オットー・シャーマー: フィランソロピー 4.0: 革新的変容を可能にする寄付の形態とは?

Kaen SATO
Feb 14, 2024

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2023.12.22 オリジナルはこちら

加速する混乱と社会と環境の崩壊に直面し、フィランソロピー(※注1)はかつてほど効果的ではないかもしれません。社会的分断、戦争、気候危機に直面し、フィランソロピーの主要な演者たちは、ポリクライシス(※注2)の瞬間に、フィランソロピーがどのようにより効果的に対処できるかを問い始めています。フィランソロピーは、新しい形態の超複雑性にどのように対処できるのでしょうか?崩壊に対処ためにするフィランソロピーの役割とは何でしょうか、そして、フィランソロピーは再生と変容をどのようにもたらすことができるのでしょうか。

フィランソロピーの部門では、これらの破壊的な課題に、様々な方法で数多くの実験と技術革新によって対処しています -参加型寄付への信頼ベースの資金の提供から、変革的インフラ建設のための柔軟な複数年間のコア資金援助まで様々です。

これらの革新的な取り組みの根底には、体系的で長期的な影響を創出しようという願いがあります。それは、現存する様式を変革へと導き、コミュニティと地球のウェルビーイングのための持続可能で包括的な変化を促す影響を作り出そうとするものなのです。

※注1フィランソロピーは、基本的に、人々のwell-being(心や体が健やかな状態で人生を送れること。幸福、健康、QOL等々)を改善したり高めることを目的とした、利他的活動や奉仕的活動を指します。また、そうしたことを目的とした組織も含まれます1。フィランソロピーを行う人々はフィランソロピストと呼ばれ、日本語では「篤志家」とも呼ばれてきました。この言葉は、古希: φίλος philos(愛、愛すること)と古希: άνθρωπος ánthrōpos(人類)という言葉から成っており、基本的に「人類を愛すること」という意味があります。フィランソロピーは、個人的な活動だけでなく、法人が組織として、人類のために行う慈善的な活動も含まれます。欧米諸国では、美術、音楽、宗教、人道主義活動や教育活動に財源を供給し、人々のQOLの改善に貢献しています1。簡潔に言えば、フィランソロピーは、愛と奉仕の精神に基づいて、人々の幸福と健康を向上させるための活動です。

※注2ポリクライシス(複数の危機が同時に発生すること:フランスの社会学者エドガール・モランによって造語された言葉で、政治や政策を意味するものではありません。ポリクライシスは、世界的な危機が絡み合い、個々の事象の単純な合算以上の大きな影響を及ぼす状況を指します。例えば、生活費危機、気候危機、資源不足などの相互に関連する危機が同時に発生することがあります。(Bingによる)

「三つのタイプの複雑さ」

プレゼンシング・インスティチュートで行っている仕事において、直面している課題に対する解決策のほとんどはすでに存在していると確信しています。ですが、タイムリーに、かつ大規模にこうした解決策を実行する集合的能力には欠けています。また、フィランソロピーの役割が変わりつつあるとも考えています。伝統的な形態のチャリティ活動において、寄付する側が規定する問題解決方法では、単純な課題には効果的な解決策を提供することができますが、ポリクライシスという新たな複雑性においては、すべてのセクターからの新しいアプローチが必要です。つまり複雑性は(a) フィランソロピーと社会変革者との関係、および (b) フィランソロピー活動を導く意識(アウェアネス)とマインドセット、に対して影響を及ぼすでしょう。

システム思考を身に付けることで、この複雑性は理解しやすくなるでしょう。三つのタイプの複雑性が、私たちの組織やコミュニティが直面する課題に影響を与えています(図1参照)。

図1: 三つの複雑さのタイプ: ダイナミック、ソーシャル、エマージング(出典: シャーマー、C. O. (2019)、Theory U、p. 58)。

「ダイナミックな複雑性」はフィードバックループの遅れに関するものです。つまり、原因と結果は空間的にも時間的にも離れています。例えば、過去数十年間の離れた地域での二酸化炭素排出が地球全体の気候に影響を与えています。このタイプの複雑性を扱うには、全体的システムの方法論(例えば、システムダイナミクス)の使用が関係してきます。

「社会的複雑性」はものの見方と利害関係の違いに関連しています:つまり、さまざまな利害関係者が、状況に対して異なる利害と世界観をもたらすのです。最近の例は、COP 28の利害関係者が共同声明に合意しようとした試みでした。社会的複雑性をうまく処理するには、洗練されたマルチステークホルダーメソッドを使用して、多様な利害とものの見方とを協働的な問題解決に結びつけることが必要です。

「出現する複雑性」は、私たちの惑星、機関、コミュニティが直面している緊急の課題の特徴を定義づけています。すなわち、問題が変化し進化し続けるために解決法がわからない破壊的な課題です。この種の複雑性の範囲の例には、技術(AI)、健康(Covid 19)、戦争、テロ、構造的暴力(例えば、中東)、および気候関連の混乱が含まれます。出現する複雑性を扱うには、個別の視点ではなくシステムの視点が必要です。例えば、コペンハーゲンでの気候交渉の決裂から数年後のパリ協定では、リーダーシップに対する意識(アウェアネス)とシステムアプローチを用いて、それぞれの利害関係者の思考を、エゴシステム視点からエコシステム視点にシフトさせる方法が示されました。このリーダーシップの新しい手法を効果的に行うには、変革的なシステムチェンジのための方法とツールが必要です。

「フィランソロピーの四つのタイプ」

要約すると、今日のフィランソロピー活動は、他のすべてと同様に複雑さが増大しています。次の表は、それぞれの活動が、システムの複雑さのレベルに対応したフィランソロピー活動の四つのタイプを示しています。実際は、具体的な例では、これらのタイプの一つ以上の要素の混合かもしれません。しかし、異なるタイプ(およびその基礎となる論理)を明確にするためには表を見ることが役に立つかもしれません。

「ダイナミックな複雑性」はフィードバックループの遅れに関するものです。つまり、原因と結果は空間的にも時間的にも距離があります。例えば、過去数十年間の離れた地域での二酸化炭素排出が地球全体の気候に影響を与えています。このタイプの複雑性を扱うには、全体的なシステムの方法論(例えば、システムダイナミクス)の使用が関係してきます。

「社会的複雑性」はものの見方と利害関係の違いに関連しています:つまり、さまざまな利害関係者が、状況に対して異なる利害と世界観をもたらすのです。最近の例は、COP 28の利害関係者が共同声明に合意しようとした試みでした。社会的複雑性をうまく処理するには、洗練されたマルチステークホルダーメソッドを使用して、多様な利害とものの見方とを協働的な問題解決に結びつけることが必要です。

「出現する複雑性」は、私たちの惑星、機関、コミュニティが直面している緊急の課題の特徴を定義づけています。すなわち、問題が変化し進化し続けるという理由で、解決法がわからない破壊的な課題です。この種の複雑性の範囲の例には、技術(AI)、健康(Covid 19)、戦争、テロ、構造的暴力(例えば、中東)、および気候関連の混乱が含まれます。出現する複雑性を扱うには、個別の視点ではなくシステムの視点が必要です。例えば、コペンハーゲンでの気候交渉の決裂から数年後のパリ協定では、リーダーシップに対する意識(アウェアネス)とシステムアプローチを用いて、それぞれの利害関係者の思考を、エゴシステム視点からエコシステム視点にシフトさせる方法が示されました。このリーダーシップの新しい手法を効果的に行うには、変革的なシステムチェンジのための方法とツールが必要です。

「フィランソロピーの四つのタイプ」

要約すると、今日のフィランソロピー活動は、他のすべてのものと同様、複雑さが増大しています。次の表は、それぞれの活動が、システムの複雑さのレベルに対応するフィランソロピー活動の四つのタイプを示しています。実際は、具体的な例では、これらのタイプの一つ以上の要素の混合かもしれません。しかし、異なるタイプ(およびその基礎となる論理)を明確にするためには表を見ることが役に立つかもしれません。

フィランソロピー― 文字通りの意味は人間愛 ― は伝統的に善意の個人の寄付の形を取ってきました(フィランソロピー1.0)。課題は決まっていて、寄付者が援助します。コミュニティには図書館が、学校には体育館が、または個人は 食物と避難所が必要です。受容者は、高額寄付者の名をその場所につけたり、少額寄付者の名前を公表したりすることで、感謝を表すかもしれません。これらの寄付による贈り物は直接的なニーズを満たしますが、通常は問題の根本原因を取り除くことはありません。根本原因には、貧困、不平等、雇用機会からの排除、制度的な人種差別、気候の不安定化などが挙げられます。問題を導く構造的問題に対処するには、タイプ別に異なった対応が必要です。

「フィランソロピー2.0」は、測定可能な成果と結果を導き、寄付の効率と影響を高めることを目指しています。財団は戦略的に強調する点(例えば、CO2排出の削減、学級の人数の削減、または医療へのアクセスの改善など)を推進し、それらの分野での寄付の影響を測定する指標システムを開発します。

効果的なフィランソロピー活動が最近の人気を博しているのは、定量化可能な指標を用いることが効率的に有利だということですが、それはまた、慈善活動家(フィランソロピスト)が、問題が何であるか、そして最善の対処法は何かを知っていると仮定しています。このアプローチへの批判層は、強大な権力の不均衡、および短期間でより容易に測定可能な、影響力のある領域に資金を提供するというバイアス(偏り)、そしてそれがフィランソロピー活動を行う意思決定者の説明責任を軽減することになることを指摘しています。例えば、米国のフィランソロピーは年間5000億ドルを提供し、ヨーロッパのフィランソロピーは約600億ドルを提供します。その5600億ドルに対して富の保有者が受ける税制上の優遇に対する社会の見返りはどのくらいでしょうか?その投資は、社会の問題の根本原因に対処して、より良い世界に向かうのに使われていますか、それともその投資(そしてそれを生み出した数兆ドルの金融資産)がただ繰り返されているだけなのでしょうか?

効果的なフィランソロピー活動の特徴は、(しばしば、地球と人々に害を与える過度な搾取による実践によって)お金をどのように稼ぐかと、それを(寄付者が規定した対症療法的な問題解決に)どのように使うかとの間の明確な区別があることですが、そうすると、より深いシステム的根本的問題に目をつぶりがちになり、その結果、不平等と生態系の崩壊を増幅することになるのです。

「フィランソロピー3.0」はより協働的で、実験的で、長期的であり、かなりな程度、寄付受領者の視点を盛り込んでいます。例えば、コミュニティベースの財団であるメインイニシアティブズは、この種の参加型資金援助の革新者です。地元に根差したコミュニティは、自分たちが中心的に寄付する分野を規定するだけでなく、誰が寄付金を受け取るかも決定します。フィランソロピー3.0では、フィランソロピー活動とチェンジメーカーは協働関係にあります。対話がその成功のカギであり、寄付は特定の社会的状況に組み込まれています。資金提供者による協働組織、寄付者助言型基金、およびインパクト投資が、フィランソロピー3.0による寄付のタイプですが、4.0のこれから出現するであろう特徴を持っています。

「フィランソロピー4.0」は、変革的システムチェンジに焦点を当てた新たな形態のフィランソロピーです。その目指すところは、システム全体の視点を取ることで、課題の根本原因に対処することです。4.0のフィランソロピーの目標は、すべての人々に成功と繁栄もたらす変革を求めることです。このような変革 — 例えば、構造的な暴力、制度的な人種差別、または環境破壊を削減することー は、解決策を生み出すためにシステム全体からの建設的なインプットが必要です。こうした分野での進歩と成功を測定することは難しく、こうしたシステム的根本課題は、しばしば長期的な介入を必要とします。フィランソロピー4.0の特徴には、信頼に基づく関係、より大きな複数年間の資金援助、およびパートナーとしてのエコシステム全体からの参加による能力の構築があげられます。同様の特性が、システムの進化や変容の意図や目標がなければ、4.0のフィランソロピーは成立することはないのです。

4.0の寄付に向けていくつかの組織が最初の一歩を踏み出しています。例えば、ランクリー・チェイス基金(Lankelly Chase Foundation)のCEOであるジュリアン・コーナーは、「私たちはスタック(立ち往生)して、自分たちが問題の一部であることに気づいた。」と述べています。そのため、組織自体を解体し、その資産をコミュニティに移動するための「移行経路」を作成しました。これらの資産は、コミュニティが適切と見なすどんな方法でも使用することができます。

もう一つの事例はV.カン・ラズムッセン基金(V. Kann Rasmussen Foundation)です。2020年に、財団の理事会は地球規模の緊急事態に照らして自身の役割を振り返り、こう結論付けました。「この存在の脅威に対応するために、残された時間はどんどん減少している中で、私たちはもっと多くのことをしなければならない。」理事会は「次の15年間でその基金を使いきり、この重要な時期に年間の寄付金を倍にする。」という決定を下しました。

オランダのポストコード・ロタリーは、NGOに無制限の機関的コア資金を提供し、主要な市民社会組織を支援し、その協働的エコシステムの支援をしています。フォード財団のBUILDプログラム(Building Institutions and Networks)は、無制限の長期資金を通じて市民社会組織の能力を強化することを目指す10億ドルのイニシアチブを行っています。これらの例は、ほとんどの国の市民社会組織が攻撃を受けている現状において重要となっています。

アイリーン・フィッシャー基金(Eileen Fisher Foundation)は、アパレル業界を「再生可能なファッションデザイン」に移行するための活動を行っています。アイリーン・フィッシャー社(Eileen Fisher Inc.)も同じ領域で革新をもたらしています。

4.0への移行についての他の例は、最近ブリッジスパングループ(The Bridgespan Group)によって探求、研究されたもので、それは、不平等と戦うための重要なレバレッジポイントとしてフィールド・カタリスト(Field Catalysts)への寄付を認証しました。フィールド・カタリストは、主に自身の組織の成長に関心がある人々やイニシアチブではなく、平等に向けて、パートナーやステークホルダーの属するエコシステム全体を動かすのに役立つことになら何でも行い、提供したいと考えています。

プレゼンシング・インスティチュートの支援によるその他のフィランソロピー活動の介入は、ナミビアの母子保健プロジェクトの向上をもたらしました。この介入は、地元の保健システムというの小さな組織全体をカバーしていました。つまり、政府の保健当局から看護師までを含みます。母親や地元のグループと密接に協力しながら、保健システムは母親とその子供たちのニーズに、より敏感に対応する新たな制度的構造を確立することができました。これらの大きな変化が起きたのは、プロジェクトを支援した寄付提供者が「すべての答えがわからない (not-knowing-all-the-answers) 」アプローチと、あらゆるレベルのシステムからのパートナーの関与を受け入れたためでした。

他のイニシアチブは、プレゼンシング・インスティチュートのUラボ(u-lab)とIDEASプログラムを含む、セクター横断的な変容をもたらすリーダーシップインフラを構築することに焦点を当てています。Uラボは、システムの変化をサポートする、無料のオンラインで多地域対応の、能力構築のプラットフォームで、過去9年間で186カ国から240,000人以上の登録ユーザーをイノベーションの旅に誘ってきました。IDEASは、東南アジアの財団パートナーであるユナイテッド イン ダイバーシティ(United in Diversity)と協働して、ビジネス、政府、市民社会、学問界からのリーダーを、システムの根本的な問題を理解し、それらに対処するためのセクター横断的プロトタイプを協働して行う学習の旅に誘うインフラをサポートしています。

注意すべきなのは、これらのフィランソロピーの努力が最も重要なシステムに影響を与えるのは、数年後(場合によっては数十年後)になって初めて目に見えるものになるということです。これは、フィランソロピー2.0における一般的な2年間の寄付サイクルとは歴然とした対照をなしています。

「フィランソロピー4.0」は、フィランソロピーと寄付受領者との関係を、取引的なものから変革的なものに変えるだけでなく、システム内のすべてのパートナーが変化する環境に適応し、共進化させるためにアウェアネス(意識)と意図共有という新しい形を作り出します。フィランソロピー4.0型の投資は、長期的なシステムの目標によって導かれるものなのです。

「複雑な問題には複雑な解決策が必要」

どのタイプのフィランソロピーが最善でしょうか?それは状況によるでしょう。既知の問題に対する既知の解決策があり、適度なレベルの複雑さである場合、効率的なため、1.0または2.0の運用方法が機能します。しかし、混乱や新たに出現する複雑性、またはその両方によって規定される状況 ― つまり、問題と解決策が進化している状況下では、異なるアプローチが求められます。より洗練された3.0と4.0のフィランソロピーは、この新たな社会変化の状況を反映しています。複雑な課題には複雑な解決策が必要なのです。それらを2.0の寄付で対処することは、最近国連の同僚が言ったように、「ロバの引く荷車で月に行こうとする」ようなものです。

フィランソロピー3.0と4.0は、急速に変化する環境と混乱に対して柔軟に対応するために、寄付受領者に自由を与えるということから、2.0とは異なります。私たちは幸運にもその自由を2020年3月に得たのです。コロナ禍が襲い、世界の大部分がロックダウンに移行したときです。プレゼンシング・インスティチュートでは、コミュニティのための重要な意識作りの場を提供するために、ほんの数日でコアチームを動員したのです。数ヶ月のコースの間に、約15,000人の人々が2週間ごとのオンラインミーティングに定期的に参加しました。ディープリスニング(深い聴き取り)、静寂、アウェアネス(意識)に基づく社会的実践を使用して、混乱を理解し、前進する旅を再創造し、再形成しました。その介入はガイア・ジャーニーGAIA Journey(Global Activation of Intention and Action)と呼ばれ、地域に基づいた多数のイニシアチブを生み出し、地球全体で変化を生み出し続けています。コミュニティのニーズに応えていると信じてプログラムをまとめ、信頼ベースの寄付によって、流れに任せた即興的行動が完全に可能となったのです。

「フィランソロピー行動の位置を上流へと移行する」

4.0レベルでのフィランソロピーをステップアップするには、フィランソロピーの影響の焦点を下流(短期的な指標)から上流(進化し、変容するマインドセットと運用システム)に移行することが必要です。

これらの進化には、私たちが直面している課題の根本原因についての調査が必要です。世界中の夥しい数のチェンジメーカーがこうした調査を続けています。しかし、彼らはしばしば孤立の中で働かなければならず、変革をより意識的に、より集合的にアプローチするための方法とツールを持っていないことはよくあることです。

私たちがこれまでの年月を通じて学んだことは、システム内の変革プロセスの成功は、二つのことが機能するかによっています。一つは、これらのシステムを実行している人々のマインドセットの変化、二つ目は、これらのチェンジメーカーがその旅をナビゲートするのを助けるインフラの支えです。こうしたインフラの支えは、世界中の運動(インドの非植民地化運動、南アフリカの反アパルトヘイト運動から、1960年代のアメリカの公民権運動、1980年代の東欧と中欧の民主化運動まで)を可能にする条件となってきました。行動と変容を目指す変化は、意図によるサポート構造を必要とします。市民社会とセクター横断的イニシアチブは、しばしばこれらの質の高いサポート構造を持っていません。

現在のポリクライシスとシステムの崩壊の波は、それらを生み出したのと同じ考え方では解決することはできません。フィランソロピー4.0は、介入の焦点を下流(結果主導)から上流(新しいマインドセットと運用システムを用いて働くこと)に移行することで、システムの課題に根本から取り組みます。これには以下の要素が含まれます:

・システムの進化を共同形成するために、すべての関係者をまとめる測定可能な組織的インフラ

・個別なものの見方からシステム的ものの見方へと意識を変化させる、すなわち、エゴからエコへの共創的なリーダーシップ能力

・新しい協働的で共創的な能力を支える手法、ツール、空間。

これらの要素は全て、少なくとも種やプロトタイプの形で存在します。ないのは保持環境です。―土壌、肥料、水、光などーこれらが種やプロトタイプを成長させ、つなげ、集合的に実行可能にするのです。フィランソロピー活動の主要な変化の焦点を、下流だけでなく上流にも移行すること、そうしてシステム全体のレベルで行動することで、意図を再調整し、変容のために必要な変化のイニシアチブに、後押しをもたらすことができるでしょう。

サスキア・ヴァン・デン・ドゥール-ジードマン(Saskia van den Dool-Gietman)、ジョン・ヘラー(John Heller)、アントワネット・クラツキー(Antoinette Klatzky)、エマ・ペイン(Emma Paine)、カトリン・カウフナー(Katrin Kaufer)に、フィードバック、そして貴重な意見、また無償で時間を提供してくれたことに、そしてインタビューに応じてくれた人々のネットワークに感謝します。

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