Ken Miura
Ken Miura
May 2, 2018 · 5 min read

なぜ私はHale Orbを創ろうと思ったのか(1)

https://haleorb.com/index_jp.html

「人と人をつなぐ優しい体験」

数年前、母に iPadをプレゼントしました。当初は私からの説明を紙と鉛筆で細かいメモを取り、参照しながら恐る恐る使っていた母でしたが、今やメールを書いたり、Facebookをチェックしたり、はたまた米国在住なのに日本のラジオ番組を聴いたりして楽しんでいます。印象的だったのは喜んでいる母の言葉です。

「世の中が色々と進んで便利になっているのはなんとなく聞こえてくるんだけど、自分が分からないままそれに取り残される存在になるのがとても悲しくて不安なのよ。だから子供たちのおかげで少しでもそうした進歩の一部になれるのは本当に嬉しいの。」

これは私にとって心に深く刺さる言葉でした。テクノロジーの恩恵を享受すべきはまさに母のような人達で、シリコンバレーにいる一部のテックエリートのためだけではないはず。そのように確信が深まりましたし、彼女が感じたような喜びをもっと多くの人に与えられないだろうか?そう思うようになりました。

しかし実は母がiPadをスムーズに使いこなし続けるためには家族の誰かの現場での継続したサポートが必要なのです。iOSのアップデートやFacebookのUI変更で設定やボタンの位置が変わっただけでどうしたらよいか全く分からなくなるような事が頻繁におきます。これはおそらく世間でもよくあることなんだと思いますが、これで本当に使いこなしていると言えるのだろうか?という疑問が出てきました。「家電のように簡単に使える」という謳い文句を幾度も聞いてきましたが、未だにそこまで簡単に使える製品はほとんどありません。

とは言え、複雑化してきた体験を差し引いても、機能と携帯性という点において現在スマホやタブレット以上のコンピューティングデバイスは存在しないのは確かです。技術的や社会的な観点からもこれらが全く他の物にすぐに置き換わる事はないでしょう。そして我々はその置き換えそのものを実現することを目指そうとは思っていません。

と同時に残念ながらスマホが自分にとって愛着を持てる魔法のデバイスだった時は過ぎてしまいました。生活において一時も手放せない物ではありますが、ひっきりなしに来る通知や常に意味もなく確認したくなる衝動。一般的にも浸透してきた「スマホ依存症」「ソーシャル疲れ」というネガティブなワード。使う度に色々と迷う認知的負荷の増大。これが本当に人々を生産的だったり幸せにしているかには個人的には懐疑的になってきたのです。

生活の一部で、このスマホから離れた別の世界があれば嬉しい、いや、むしろ必要なのでは?こう考えるようになりました。例えば家のなかでリラックスしながら愛する家族と共にいるとき。たとえ離れていたとしてもお互いの存在が近くに感じられ、記憶に残したいような体験。一見スマホやタブレットの機能でもできそうですが、私が直感で感じたものはそれとは違う何かでした。

直感的でシンプルだけど、使っている人を見下さない何か

親近感が湧き、思わず触りたくなるような何か

その場で他の誰かと同時に体験を共有できる何か

私の母も継続的に使えるような何か

これが実現できたら特別な物になる。腹の底でそう感じ、当初自分の中でモヤモヤとしたものがその後徐々に形をなしてきました。これがHale Orbを創ろうと思った原点です。そして開発を進める中、これは母の世代だけではなく、実はもっと幅広い層や家庭以外のシナリオでも普遍的なメリットがあるのでは?生活の一部を超えて、次の世代の新しい人間と道具とインターネットの関係を作れるのでは?と気が付きました。これについてはまたのちほど。

Halē(ハレ)とはハワイ語で「家」の意味です。また週末に親族で集まってピクニックなどを頻繁にするファミリー的な習慣があるハワイの人々に憧れがありました。

Hale OrbはMITメディア・ラボのDavid Rose氏が定義したEnchanted Objectと呼ばれる生活に自然に溶け込んだ「魔法の道具」の一種と言えます*。「触感」「温かみ」「話しかけられる」「道具に徹する」「選択肢を絞る」「複雑さを隠す」。まだ始まったばかりで、進化の途中ですが我々の製品はこういった要素を含む、幅広いアプリケーションの可能性をもった今までになかったUIプラットフォームなのです。Hale Orb自体の製品コンセプトと機能、そしてこれからどこに向かうのかは次の記事で書きたいと思います。

*数年前のSXSWでDavid Rose氏本人にHale Orbのプロトタイプを見せたら「まさにEnchanted Object!」と喜んでくれました

2016年のSXSW。著書のサイン会をしていたDavid Rose氏と一緒に。私が持っているのはOrbのデザインモックです。

クラウドファンディング時に作ったビデオです。ここにあるOrbやUIなどはまだ試作。
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