ジョナサン・アイブの独占インタビューに見た、編集者・ライターの質問力の価値

アップルは昨年12月、同社初のデザインブックとなる『Designed by Apple in California』を発表した。

デザインアーカイブとして作られたこの書籍は、2〜3万円という価格設定ながら、わずか数時間で初回生産分は完売し、一時は数週間のバックオーダーとなった。

今回この発表に際し、最初に情報を手にしたのが『Casa BRUTUS』のインタビュー記事だったという人も少なくないだろう。

それもそのはずだ。『Casa BRUTUS』は公式発表と同時に、世界で唯一ジョナサン・アイブの独占インタビューを掲載できたからだ。

アップル系ニュースサイト最大手の『9To5Mac』でも以下のように報じられている。

In an exclusive interview with a Japanese design website, Jony Ive discusses the motivation behind making the book.
日本のデザイン系ウェブサイトの独占インタビューにおいて、ジョナサン・アイブはこの本を作った背後にある想いを語っています。

ここで1つ疑問が湧いてくる。何故『Casa BRUTUS』は世界中のメディアのなかで唯一、独占インタビューを実現できたのだろうか。

interview_Kunichi Nomura

その答えとおぼしきものは記事の冒頭に記載されていた。

それは、今回の記事でインタビューを担当した野村訓市氏の名前だ。僕は今回の立役者は野村氏なのではないかと思っている。

野村氏は、ブランディングからアートディレクション、空間・インテリア・ビジュアルデザインといった幅広いクリエイティブを担うTripster incの代表である。彼を一躍有名にしたのは、2000年に発行された、世界中のクリエイター86人分のインタビューを掲載した雑誌『sputnik:whole life catalogue』の企画編集だ。

その野村氏は、2014年よりCasa BRUTUS上でアップルのスペシャルイベントのレポートを毎年連載している。

野村氏がこの連載を始めたのが、ちょうどApple Watch発表のタイミング。そして、その発表の直前には、マークニューソンがアップルのデザインチームに加入するニュースが報じられた。

上記レポート内で、野村氏はアップルのデザインチームについて以下のように記している。

ジョナサン・アイブがいた。去年会って以来1年ぶり。久しぶりと声をかけると結構リラックスした感じでニコニコと「久しぶりだね」と返してくる。(中略)
奥でマーク・ニューソンを見つけた。もう何年もアップルにいるような馴染み方だ。マークもジョナサンもイギリスをベースに1990年代にデザイン界に登場し、しかもプライベートでも異様に仲がいい。皆で一緒に何度か飲んだ事があるが、2人でよくずっと話し込んでいる。(中略)
マーク本人はいつも通り、気負った所も何もなく、「よお!」と声をかけてきて、「お前も相変わらず飛び回ってんな、今日の夜はどうしてるんだ?」と聞いてくる。これからすぐにニューヨークにトンボ帰りだというと、「近々日本でな!」といって別れる。日本好きのマークが東京に来たときにでも、色んな話でも聞こう。

レポートの最後にはジョナサン・アイブとの2ショットの写真もアップされていた。

Casa BRUTUSより

また、ちょうど2017年の元旦に放送された、nendoの佐藤オオキ氏がパーソナリティを務めるJ-Waveのラジオ番組『CREADIO』に出演した野村氏は、友人であるマークニューソンのオフィスについて触れていた。

野村氏が世界中のクリエイターとコネクションを持つことは知られているが、これらからはアップルのデザインチームを率いる2人とも親交が深い様子が見て取れる。

最良のアウトプットを生むインタビュアー

インタビュアーは、インタビュー対象の考えを言語化するプロフェッショナルでなければいけない。その分野の知識や対象との関係性から頭の中を想定し、最良の質問を投げることが求められる。

今回の書籍では、ジョナサン・アイブにとって野村氏こそがアウトプットするにあたっての最適なパートナーだと考えたのではないだろうか。だからこそ野村氏を指名し、今回の掲載となったと考える。

その分野における深い知識と理解、そして信頼関係こそがこの記事を実現したのだ。(と思う)

インタビュアーにとって、編集者にとって、ライターにとって。野村訓市氏ように、指名を受け対象を紐解くスペシャリストとなることは、一つの専門性の形かもしれない。