ユーザーヒアリングという悪・思考停止

Kazuki Kunimoto
Jun 8 · 4 min read

久々にとても良い本に出会いました。そしてスッキリしました。

“Over Crowded”(邦題『突破するデザイン』)という書籍で特に刺激になったのはソリューションに対するイノベーションは外から内というプロセスを経ることが多いが、意味のイノベーションにおいては絶対的に内から外でないとダメだということ。意味のイノベーションとは人々の生活を一変するような今までの延長線上にはない価値を創り出すこと。

外から内というのはユーザーヒアリングや行動観察などによって気づきを得て、それをソリューションに対してのイノベーションを起こすために活かすということ。例えば、IDEOがスーパーマーケットでの顧客行動を観察し、カートというソリューションをデザインしたという話など。

但し、ソリューションではなく、意味のイノベーションにおいては外から内というプロセスでは何も生まれない。例えばAirbnbなどを考えればわかりやすいですが、ずっとホテルのお客さんの行動観察をしたり、ユーザーヒアリングをしたとしても絶対に新たな意味のイノベーションは生まれない(ソリューションに対するイノベーション、例えばチェックインのオートメーション化や指紋分析によるロック解除などは生まれる)。

そしてこれは何故かと言うと、意味のイノベーションというのは初めは必ず個人から生まれるから。僕の大好きな漫画『リアル』の中に長野充の言葉がありますが、これは恐らくほぼほぼ同義ではないかと思うのが、『エゴ』です。エゴは個人の中にあり、それは集団で保有するものではなく、集団の中で生活を強制されると生まれないものです。この辺に日本で意味のイノベーションが生まれない理由がありそうです。日本人が得意とし、信奉する『カイゼン』はソリューションのイノベーションです。

そしてこの7ヶ月スタートアップをしてきて思ったことは、『ユーザーヒアリング信奉・過信という悪・思考停止』です。あえて強い言葉を使いましたが、ユーザーヒアリングは必要です。でも必要なのはあくまでプロセスの後半です。スタートアップならユーザー体験を10倍高める、意味のイノベーションを起こすべきであり、はっきり言ってソリューションに対するイノベーションだけでは絶対にそれは難しい。

意味のイノベーションは個人のエゴや思いつきでも良いのでそこから始めるべきであり、そこから2名でスパーリングを行い、意味を強固なものにし、それから少しずつその幅や人数を増やし、最終的に行き着くところがユーザーヒアリングです。カイゼンやスモールビジネスにおいてソリューションのイノベーションを起こすのであれば、ユーザーヒアリングから始めるのも良いですが、そこに意味のイノベーションはない。

ユーザーヒアリングはある種マジックワードで、それをしていれば安心します。それは本を読んでインプットすると安心する様に。でも本当に難しいのは自分の中からエゴや現状への不満、新たな社会への希望を見出すことです。そしてこの本にはそこまで書いていませんが、元コンサルとしての思考の中で思うことは、自分の中から生み出すことが理にかなっているのは当然のことです。人は自分で見たものをまずは情報としてインプットしつつ、そこに自分なりの解釈を付けて、知識とします。つまり自分の中から出てくることは情報より遥かにレベルの高い知識が結び合ったものであり、ユーザーの声(情報)を聞いただけでそれを超えるものが出てくるはずはありません。

スタートアップに関わる人たちに会ったり話したりしてもこの部分を話す人が少なかったので、この文章が少しでも走り始めたスタートアップの方達の肩を押せると嬉しく思っています。意味のイノベーションは必ず1人から。まだそれもない中で「ユーザーヒアリングをしろ」という思考停止ワードには惑わされないでください。

僕らも東南アジアで働く人やその人たちと繋がる企業の在り方を意味の段階から考えています。そしてそれは僕の「将来の働き方や企業と個人の関係はこうあるべきだ!」というエゴから始まっています。そして今仲間の力を得て、その解像度が上がっています。でも意味の中心は変わっていません。