仮想通貨のかんたん会計 Keiry(ケイリー)βをリリースしました!

こんにちは!開発者の @nori3tsu です。
このたび、複雑な仮想通貨の会計処理を簡易にするために、ウェブサービス Keiry(ケイリー)β をリリースしました。

β版第一弾は、取引所のZaifとウォレットのTREZOR(BTC)に対応しました。これから対応取引所・対応ウォレットを順次追加していき、個人の確定申告や法人の決算業務に必要な仮想通貨の会計処理を手助けできるサービスに成長させたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

背景

2017年も後半に差し掛かり、長く未確定だったビットコイン等の仮想通貨の税制について徐々に国税庁から見解が発表されつつあります。
8月頃に発表された下記のタックスアンサーにより、少なくとも2017年は、ビットコイン(及び、おそらくその他仮想通貨)の取引で発生した利益は雑所得扱いとなりそうです。

№1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|所得税|国税庁

個人の雑所得は、年初から年末までに発生した利益から必要経費を差し引いたものを雑所得として、20万円を超えると確定申告が必要です。法人の場合は事業所得となり、利益に関わらず申告する義務があります。

№1500 雑所得|所得税|国税庁
№2020 確定申告|所得税|国税庁

確定申告をするためには、仮想通貨の損益に関わる帳簿を作成する必要があります。しかし、仮想通貨には様々な損益ポイントがあり、これらを全て手動で適切に帳簿付けすることは非常に困難です。

私は7年間個人事業主として確定申告をしており、 仮想通貨に関しては2015年から確定申告に含めています。そこで仮想通貨の帳簿付けを行いましたが、これまで何度も確定申告作業をしていたにも関わらず、膨大な時間がかかる難しい作業でした。

この複雑な作業をシステム化できないか?これが開発のきっかけになりました。

仮想通貨の取得価格計算と損益計算

Keiryで採用している仮想通貨の取得価格計算と損益計算についてお話します。仮想通貨の会計基準は未確定の上、機能改善を続けるなかで変更になる可能性もありますが、現時点ではこの考え方に沿って実装されています。

取得価格計算

仮想通貨の損益を計算するために取得価格を計算する必要があり、Keiryでは移動平均法を採用しています。
次の様に様々な計算ポイントがありますが、(1)と(2)についてご説明します。(3)の計算方法は検討中です。

  1. 取引所で仮想通貨を購入
  2. ウォレットに自分以外から受信
  3. 仮想通貨の増加(レンディング, マイニング, 非中央集権P2Pアプリからの報酬, ハードフォーク, ICO など)

(1)取引所で購入した場合について、次のケースでは、加重移動平均を使った取得価格は ((1BTC * 10万円) + (1BTC * 12万円) + (0.5BTC * 11万円)) / (1BTC + 1BTC + 0.5BTC) = 11万円 と計算できます。

  1. 9/20: 1BTCを10万円で購入
  2. 9/21: 1BTCを12万円で購入
  3. 9/22: 0.5BTCを11万円で購入

取得価格は仮想通貨取引開始時点から全て時系列に計算する必要があるため、 複数の取引所を利用している場合、各取引所の取引を時系列に並べて移動平均を算出します。

  1. 9/20: 取引所A: 1BTCを10万円で購入
  2. 9/21: 取引所B: 1BTCを12万円で購入
  3. 9/22: 取引所A: 0.5BTCを11万円で購入

海外の取引所も含まれます。
次のケースでは、先程の計算と同様に取得価格は11万円ですが、(4)の取引はその日のUSDJPYの日足終値を元に日本円に計算して移動平均に含めます。

  1. 9/20: 取引所A: 1BTCを10万円で購入
  2. 9/21: 取引所B: 1BTCを12万円で購入
  3. 9/22: 取引所A: 0.5BTCを11万円で購入
  4. 9/23: 取引所C(海外): 0.5BTCを$1,100で購入($1=100円)

(2)仮想通貨ウォレットに自分以外から受信した場合について、報酬としてウォレットで受け取った仮想通貨も含まれます。飲食店で仮想通貨支払いを受け付けている、仮想通貨建てで仕事を請けている、などが該当し、ウォレットには取引所の入金口座も含まれます。
次のケースの(5)は、報酬として受け取った2BTCをその日のBTCJPYの日足終値を元に計算して移動平均に含めます。次の項でも説明しますが、このケースでは雑所得として損益も計上します。

  1. 9/20: 取引所A: 1BTCを10万円で購入
  2. 9/21: 取引所B: 1BTCを12万円で購入
  3. 9/22: 取引所C(海外): 0.5BTCを1,100で購入(1=100円)
  4. 9/23: 取引所C(海外): 0.5BTCを$1,100で購入($1=100円)
  5. 9/24: ウォレット: 報酬として2BTCを受け取り(1BTC=10万円)

これらの作業を、仮想通貨単位(BTC, ETH, LTC, …)で計算します。

損益計算

損益計算は次のように仮想通貨を扱うほとんどのポイントで発生します。簡単に(1)-(5)についてご説明します。(6)の計算方法は検討中です。

  1. 取引所で仮想通貨を購入
  2. 取引所で仮想通貨を売却
  3. ウォレットから自分以外に送信
  4. ウォレットに自分以外から受信
  5. ウォレットから自分に送信
  6. 仮想通貨の増加(前項と同様)

(1)取引所で仮想通貨を購入した場合、取引手数料を雑損として計上します。

(2)取引所で仮想通貨を売却した場合、売却価格と取得価格の差分を雑所得 or 雑損として、取引手数料を雑損として計上します。

(3)ウォレットから自分以外に送信した場合、その日の日足終値で計算した価格と取得価格の差分を雑所得 or 雑損として、送信手数料を雑損として計上します。

(4)ウォレットに自分以外から受信した場合、その日の日足終値で計算した価格を雑所得として計上します。

(5)ウォレットから自分に送信した場合、出金手数料や送金手数料を雑損として計上します。

初回リリース時点の機能

Keiryの初回リリースでは、主に下記の機能を実装しています。

取引所連携:

  • Zaifの取引履歴・入出金履歴・残高の同期

ウォレット連携:

  • TREZORの送受信履歴の同期

損益計算:

  • 取引所のJPY建て(XXXJPY),BTC建て(XXXBTC)の損益算出
  • BTCウォレットの損益算出
  • 損益レポートの出力

まとめ

Keiryでは、これらの課題を解決するために、 “仮想通貨のかんたん会計” サービスを構築していきます。
次の記事ではKeiryの使い方をご紹介します。

進捗状況を随時報告していきますので、Twitter, Facebookと、このMediumの公式アカウントをフォロー頂けると嬉しいです!

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