リスクをBETする話

少し前からアルバイトで来てくれている20代中盤のプランナーH君という人がいて、この会社でやっていくかどうかを迷っているという相談を受けたときにした話。

H君は過去2つのスマホゲームの会社でプランナーを経験していて、自身のゲーマー体験もしっかりあり、知的好奇心旺盛で知らないことに対して貪欲に調べたりするタイプ。地頭もよく、今後Silbirdのプランナーとして活躍してくれる可能性は十分にある期待株。

そんな彼が仕事を続けていくかどうか迷っていると言います。ワークライフバランスを重視していて、24365で運営するWebサービス事業ということは頭では理解しつつも、残業というものがどうしても好きじゃない。24時間サービスのことを考えなくてはならないことが苦痛である。

本題に入る前に、少しSilbirdでの取り組みを書きます。

24時間サービスに向き合うか?

ユーザーの可処分時間を預かるエンタメ事業は、深夜や休日など、一般的に休むはずの時間こそ繁忙期になります。ユーザーは24時間絶え間なくサービスにアクセスし、ゲームをプレイしたりAPIを通じて課金したりします。だから、中の人は24時間体制で常に気を張り続けなければならないか?

深夜や休日に起き得るトラブルを考えてみると、

・サーバートラブル
・新規にスタートしたイベントの設定ミス、バグ

大きく分けてこの2つがあります。

不慮のサーバートラブル

SilbirdのインフラはすべてAmazon Web Serviceのクラウド環境で構築しています。物理的なハードウェア故障が絶対に発生しないわけではありませんが、AWSが誇るSLA99.95%は信頼度が高く、事業をはじめて3年でほとんど発生していませんし、特にここ1年の安定感は相当なレベルです。万が一発生した場合、Slackの#emergencyチャンネルに自動通知され、メンバーのスマホにPUSH通知で届くので、仮に深夜だったとしても誰かが気付けます。サービスは自動的に停止し、アクセス障害(メンテナンス)ページに遷移してユーザーデータの破損が進まないようになっています。

発生してしまったら人間が介入してサーバーをメンテナンスする必要がありますが、年に一度以下の頻度です。

新規にスタートしたイベントなどのバグ

バグは事前に無くすことが当然ですが、ヒューマンエラーは起きてしまいます。万が一発生してしまったら、人力で正しい状態へ修正してリリースすることは避けられませんが、深夜や休日にやることは間違いなく苦しいし大変です。

そういったリスクを回避するため、新規のリリースは平日の営業時間中に設定することを全社で推進しています。ゲームが最も盛り上がる毎月1日の午前0:00やGWなど季節モノのイベントなど、その時間のリリースでなければならないこともありますが、その場合は事前に十分なリスクヘッジを行います。

それでも24時間サービスのことを考える

僕自身の考えとして中の人が傷むような運営は避けるべきというものがありつつも、いつもサービスのことを考えています。常時緊張感をもって気を張っているのではなく、サービス提供者としての矜持のようなものです。これが苦痛かどうかは、広義でのWebプロダクトオーナーという仕事に対する適正に依るものだと思います。

Silbirdでのワークスタイル

前段が長くなりましたが本題に入ります。
Silbirdでは全員が必ず同じスタンスで事業と向き合うべき、という考えはもっていません。メンバーにはそれぞれ家族がいたり、大事なプライベートがあったり、嫌なものは嫌だったりします。絶対に定時であがるメンバーがいてもそれを理由に評価を下げることはありません。

H君はどうしても残業することが難しいとのことなので、オンタイムで出来ることをしっかりやって、定時で帰るスタイルを提案しました。回答は、周りは遅くまでやっている人もいるのに自分だけ早く帰ることは罪悪感があって難しいというものでした。正常な感情だと思います。

H君の中長期的なロードマップは、ゲームプランナーとして経験や知見を積み、いつか自分がプロデュースして大きな挑戦をすること。いつかどこかで苦痛も伴う大変な経験をしなければ大成することはない、というようなことは分かっているものの、今この場所でそういったリスクに踏み出すことが出来ない。

Silbirdでの経験がH君のキャリアプランにプラスかと問われれば絶対YESと言えるけど、大変な経験をすることが夢や目標に直結するのではありません。再起不能にならない程度にリスクをBETし、その過程で成長しながら自分自身で望む未来を手繰り寄せていく必要があります。

成長できる環境でリスクをBETする

失敗をキャリアの中でプラスにすることは可能だし、出来るだけプラスを大きくした方が効率的です。何かがうまくいかなかった時、周囲や会社からのフィードバックをプラスに受け入れられる環境なら成長効率は高いでしょう。Silbirdは「がんばった人が報われる場所であること」を重視していますから、BETする価値がある環境であれるようにがんばっています。

リスクを小さくBETしている間は失敗してもダメージは小さいものの、成功したときのリターンも小さい。大きくBETして経験した失敗は大ダメージとセットで学ぶことに溢れていて、成功したときはそれまでとは違った達成感が得られます。仕事で怒ったり泣いたり出来るほど本気でぶつかる覚悟でリスクをBETして、たくさん失敗して学びながら一緒に大きな成功へ近づいていきたいと思っています。

がんばった人が報われる場所

人によってワークスタイルは違います。深夜休日も超絶遅くまで働きまくる人、スマートに仕事を仕上げてオンオフのメリハリを付ける人。超効率でバリバリ働くひとには「いつもありがとう。体壊さない程度にがんばってね」、事情があったりして定時で帰るひとには「ありがとう!お疲れ様!」と伝えます。

がんばった人が報われないことはとても悲しいことで、そういう環境は世の中にたくさんあるんじゃないかと思っていて。うまくいったことを全員で喜び、うまくいかなかったことを全員で悔しがりたい。

H君はSilbirdでBETするかどうか迷っていますが、大きな目標に向かうためには、今はじめてリスクをBETしてみてもいいんじゃないかな、と思っています。考えなんてコロコロ変わって普通だし、今は残業よりもプライベートが大切だったとしても、来年はそうではないかもしれないし、そのままかもしれません。自分だけ定時で帰る日々に罪悪感を感じることだってオンタイムでの仕事が完璧だと自負があれば薄れていくかもしれないし、いやいややはりここは少し残業してでももっと貢献して経験値を積もう、となるかもしれません。どれもその人の大事な価値観だから、否定も肯定もしません。

仲間への罪悪感との付き合い方

仲間に罪悪感を感じたとき、感じさせた時、いつも湘南爆走族の原沢のエピソードを思い出します。原沢と両思いだった女の子が無言で地元を去ってしまい、電車は既に出発してしまった。原沢は諦めていたのですが、台風で交通マヒしてる中、バイクで電車に追いつこうとメンバーが無謀なことを言い出します。

このシーンが好きで、仲間へ罪悪感を感じた時、感じさせてしまった時、いつもこうありたいと考えています。誰だって常時万全じゃないのだから、助けてもらうときは感謝して、いつか必ず返せばいい。

BETする価値のある環境を維持しつつ、人の深いところに踏み込みすぎないように適正な距離から「リスク取って挑むのもいいもんだよ」と言えるようにしていたいなぁと思うのです。