なぜSnapchatは「カメラの会社」なのか
Snapchatを運営するSnap Inc.の自己紹介はそれが求人広告であれ、上場申請書であれ、すべてこの宣言からはじまります。
Snap Inc. is a camera company.
Snap Inc.は「カメラの会社」だ。
またApp Storeのカテゴリも「Photo & Video」です。
ふつうは「カメラの会社」といえばニコンとかキヤノンを思い浮かべてしまいますし、何も考えなければ「Social Networking」のカテゴリに登録してしまいそうなものです。
なぜSnapchatのような抽象度の高いサービスが、「カメラ」という具象をもって自らを定義するのでしょうか。
カメラはスマホのキーボード
パソコンでは「キーボードでテキストをうつ」というのが情報の入力方法でした。スマホだと「タップやフリックでテキストをうつ」のは手間がかかります。スマホならではの入力方法として可能性があるのは二つで「カメラで写真・動画を撮る」または「マイクに音声を吹き込む」です。
両方とも、スマホになれ親しんだ若者ほどたくさん使うようですが、現時点でより有効性が証明されているのはカメラです。Snap Inc. CEOのEvan Spiegel氏が語るように、若者はカメラでおしゃべりしています。
スマホはすべての人間に
ではそのカメラがのっているスマホとは何か。
聞きかじった話ですが(というか私の話はすべて聞きかじった話ですが)、デバイスやネットワークへのアクセス方法が変わるたびに、利用者数のケタが1つづつ上がるそうです。
メインフレームが数千万人、パソコンが数億人、パソコンでのウェブが数十億人、そして現時点でモバイルデバイスは46億人(うちスマホは21億人)です。世界の人口は73億人ですが、遠からずすべての人間にいきわたることになると思われます。
あらゆるものは情報
今となっては「スマホは先進国でしか流行らない」と思っている人は少数だと思いますが一応いっておくと、発展途上国では巨額の借金をしてでもスマホを買っています。
それどころかアフリカの井戸すらままならない地域ですらスマホが使われていて、私たちのたどってきた歴史からすると順番が違うように感じます。しかしそれは情報に対する軽視です。
ヒト・モノ・カネ、ありとあらゆるものは情報化することができ、それによって流動性・利便性があがります。つまり何より先に手に入れるべきは情報なのです。みんながスマホでそこまで意識の高い行動をとっているかはともかくとして、私たちのDNAには情報への渇望が書き込まれています。
また企業にとっても同じことで、情報がなければ他のものがふんだんにあっても活用することができません。ざっぱくにいえば、情報こそが企業の価値です。
カメラは世界の中心
まとめますと、情報を制するものが世界を制し、情報化するためのデバイスがスマホで、スマホにもっとも適した入力手段がカメラです。つまり「カメラの会社」というのは狭すぎる定義にみえますが、実は「世界の中心にいる」ということを鋭い表現で示しているのです。
最後に上場申請書で「カメラの会社」宣言に続く、素敵だなぁと思わせる文章をご紹介します。
We believe that reinventing the camera represents our greatest opportunity to improve the way that people live and communicate. Our products empower people to express themselves, live in the moment, learn about the world, and have fun together.
「カメラの再発明」というのは、人間の生活やコミュニケーションを改善するまたとないチャンスだ。私たちの製品は、人々が自らを表現し、今を生き、世界について学び、共に楽しむことを可能にする。