不安への対応もスキル
言わずと知れた、ラグビー日本代表(エディー JAPAN)のメンタルコーチの著作を読んだ。 私の職業である外科医とは、自分自身の行為がそのまま患者の予後に繋がる職業であり、源五郎丸選手がプレースキックの前に行っているようなプレ・パフォーマンス・ルーティンが必要なときがある。
しかしこの本を読んで面白かったのは、肉体的にも精神的にもベストコンディションで行ったパフォーマンスが必ずしも完成度が高いものではない、というところ。
むしろ、適度に興奮し、不安もある程度抱えている状態のほうがいいパフォーマンスができると言われています。
「僕は毎日、ものすごいプレッシャーと戦っている。プレッシャーを感じなかった朝はない。そんな自分を落ち着かせるには、仕事をするしかない。相手を分析し、戦略や戦術を考えるしかないんだ」
最高のパフォーマンスはある程度の興奮度合いと少し高めの不安を持ち合わせているときに発揮できると言われています。
どんな時だって私たちは不安や迷いを抱えながら日々生活している。不安を完全に克服しないまでも、共存していく生き方は可能だろうし、そこを目指していく価値はある。いわゆる「清濁併せのむ」度量も日常生活の中では求められる。
「不安や迷いと無二の親友にになればいい」
とミスチルは歌っていた。ただし不安と親友になるためには、不安の正体が何であるか分析する必要がある、と著者は主張する。
何が不安なのか、その原因をひとつひとつ書き出していくことが大切です。そうやって整理し、対処法を考えることで、自分がコントロールできること、やるべきことが明確になっていくはずです。不安のレベルを下げる方法を身につける。考えうる状況を設定して、そのなかでつねに冷静にふるまえるよう、訓練をするわけです。
著者はさらに不安、プレッシャーへの対処の仕方、アンガーマネージメントなどに触れているが、それはまた別の課題で置いておくとして、不安の原因を抽出し整理して、それぞれの対処法を探していくという方法は一つの能力であり、訓練すべきスキルなのだろう。また読み直すことがあるだろうと思う。