアプリに費やしてくれるよう工夫しています。

今後、銀行が銀行でしかできないサービス・機能はどんどん限られてくるので、遠くない将来に銀行も可処分時間を奪いに行く側に回ることが想定されます。その日に備え、先行している他社事例を頭に叩き込むことには大きな意義がある、というのが私の意見です。

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