スタートアップ投資家の3類型

Keita Wade
8 min readOct 30, 2018

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こんにちは、学生起業家の支援をしています。上出です。
今回は、スタートアップに投資を行う投資家を3つに分類して解説しようと思います。こちらの3つのカテゴリーの中にもいくつかのカテゴリーに分かれますが、そちらに関しては別の記事で解説しようと思います。

注記:こちらの記事はシードラウンドを前提に書かれています。

A.ベンチャーキャピタル(以下VC)

概要:
ベンチャーキャピタルとは、リミテッドパートナー(以下LP)と呼ばれる人たち(一般的には事業会社やエンジェル投資家)から集めたお金を、ゼネラルパートナー(以下GP)が運営し、一定期間内(7年~10年くらいが一般的)にLPに対して金銭的なリターンを出す仕組みを持つ会社のことを指します。
投資先のスタートアップの株式を3%~30%くらいのレンジで取得して、投資先が上場もしくは他の会社に売却された際に、株式を売却して、取得した際の金額との差分で儲けを得ます。
従って、大半のVCが注目しているのは、どのくらいリターンが出るかです。つまりは、上場ができる規模感なのか、いくらで売却が想定できるのかが投資を受ける際にポイントになってきます。

種類:
ベンチャーキャピタルは大まかに分けて2つの種類があります。
1.独立系
独立系のVCとは、GPがLPからお金を集めてきて、LPに対して金銭的なリターンを出すための組織です。国内で有名なのはJAFCOさん等です。

2.コーポレートベンチャーキャピタル(以下CVC)
CVCとは、事業会社直属のVCを指します。VCが一般的に持っているミッションである、LPへの金銭的リターンに加えて、ファンドの所有元である親会社の事業とのシナジーを見ることも多いです。

特徴:
概要の欄にも記載しましたが、VCの主な特徴は「イグジット(売却・IPO)の可能性を見る」というものです。
従って投資の際に見る判断軸として最も大きいのは「この会社の企業価値はどれくらいまで伸びるか」です。
この指標を分解すると、以下の3つになります。

1.市場規模
市場規模は基本的にその事業が目指せる売り上げのトップラインを規定します。従って、市場規模が小さいビジネスには投資しにくいという傾向があります。
また、顕在化していない市場の規模(例:SNSがない時代のTwitterの市場規模など)を説明するのは極めて難しいですが、その場合は代替できる市場を提示し、この市場を取りに行きますという説明ができると良いでしょう。

2.チーム力
チーム力とは、経営にまつわるスキルなどを指します。つまり、プロダクトを開発できるエンジニアの存在や、マーケティング・セールス、ステークホルダーとの交渉力など、ビジネスモデルに応じた様々な指標が存在します。
VCへのピッチの際には、自分のチームがどれだけのスキルと、ビジネスモデルに対しての親和性があるかを示せるとベストです。

3.創業者のバックグラウンド・人格など
あまり直感的ではないかもしれませんが、こちらもイグジットの規模感を計る指標として重要です。
その創業者が今考えているビジネスモデルに対してどれだけの熱量を持っているかは、グリッド力に繋がりますし、ユーザーの課題感を実体験として捉えられていることは、プラスになります。
また、15億で売却を目指している起業家と、1000億規模の会社を作りたいと考えている起業家とでは、課題や市場に対するアプローチも変わってきます。
従って、VCへのピッチの際は課題を捉えた経緯や、自分がそのビジネスでどの程度の規模感を目指しているのかを明確に答えられるようにしましょう。

B.エンジェル投資家

概要:
エンジェル投資家とは、一般的に個人でベンチャー投資を行う人を指します。数十万から数百万円くらいのレンジで出資を行い、それに応じた株式を取得します。
VCと比べられたり、シードのVCと同列の出資元として語られることが比較的多いですが、VCとの明確な違いは「自分のお金を投資している」ということです。従って、イグジットに対しての制約が少ない場合が多く、事業のピボット(事業内容を変更すること)に対してもVCと比べた場合寛容である場合が多いです。

種類:
エンジェル投資家も、若干恣意的な分け方ですが2つに分類できます。

1.イグジット経験者
こちらは、上場もしくは売却を行ったスタートアップ企業の経営者もしくは幹部である場合です。特に創業時より経営に関わっていた場合には、VCとは異なった観点からの実務的なアドバイスを引き出せることが多く、スタートアップ起業家にとっての良いメンターになってくれます。
また、著名なエンジェル投資家であればスタートアップ界隈への人脈も豊富で、人材の紹介や、その後の出資につながる窓口が広くなります。

2.サラリーマン
こちらのパターンは、大企業やコンサルティングファーム、外資銀行などの比較的給与水準の高い業界のサラリーマンが多いです。これは最近増えてきています。スタートアップ投資のアクターが増えるのは、多様性の確保という観点で非常に喜ばしいことですが、スタートアップ起業家にとっては下記2点で注意が必要です。

・スタートアップ界隈への人脈が少ない
スタートアップ出身でない場合には、VCや他のエンジェル投資家とのつながりがない場合が非常に多く、その意味でエンジェル投資家の役割のうち大きな1つが欠けている場合があります。
・スタートアップ投資に理解がない
株式の取得比率や、バリュエーションの算定、リスクの許容度という観点で、スタートアップ投資に対して理解が薄い印象があります。一度資本政策でミスを犯すと、再起は非常に手間がかかるので、スタートアップ投資に対して理解があるかどうかはきちんとチェックしましょう。

特徴:
エンジェル投資家の特徴には、明確なものがありません。なぜなら、その人個人の方針で個人のお金を投資しているからです。
一般論としての特徴はいくつかありますが、エンジェル投資家個人ときちんと対話をして、その人が起業家に何を求めていて、どんな関係性を構築したいのかをお互いに明確にした上で、投資を貰うかどうかを検討しましょう。

注意事項:
エンジェル投資家を名乗る人物の中にはスタートアップにとって非常に危険な人物もいます。パターンとしては主に2つです。

1.反社会勢力
いわゆる暴力団に関連している人たちです。彼らと資本関係や取引があると、上場が極めて困難になり、他の投資家や従業員にも多大な迷惑をかける可能性が高いです。見極めることは困難ですが、少しでも違和感を感じた場合には、すぐに第三者や専門家に相談しに行きましょう。
2.ダークエンジェル
ダークエンジェルとは俗称ですが、主に通常のスタートアップファイナンスではあり得ない割合の株式を非常に安価で取得し、経営権を実質的に掌握するエンジェル投資家や事業会社のことを指します。
これに関しては非常にセンシティブで、記述できない部分も多いのですが、出資の際に株式を50%以上取得される契約の場合は、第三者や専門家に相談しましょう。
※50%とはわかりやすい指標の一つとして設けたもので、50%以上を取得する契約であっても、正当性の高いものはもちろん多数存在します。
1つわかりやすい目安としてご承知おき下さい。

C.事業会社

概要:
スタートアップ投資を行う事業会社とは、CVCを持たず、PL上で出資を行う会社のことを指します。但し、CVCを持っているかはそこまで重要な観点ではないので、ここでの詳述は割愛します。特徴に関してはCVCの項目を参照ください。
一般的にシードラウンドのアクターとして登場することはあまり多くなく、投資を行わないアクセラレーターの運営元としてスタートアップに経営資源の投下や情報提供などを行うことが多いです。
アクセラレーターに関しては、別の記事で解説を行う予定です。

いかがでしたでしょうか?
今回の記事は少し長くなりましたが、起業家にとって、投資家の視点を理解し、彼らがどのような役割を起業家に対して求めているのかを理解することは、中長期的に見て極めて重要です。
幸いにもシードラウンドの投資かはかつてに比べて多くなっているので、自分の性格や、チーム、事業内容に合った投資元を選びましょう。

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