パーソナルスタイリストサービス『Stitch Fix』がいよいよNASDAQ上場へ

本日新しい形態のeコマースを展開するStitch FixがS-1をファイル(日本でいう上場目論見書)しました。2011年に創業してからわずか6年での快挙であり、目論見書の数値を見ても非常に好調な勢いを感じます。

DCMも中国版Stitch Fixに投資していることもあり、このビジネスにはかなり注視しています。まだ日本ではあまり見慣れないモデルであり折角なので、少しS-1を元に当社事業について考察したいと思います。

Stitch Fix

① 事業内容
これまでeコマースといえば、「欲しいモノをインターネットを通して自ら購入する」というのが主流でしたが、当社が提供しているのはパーソナライズした商品を物理的に提案して購入してもらうサービスです。

洋服をeコマースで購入する際の大きなハードルとなるのが、サイズ感やその服が自分に似合うかどうかです。どんなにネットで買いやすくなっても最終的には試着したいというニーズが強く電化製品や生活用品等の型番商品と比べるとファッションのEC率はまだまだ低いのが現状です。

そこで当社はユーザーから最初に85個のデータ(身体データ、好みの型、価格帯等)を集め、提携する700ブランドの中からそのユーザーが好きそうな洋服を5点スタイリングし直接郵送し、その中から試着して気に入ったものをユーザーに購入してもらうというサービスを展開しています。購入したくないものはそのまま送られてきた箱に戻し返却するという、日本でいうロコンドのようなサービスを提供しています。

このサービスの肝となっているのが、ユーザーが気に入る商品を届けられるかどうかの部分です。ユーザーに入力してもらう初期データだけでなく、郵送する箱の中に同封するフィードバック用紙の情報をかけ合わせ、マッチング精度を高めていってます。ユーザーも自分に合うものを送ってもらいたいという想いがあるので、郵送した商品に対し85%という高い確率でのフィードバックを集められているようです。またデータだけでなく、色合いやバランスを考慮するためにも3,400人のスタイリスト(全従業員の6割)を雇用しているようで、ここのやりきり力はさすがだと思います。

S-1より

② ビジネスモデル
サービスとしては面白いけど、これ儲かるの?

返却の可能性が大きくあるというサービスなので通常より送料は2倍かかりますし、スタイリストという人的リソースを抱えているので普通なら儲かりません。

ただ、当社はスタイリング料という名目で事前に$20をユーザーから徴収しています。もし商品を購入すれば商品代金からその$20分を差し引きまますし、もしすべて返却する場合この$20は返金されないというビジネスモデルをとっています。更にユーザーが送られてきた商品5点すべてを購入する場合、商品総計から25%割引しています。1商品の平均価格が$55なので、全部購入すると$200ちょっと。買えない価格ではない気がしますね。

月額料金を徴収するスタイリングサービスより、ユーザーの心理的な参入障壁を低くくしているのがこのサービスの面白さだと感じてます。たとえ$20のスタイリング料が最初かかっても、洋服が何か欲しい ✕ 自分に似合う洋服である というニーズがかけ合わさればユーザーは購入しますし、購入すれば$20は実質無料になります。また、$20損したくないので、アクセサリー等5点の内金額が低いものを購入して損を回避するというユーザーも一定数いるのではと考えられます。

また加えて700ブランドの中に、自社ブランドを混ぜているのも特筆すべき点です。売上の20%がExclusive Brandという自社展開ブランドとのことなので、これも利益率をあげる一つの戦略なのだと読み取れます。

③ 財務諸表

Balance Sheet
キャッシュで$110 Mn!! 日本円で128億円ほどですかね。

S-1より

Income Statement
まずは②でもお伝えしたビジネスモデルのお陰で2015年10月末Qから売上総利益がなんと40%超!ZOZOTOWNの直近Qの売上総利益が33%なので自社ブランド展開、スタイリング料の事前徴収は業績に好影響与えていることがわかります。直近年度の売上が$977 Mn(≒1120億円)。純損失が6,800万円程ありますが、市場からの期待感もあり$3–4 Bn(≒3~4,000億円)規模での上場になると見られています。

S-1より
S-1より

④ 資金調達
PitchBookによる過去の調達状況がこちら。Debt含めて外部調達資金が$42.4Mnとそこまで多く調達せず、成長できている点は本当に素晴らしいです。Series Aから参加している投資家からしてみると$3BnでIPOすると225x以上のリターン。

しかし留意すべき点は、最終的な株主一覧がこちら。CEOのKatrinaが17%弱とかなり希薄化されています。初期の調達がかなり厳しく、経営者にとってかなり難しい条件だったのではと想定されます。

S-1より

以上、S-1の中身をさらっと書いてみました。D2Cコマースやオンデマンド型等eコマース領域に色んなアプローチしている企業がありますが、Stitch Fixは特にファッションカテゴリの課題にフォーカスした成功事例だと思います。データのマッチング精度もしかり、ユーザー満足度、ブランディング、オペレーション力等細かい部分での作り込みを本当にうまくできているなと細かいKPI(例えばリピート率83%等)みてると感じます。

中国の投資先もStitch Fix of Chinaになれるよう、引き続きこの領域は注視していきたいと思います!

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