Seed Roundでの調達までの7ヶ月を振り返って

Kazuki Kunimoto
18 min readMay 8, 2019

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4000万円のEquityと1000万円のDebtを含め、5000万円の資金調達をさせて頂きました。

ちゃんとした記事はPRTimes(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000037201.html)やTechCrunchさん(https://jp.techcrunch.com/2019/05/09/freecracy-fundraising/)に記載頂いた通りなので、こちらではもう少しカジュアル且つ赤裸々にこれまで創業してから7ヶ月の話を記載したいと思います。

*スクール入学〜起業までの話はこちらにまとめていますので、是非興味のある方はこちらのMediumの記事を見て頂ければと思います:https://medium.com/@kazukikunimoto/%EF%BC%92%E5%BA%A6%E7%9B%AE%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99-6436c633b4ea

ざっくり今までやってきたことを記載すると下記の通りです。

・2017年6月:人工知能を使ったキャリアマッチング・組織調査のスタートアップのベトナム立ち上げを行うも、今後の成長方針を巡って意見が合わず、退社。

・2017年10月:自分で描くサービスを自分で作る力を付ける為に、最高のプログラミング&起業家養成スクールのG’s Academy(https://gsacademy.tokyo/)入学。

・2018年4月:卒業ピッチで準優勝。同じスクールのメンバーとチーム組成。個人で作っていたα版がショボ過ぎてコードを全て書き換えつつ、日本でみんなで開発を行う。

・2018年8月:日本で会社を設立、その後エンジェル投資家3名(内1名は法人)から1,550万円のエンジェル資金を入れて頂く(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000037201.html)。

・2018年9月:ベトナム再移住(トータル7年)。初めてのベトナム人メンバー加入。

・2018年10月:ベトナム法人設立。チームは日本人3名、ベトナム人2名の5名でスタート。

・2018年11月:現地日系大手人材紹介会社と6社と提携。

・2018年12月:正式版リリース(https://jp.techcrunch.com/2018/12/06/freec/

・2019年4月:登録企業数300社、登録ユーザー数約20,000名、従業員数も15名となる(内3名パートタイム)。

ということで、10月のベトナムでの創業から7ヶ月経ちました。何やら上の様に書くと諸々順調の様に見えますが、やはり思った様にはいかないし色々ありました。

もちろん良いことも苦しいことも。

ざっくり色々考えたなーと思うことを書くとこんな感じです。

ビジネス面

  1. 初期ユーザー仮説検証順序
  2. Mobileファーストでの差別化
  3. プラットフォーム事業の進め方

人材面

  1. VVM(Vision / Value / Mission)の社員への伝達不足
  2. 採用プロセスへの不参加からのチームの弛緩

自身の振り返りも兼ねて書いているので、少し長いので気になる番号のところだけ読んでください。100%リアルですw。

【ビジネス面】

1)初期ユーザー仮説検証順序

初期仮説:

現地(ベトナム・東南アジア)の自由な働き方に合わせた自由な働き方のプラットフォームを創る。具体的には個人の興味やスキルに合わせて雇用形態に関係なく、仕事(フルタイム・パートタイム・フリーランス・イベント・ニュース)を配信し、自由に働き、個人の収益を上げながら、最終的には興味やスキルがマッチする人たちと繋がり、コミュニティを形成することを目指しています。

この検証方法として、ある種スタートアップの教科書通りな形で事業を進めています。どういうことかというとまずは全てを総合して進めるのではなく、3段階にステージを分けました。

a)『フルタイムの仕事を軸としたキャリアマッチングにフォーカスし、今までにないユーザー体験を個人ユーザー及び企業にも届ける。』

具体的には、下記が差別化ポイントです。

・独自アルゴリズムにより、興味やスキル、履歴書内の言語解析、freeC内の行動履歴から合致する人のみに求人を届ける

・freeC SHAREという新しい仕事紹介報酬システムを導入(今までは紹介した後の動きは紹介者には見えず、成功したのかどうかの報告や報酬も信頼関係の上に成り立っていたが、それをゲーミフィケーションの要素を入れて、常に今紹介された人の進捗が見れる様にしたシステム)

・前払いではなく、ベトナム初の後払いシステム(無料で求人を出し、気になる求職者からApplyが来た場合のみ課金してチェック)

・Talent PoolやScout、データ分析システムなど今までのベトナムの求職マーケットではなかった企業向けシステムを提供。但しベトナムでは専任担当者がいないので機能を充実させるより、いかに簡単に良い人を見つけられ、採用プロセスを管理できるかが大切。そしてそのデータを資産化し、次の採用に繋げること。

b)『クラウドソーシング(フリーランス)の仕事を既存プラットフォームに織り交ぜて個人ユーザー及び企業双方にとってより価値があり、アクティブに使えるサービスにする。』

ベトナムでは下記のリサーチ(https://qandme.net/ja/report/Side-Job-Trend-in-Vietnam-jp.html)にある通り、過去66%のベトナム人が過去1年以内に副業をしています。実際現地で感じる中で副業が多いなと思う職種は、プログラミング(弊社社員もやっていました)、Webデザイン、イラスト作成(freeCのロゴも友人のフリーランサーに50ドルで作ってもらいました)、記事ライティング(現在フリーランスに頼むことを考え中)、デジタルマーケ(弊社マーケ社員もやってます)、EC販売(僕の以前の会社の社員は過去日本から化粧品やスカルプDを輸入して販売してました)などです。元々、企業や個人がやりたいこと、やるべきことがあり、それをインハウスでやるか外に出すかはあとで考えるべきことであって、インハウスでできることの限界によって決めるべきではないですし、中か外かの判断は常にコスト、時間、クオリティ、ナレッジの蓄積という側面から考えるべきことだと思っています。スタートアップで全てのリソースが足りないからこそそこについてはよく考えます。

freeCではその様に雇用形態ではなく、企業からすれば仕事内容により気軽にフリーランサーに仕事を頼める、フリーランサーからはきちんと仕事をすれば評価が上がり、それがフリーランサーとしてもフルタイムの仕事を考えた時の評価としても使える垣根を超えてメリットがあるものにしたいと考えています。

c)『興味やスキルがマッチする人たちとビジネスで繋がり、コミュニティを形成しながら、自分のスキルを伸ばし仕事をシェアしたり、協業したりできるビジネスプラットフォームになる。』

ベトナムではほぼ全てのことがFacebookで完結します。友達と繋がることはもちろん、気になるコミュニティに入ったり、アフィリエイトの販売をしたり、イベントや仕事を見つけたりすることもできます。先ほどの副業も実は15%がFacebookで見つかったりもしています。ただFacebookは膨大であり全てをそこで行うので、自然と一つ一つの情報は薄くなります。そしてこれはザッカーバーグも言っている通り、Facebookは家族や友人の為のものなので、現在仕事のファンページなどの情報は2〜8%の人にしか発信しても届かないと言われています。そして企業の情報発信は近い将来全て有料課金の広告になります。そうなった時にFacebookでもないベトナムでの利用率が0.7%でしかないLinkedInではなく、新しいビジネスSNSが必要になると考えています。西欧や東アジアのUIUXではなく、東南アジアでこそ生きる形、今はその形を探しています。

但し、今回の資金調達で活動可能な1年、次回の資金調達を考えるとあと9ヶ月で成果を出す必要があります。その中で一つ一つステップとして積み上げていくのが良いのか、一部同時並行的に進めて相乗効果を高めるべきか、そもそも僕たちのプロダクトの完成形を見せるべきではないのか、ここはセオリーや教科書がない、そして限られたリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)の中で判断すべきところで正直ここは毎日考えています。

2)モバイルファーストでの差別化

ネット接続はスマホの普及以来、PCよりスマホで行われています。ベトナムのスマホ普及率も都市部の若者に限って言えばほぼ100%に近い状況であり、特に家でのネットがない且つPCを持ってないことを考慮すると僕らがターゲットとする20代はほとんどが情報へのリンクはスマホで行われます(一部会社のPCを昼休みや終業前、場合によっては就業中にかちゃかちゃやる人もいます)。ほとんどの人がスマホで利用するからスマホベースのデザインとして、開発する。それはそれで良いとして、実は今まで完全に考えが漏れていた部分が、「常時接続できるデバイスならではの新しいユーザー体験とは何だろう」ということです。例えばLineなどのチャットアプリ、FacebookなどのSNS、GrabやUberなどのMobilityツールなどは常に繋がるからこそ価値の出るものであり、PCでの置き換えは無理です。では「仕事探しにおけるモバイルにおけるPCにないユーザー体験とは何か?」ここを突き詰めていくことはモバイルに特化した僕たちにはとても大切です。

例えば、僕たちは仕事を友達に紹介してその友達が企業とマッチすればお金がもらえる仕組み(freeC SHARE)を構築しています。この概念自体は決して新しいものではなく、転職が決まればその人が紹介料を受け取れる仕組みは日本にも、最近ではベトナムでもあります。但し、freeC SHAREが何が違うかというと、全てがデジタル且つリアルタイムにゲームの様な感じで紹介した人がその後の動きを見ることができるということ。そしてマッチ(企業と求職者がシステム上で相思相愛となり、チャットウインドウが開く状態で、その後面接となる)すると通知が届き、お金が振り込まれます。これまではその後どうなったということがわからないことや東南アジアでは企業が転職者を抱き込んで人材紹介企業にお金を払わないことがある為、信用できないということがありました。僕たちはスケールを考えた時にどうしても日本での様な性善説に基づくことは難しく、この様な仕組みを取り入れるとともに仕事探しや紹介を楽しんでできる様にという想いで創りました。

他にもモバイルでしかできない体験やモバイルの利点を活かした新しい仕組みを構築していきたいと考えています。

3)プラットフォーム事業の進め方

・どちらの課題も深掘り、総合的なサイクルを考えること:ユーザーに向きがちだが企業の課題発見

僕たちの様なプラットフォーム事業はどちらに対して先に働きかけるべきかということがよく議題に上がりますが、多分これに答えはないと思っています。リクルーティングの様なBtoBtoCの場合は、結局BtoCに近く、個人ユーザーに対する施策が一番大事だと言われます。ただそれは予備知識程度にしか過ぎず、マーケットの性質、競合、プロダクトの目指す方向性によってやりながら考えるしかないと今は思っています。

僕たちは上記の様にモバイルファーストでの差別化を考えると共に、逆に目立たないtoBの方に最近では注力しています。そして実はtoBに対する一つ一つの施策はtoCの方にもがっちり結びついていて、結局はバラバラに考えることはできないものです。ベトナムや東南アジアでの採用は大きく分けて二つで、人材広告か人材エージェント(ヘッドハンターとも言われますが日本と比べると低級のレベルのリクルーティングでもヘッドハントと言われます)です。人材広告では求人を投稿して登録しているメールアドレスや電話番号に連絡が来ます。人材エージェントではエージェントがメールや電話で連絡し、履歴書を送ってくれます。

ここで重要なのは、企業側はシステムでのやり取りはほとんどないということ。メールと電話がほとんどです。これはUXとして便利で早い一面、採用のプロセスに改善はなく、データも蓄積されず、結果として回数を重ねても同じ金銭的および時間的コストがかかります。これは採用が費用化され、資産化されていないとうことです。さらに採用が改善されないということなので、企業、候補者双方にとって何もメリットがなく、メリットがあるのは人材紹介会社だけになります。

僕たちは東南アジアでまだ誰も挑戦していないであろう、企業も候補者も人材紹介会社に依存せず、自由に仕事を頼めたり、採用できたりするプラットフォームを作ることを目指しているので、固定概念に縛られることなく、企業、候補者双方の課題を深掘り、総合的なサイクルを考えいくべきだと考えています。

【人材面】

1)VVM(Vision / Value / Mission)の社員への伝達不足

実は人材面に関しては、採用も定着もかなりうまくいっていると思っていました。

日本人は創業メンバー以外にも、2名(正社員・インターン各1名)ジョインしてくれていて、かなり偶然に近いのですが非常に満足しています。

インターンメンバーに関しては、僕らのPR記事をTwitterでシェアしてくれていたのを知って、メールをやり取りするようになり、ある日「インターンさせてください」とご連絡を頂き、とても優秀な大学生だったので採用させていただくことになりました。また正社員メンバーに関しては、テト休暇に視察で訪れたタイで歩いているとたまたまベトナムの知り合いに会い、「じゃあ夜飲もうよ〜」となって、そこで「知り合いがエンジニアで就職先ベトナムで探してるんだけど〜」と言われ、「おぉ、是非」となって、その1週間後には彼にお会いして口説いてうちに来てもらうことになりました。(*後々、実は紹介してくれた女性とそのエンジニアの彼が付き合っていることを知る。今はホーチミンで幸せそうに暮らしていますw。)

と、ここまでは順調に思えるのですが、色々ありました。そして採用やVVMを伝えることを妥協しちゃいけないことを理解しました。

去年12月〜今年2月の間は僕自身が資金調達の為、日本に2週間、ベトナムに2週間という形で仕事をしていました。

僕自身は投資家の方々とお会いしながらビジネスモデルとして足りないところをメンバーにフィードバックしたり、エンジニアと議論したりと「案外リモートも生産的かも。大丈夫だな〜」と思っていました。

資金調達も落ち着いた2、3月頃にオフィスに出勤すると少しオフィスがどよーんとしてるのを感じました。個人的にはそういう感覚は鋭いと思っていますが、友達からは鈍いよねって言われるのでどっちかはわかりませんが、事実として社内は何かしら淀んでいました。ベトナムの人は不満や不安があってもすぐには口に出さず、特にベトナム人同士で共有しても外国人には言わないので、積極的に話しかける。そして話しかけるシチュエーションも他のベトナムの人に聞かれないようにするなど配慮が必要です。

そこでもっとも信頼できるメンバー数名に話を聞いてみると、色々な噂がされていてみんな不安になっているということでした。実はメンバーは平均が25歳と若く、スタートアップでの勤務経験もほとんどないメンバーがほとんどでした。つまり、3月から今まで無料で開放していたプラットフォームを課金したら企業ユーザーが減って、これで大丈夫なのか〜という不安を真面目なメンバーは感じており、逆にそうでないメンバーは「できない理由・だめな理由」を探し始め、それをSlackなどでシェアし始めました。そして真面目なメンバーたちがそういったネガティヴな要素に対抗する様に持って来た新たな課金モデル、ビジネスモデルを、あろうことか僕は一蹴しました。怒りとともに。。。その課金モデル、ビジネスモデルはVVMに全く合ってなかった為です。つまり、その責任は全て代表の僕にあったのです。投資家にはピッチしても、社内メンバーへVVMをきちんと伝えることをサボっていました。3名から始まり、急激に社員が増える中で「何となくわかっているだろう」という思いが全てを悪化させました。本当に今思うと彼ら彼女らに申し訳なさすぎるなと反省しています。

そこできちんと社員全員に対して、VVM Tellingを行い、きちんと僕たちのやるべきこと、今後の方向性、予想成長曲線、各ポイントがそれぞれ何をするべきかということを話し、ベトナムのマネージャークラスだけではなく、若手層の意見を吸い上げる為の雰囲気作りと月一回の1 on 1ミーティングを設定しました。そして月曜のWeekly Kick-off Meeting、金曜のWeekly Wrap-up Meetingでは全体の戦略や今後考えていること、新しいアイデアなどをシェアする様にし、1週間に1回は会社負担で社員全員でランチをすることにしました。ちなみに新しく入ったメンバーの中にはこんなに優しそうな僕を「怖いから話しかけられない」と言っていたメンバーがいたので、日本人メンバーの中で誰が一番怖いか聞いてみました。うちのCTOが絶対一番怖がられてるだろうと思ったらダントツで僕だったので、猛省して水着を履くことにしました。嘘です、積極的に新しいメンバーに話しかけることにしました。

2)採用プロセスへの不参加からのチームの弛緩

と、ここでめでたしで終われば良いのですが、まだ経営をサボっていたところからの膿がありました。

さっきの「できない理由・だめな理由」を考えるメンバーが会社にネガティヴなそして弛緩した雰囲気を醸し出していました。

実はこの社員、自分が採用プロセスに一切入ってなかったのです。

日本にいたことや業務量が増え、既存メンバーの負荷になってはいけないとの思いから他のメンバーに採用プロセスを丸投げしました。

日本から帰って来て話したところは「ん〜自分だったら採用しないな。でも仕事も難しくないし、この給与レンジならこれくらいかな」と思ったことを覚えています。

ところがメンバー全員がVVMの元、新しい方向に舵を切り、頑張っていく様になると、その彼女が悪い意味で目立つ様になりました。

直属の日本人上司に「彼女って仕事何してるの?ぶっちゃけどれくらい忙しいの?」と聞いても「わかりません。」ということだったので、もうこれは直接聞くしかないなと思って彼女を含むチームメンバー全員に集まってもらい、日々の仕事とそれに対してどれくらい時間がかかっているのかを聞きました。他のメンバーがさっとホワイトボードに書いていく中で、少し戸惑いながら「ほとんど時間がかからないだろうな、この仕事」と思ってしまうことを書いていたので、詳しく聞くと答えが二転三転していて、今の仕事に対して全くバリューを発揮できていないので、その当時一番人手が足りていなかった電話営業に配置転換をお願いしたところ、「できない理由・だめな理由」を繰り返し全く話が噛み合わなかったので、その日に辞めてもらうことにしました(給与は月末まで払いました)。

よく採用にリソースをかけるべきだと言いますが、本当にここさぼっちゃだめだと思いました。その個人だけではなく、癌は転移するということですね。というか採用の会社だしなw。

これからはどれだけ忙しくてもきちんとベトナムマーケットに向けた、PR、Recruit Marketingをやっていこうと思いました。

きちんとまとめもせず、つらつらと書いてしまいましたが、これから起業する方、東南アジアでマネージメントを行う方の一助になれば幸いです。

freecracy 国本

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