Byteballは「トラストレス」なのか?

要約:

  1. Byteballは、設計も開発の方向性もトラストレスでは無い。
  2. この傾向は、witnessが分散化しても変わらない。
  3. 現状ではトラストレスを重視する人達がByteballも評価する傾向があるが、筆者はこれが腑に落ちない。

以前、witnessに基づくByteballの合意形成アルゴリズムの基本的な構造をブログにて紹介しました。

この独特でクセのある仕組みは様々な観点から論じることが出来ると思うのですが、今回はその中でも特に重要であろう「トラストレス」性の視点から思う所を書こうと思います。

トラストレスの定義:

ここで用いる「トラストレス」の定義は、とってもやさしいビットコインさんの記事に準拠します。

つまりある価値の移転に対してthird partyは必要だがtrusted third partyは不必要である、より直感的に言えば「知らないどこかの誰かが移転を承認してその正しさを担保してくれる」構造を示すものとします。

設計はトラストレスでは無い:

さて、この定義からすれば候補者達の中から各ユーザーが信頼出来ると思う12名を自分のwitnessリストに入れるというByteballの設計は、明らかにトラストレスではありません。

Witnessの選択についてはホワイトペーパーの17章で詳しく論じられていますが、ここでも

The health of the system depends on users responsibly setting the lists of witnesses they do trust.

システムの健全性は信頼に足るwitnessのリストを責任持って設定するユーザー達に依存するのです。

a more practical approach to witness list management is tracking and somehow averaging the witness lists of a few “captains of industry” who either have interest in caring for the network health or who have earned a good reputation in activities not necessarily connected with Byteball.

Witnessリストの管理に関するより現実的なアプローチとは、ネットワークの健全性を大切に思っていたり、あるいはByteballとは必ずしも関係しない活動でも良い評判を得ている ”captains of industry” 数名のwitnessリストを追い、何らかの方法で平均化することです。

など、witnessを含むthird party達に対する信用の重要性が記されています。

Byteballの課題点としてwitnessが未だ分散化されていない点がしばしば指摘されますが、どのみちwitness及びここで言う ”captains of industry” らへの信用が求められる以上、例えwitnessが分散されたからと言ってトラストレスになる訳では決してありません!

開発の方向性もトラストレスでは無い:

ちなみに付け加えれば、いくつかのウォレットのアップデート、例えば

  • 中央集権型オラクルbotの実装
  • 企業との提携によるKYC用botの実装
  • bytesのUSD換算表示

などを見る限り、開発の方向性も明らかにトラストレスではなく既存の組織や制度の信用に立脚した展開を志向しているようです。

まとめ:

Byteballの合意形成アルゴリズムは、影響力を持つwitness達を各ユーザーが選出するため、所与のthird partyを強制的に信用せねばならない形式ではありません。

しかし、自分が選んだthird partyへの信用は必要であるためトラストレスとは言えません。

*これはちょうど議員を選挙で選ぶ間接民主制のようなもので、witnessが分散化されていないというのは(あまり良い例えでは無いかも知れませんが)共産党員しか候補者になれない的な状態であると解釈しています。

ここで自分が疑問に思うのは、暗号技術やインセンティブ設計に造詣が深く、トラストレスや所謂サイファーパンク的な世界観を好む人達がByteballを評価する傾向にある点です。

DAGを用いたプロジェクトの中ではかなり健全な部類に入ると自分も思っている(だからこそ興味を持って調べている)ものの、より厳しい目で見ればByteballは本来彼らの価値観にそぐわないのではないでしょうか。

今後詳細な仕様が周知されるにつれて、Byteballがこのような人達からの批判にさらされることは十分にあり得ると思います。


余談ですが、現在有志によるホワイトペーパーの和訳に取り組んでいます。

各担当箇所をお互いにレビューしながら進めているのでもう1, 2ヶ月かかりそうですが、出来るだけ早く公開出来ればと思っています。

この公開によって、今回のトラストレス含めByteballに関する様々な議論が活発になれば幸いです。


Originally published at Kensuke ITO.

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