Omiseインターンが探る 東南アジアの決済事情③シンガポール編

Keigo Saita
7 min readDec 27, 2017

--

今回のブログではシンガポールの決済事情を紹介します!
前回のブログでインドネシアの、前々回のブログでタイの決済事情を紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください!東南アジアをマスターしましょう!

シンガポールのマーライオン

強固な金融インフラを持つシンガポール

シンガポールは東南アジアの中で特異な国で、東南アジアにおける唯一の先進国であると言えます。
一人当たりGDPは約53,000ドル(約600万円)であり、約39,000ドル(約440万円)という日本の水準を大きく上回っています(1ドル113円で計算)(*1)。

金融サービスも非常に広く浸透しています。金融インフラが未整備であるタイやインドネシアなどとは対照的に、シンガポールにおける銀行口座の保有割合は90%を超えており、OECD諸国の平均値よりも高い水準です(*2)。

シンガポールの銀行口座保有率は90%を超える

大手銀行主導の決済サービス “NETS”

強固な金融インフラを持つシンガポールで、特に普及しているサービスがNETS(Network for Electronic Transfers)です。NETSはシンガポールの大手銀行が株主となって運営されている企業です。銀行口座と紐づいたデビットカードとして利用することができ、クレジットカード以上に浸透しています。
NETSは1985年に創業された企業ですが、テクノロジーを活用して時代に応じた決済サービスを提供し、長い期間にわたって人々の生活を支えています。

シンガポールのペイメント企業

強く根付く現金志向

銀行口座保有率が高く、クレジットカードのシステムも整備されているシンガポールですが、いまだに現金志向を強く残っているようです。
Paypalの調査によると、シンガポール人の43%は、現金が最も多く利用する決済手段であるそうです(*3)。タイやインドネシアなどのような金融インフラの弱い国々と比較すれば脱現金化が進んでいるものの、中国の後塵を拝する状態になってしまっています。

シンガポールで根強い現金志向

政府が掲げるキャッシュレス社会への移行

中国に後れを取る状況に危機感を抱いたシンガポール政府はキャッシュレス社会への移行を目指し、スマホでスキャンするだけで支払いが可能な共通のQRコードの開発を計画しています。
この背景には、今年の8月にリーシェンロン首相が独立記念集会演説にて、「数年前に上海で栗を買おうと会計に並んだ際、中国人は現金を一切払わず、スマホを操作しただけで栗を買っていってしまった。我々は完全に出遅れている。」と語り、シンガポールが中国の一部のスマート都市と比較して遅れていると主張したということがあります(*4)。
優秀な人材と企業が集まってくるような魅力的な国であることを目指すシンガポールにとって中国より遅れていることは大きな懸念点であり、モバイル決済を浸透させてリーダーに返り咲くことが国家レベルの目標として掲げられているのです。

シンガポールの首相リーシェンロン

モバイル決済浸透のための取り組み

キャッシュレス社会に移行するという政府の意向を背景に、シンガポールにおいていくつかのモバイル決済サービスが展開されています。

シンガポール最大の政府系銀行であるDBS銀行は、QRコード決済の「Pay Lah」サービスを展開しています。「Pay Lah」はスマホでのQRコード決済、送金などを可能にするアプリです。

また、シンガポール第2位の銀行OCBC銀行は、多くの銀行とともにモバイル決済ツールである「Paynow」を提供しています。「Paynow」はFacebookやWhatsAppを活用し送金することができる決済サービスで、2017年11月にはタイの「PromptPay」との提携を発表し、国境を超えた相互モバイル送金決済の実現を目指しています(*5)。

冒頭に紹介したNETSも2018年半ばまでにQRコード決済に対応できるように開発が進められていると発表されています(*6)。

NETSもモバイルへの対応を進める

これらのシンガポール系の主体に加えて、中国系のAlipay,WeChatPayもシンガポールへ進出しており、シェア獲得のための苛烈な競争がなされています。

まとめ

シンガポールは人材と企業を集積させるために、以前から強固な金融インフラが整備されていました。しかし、近年急速に成長した中国のモバイル決済に遅れを取ったため、現在政府のリーダーシップのもとで急ピッチでキャッシュレス社会への移行がなされています。そうした環境の中、国内企業や中国系企業などがシェア獲得を目指して切磋琢磨しています。

参考資料

アクセス日:2017/12/27

(*1) GDP per capita (current US$):
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=SG
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=JP

(*2) How to scale up financial inclusion in ASEAN countries:https://blogs.worldbank.org/eastasiapacific/how-to-scale-up-financial-inclusion-in-asean-countries

(*3) PayPal Asia Research Report Digital Payments: https://www.paypalobjects.com/digitalassets/c/website/marketing/global/shared/global/media-resources/documents/PayPal_Asia_Research_Report_Digital_Payments.pdf

(*4) National Day Rally speech on 20 August 2017:
http://www.pmo.gov.sg/national-day-rally-2017

(*5) PayNow to be linked to Thailand’s PromptPay, making it easier to send money between the two countries:
http://www.businessinsider.sg/paynow-to-be-linked-to-thailands-promptpay-making-it-easier-to-send-money-between-the-two-countries/

(*6) Banks in Singapore to use NETS QR code for cashless payments:
http://www.channelnewsasia.com/news/singapore/banks-in-singapore-to-use-nets-qr-code-for-cashless-payments-9421756

--

--