個性の発揮と、技術のマスター。

個人プロジェクトの始まり

Katsunori Nishi
3 min readJun 21, 2017

好き嫌いは別にして僕は何度も面接をしてきた。自分と一緒に仕事をしてくれる仲間を探すのだから、嫌だなんて言っていられない。そこですぐにある一つのパターンがあることに気付いた。

新卒の持ってきてくれる作品は、概ね自分の「好きなもの」を上手に表現しようとしているもの。そしてキャリアを重ねるごとに、私はこういうものも企画できるし作れます、成果も上がりました、という「技術」を見せたものが多くなる。ただし、みんなが目指しているのが個性的でありながら技術の高いクリエイターである。

A ボックスが20台前半でB ボックスが20代後半〜30代前半となる。実際、AボックスやBボックスに届かない左下のゾーンで足掻いている人も多い。

デザインの技術は学校でいくら頑張っていたとしても、社会に出てからでないと身につかないものである。大学ではどんなに徹夜をいっぱいして課題を一生懸命こなし、自主制作もバリバリやっていたとしても、社会人が毎日企画やデザインしているのに比べると、おままごとレベルに思える。だから課題制作だけでは足りないと自覚して、学生時代に自分の特徴を最大化しようとしている若手はAボックスにいる。それに対し、社会に出てクライアント課題に答える責任を噛み締め、技術を磨いてきた人は次第にBボックスに移動することになる。

Aボックスにいる20代の人と話をしていると、さてこの個性をどうやって伸ばせば良いんだろうと考えるようになるし、稀に面接時に大学の時の作品まで持ってきてくれる30代の人がいて、大学卒業時は明らかに個性がはっきりしていたのに、次第にBボックスに移動してきている様を見ると少し悲しみを覚える。どちらもしっかりAやBゾーンにいるので、それ自体これまでの努力の成果として評価するのだけれど、僕にはその先に責任があるのかもしれないと思うようになった。

個人プロジェクト

それで始めたのが「個人プロジェクト」だ。グランドデザインに勤める20代は自分の好きなことを我々にプレゼンし、そのことによってみんなの注目を集めることをテーマとし、年間を通じ月に一回進捗状況の共有をみんなに行う。それを行うためにある程度の予算はつける。30代は同じように自分の好きなことを起点とするが、使ったお金よりそのことで収入が上回らることを目標の一つとする。収入が第一目標ではないが、収入とは必要とされていることを示す分かりやすい指標になるからだ。そして40代のメンバーが取り組むプロジェクトは即ち会社のプロジェクトとして取り組んでいる。そのプロジェクトで我々は新規事業を始めるかもしれないというもの。

自分の興味を突き詰めていくと、いろんな技術が必要になる。その個人プロジェクトがうまくいくためにはいろんな技術を自ら学ばなければいけないしいろんな人の力を借りなければいけないこともある。結果うまくいくにしてもいかないにしても、その経験と技術はその人に残り、僕らはそれの始めから終わりまでを共有することになる。その無形なものこそ会社の資産だと思うのだ。

--

--

Katsunori Nishi

Grand Design Tokyo,Shanghai,Hong kong CEO & Creative Director. I walk around Asia every month. 考えを整理したり、深めたり。色々アドバイスをもらえたらありがたいです。www.grand-design-tokyo.jp