Google MapsのUber配車連携は何がヤバイのか

Kentaro Okada
6 min readJan 23, 2017

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米Googleの先日の発表で、Google MapsアプリからUber配車が直接できるようになる、というアナウンスがありました。
GoogleマップアプリからのUber配車が可能に
今日Google Mapsを使っていたところ、Uber配車が日本でもできるようになっていたので、試しに体験してみました。

Uber配車までの流れ

オフィスから少し離れたところへ歩いてランチに行った帰りに、Google Mapsで徒歩ルートを調べていると、タクシーのタブに「今すぐUberを予約すると2000円割引」という吹き出しが出ていました。(※1)
気になってタクシータブをクリックすると、配車リクエストボタンが。

これはニュースで見たのが始まったのだな、と思って少しドキドキしながらクリック。
次に、GoogleアカウントとUberアカウントのリンク承認を求められるのでOKします。
最後に乗車場所を選択すると配車完了です。
Google Maps内で、あっさりUber配車ができました。

Google Mapsと一体化したUX

これまでもGoogle Maps内で、Uberでの金額感と所要時間は表示されていましたが、Uberアプリを持っていないユーザにはインストールの障壁もあり、UXとしては今ひとつでした。

今回の連携では、配車手配だけでなく、今向かっているタクシーのリアルタイム現在位置表示、運転手の評価と車ナンバーの表示といった、Uberアプリと同機能をGoogle Maps内で提供しています。
何より特筆すべきは、目的地は決まっているのでUberタブで乗車位置を選択するだけ、という配車の簡易さで、Google Mapsと一体化した優れたUXです。もはやGoogle Mapsの一機能と言っても過言ではないでしょう。
今後、徒歩や電車など同列にUber配車を選択肢の一つに見る人がとても増えると感じました。

さらにこの延長で、個人的に今後期待しているのは、Uber Eatsとの連携です。
Google Mapsで探したお店でUber Eatsを提供していたら、今回のUber配車と同レベルでスムーズに注文できるようになってほしいです。

Uberの狙い

Uberアプリをインストールしていないユーザに対して、Uberアプリと同体験を提供できるのは、非常にパワフルな新規ユーザ獲得手段です。Googleに莫大な広告費を払っていると思いますが、その価値は十分ありそうです。

その一方で懸念もあります。
Googleへの広告費を考慮すると、Uberとしては2回目以降の利用はUberアプリをインストールして使ってほしいでしょうけれど、Google Maps内で初めてUberを使ったユーザにとっては、そのUXの良さの裏返しで、Uberアプリをインストールするインセンティブがありません。(※2)
割引クーポンでUberアプリに誘導するのかもしれませんが、CPAが嵩んでLTVが見合うのか厳しくなりそうです。

Googleの狙い

今回の連携によって、Google Mapsの価値は高まり、なおかつ広告収益も増加するので、良いこと尽くめの取り組みに思えます。
一方で、実はGoogleとUberの関係は難しい状態にあります。
Google(Alphabet)は Uberの株主でもありますが、Alphabet傘下で昨年からライドシェア事業を始めたため、Uberの取締役を降りているのです。
https://wirelesswire.jp/2016/08/56041/
その流れを踏まえて考えると、逆にUberとの連携を強めた今回の動きは疑問なのですが、これを説明する見方はこうです。

Alphabet傘下のライドシェア事業が大きくなるのはまだ先なので、それまではGoogleの広告収益を優先させる、という考えです。
Alphabet傘下のWazeが、ライドシェアサービスWaze Riderを昨年始めたものの、提供地域もまだごく一部に限定され、実験の域を出ない段階のようです。
http://spotry.me/2016/waze-rider-google-ride-sharing-now-available-san-francisco/
また、Alphabet体制になって予算管理が厳しくなってきているのも、収益を優先する判断の一因かもしれません。
http://business.newsln.jp/news/201612130559450000.html

さらに別の見方として、Google Mapsがユーザとの最初の接点を強力に抑えているがゆえの判断、というのもあります。
Googleが提供する配車サービスがある程度Uberと戦えるレベルになった時に、ある日いきなりGoogle MapsのUber連携をやめて自社の配車サービスに変えたとしても、ユーザは全く違和感なく使い続けることが見込めるからです。これはヤバイです。
例えるならば、その昔、Yahoo! JAPANの検索エンジンの裏側がgooだったのが、ある日突然Googleに切り替わったのですが、一般ユーザは誰も気にせず使い続けた話に近いですね。

おまけ:Uberに乗って分かったこと

Uberのドライバーの方と雑談した内容です。

・今回のGoogle Maps連携強化について
ドライバーの方はご存知ありませんでした。ドライバーの方にとっては、特に提供するサービス内容が変わるわけではないので、知らなくても良いというUber本社の判断なのでしょうけれど、なかなか攻めてますね。

・Uberの稼働状況について
私が乗ったのは、タクシー営業と兼務していないUber専用車だったのですが、普通の日で25件前後の配車依頼があるそうです。
長めに10時間勤務だとして約30分に1回の配車計算なので、ほぼフル回転な感じですね。

※1
他のGoogleアカウントで試したところ、他のタブを見ている時に、割引クーポンの吹き出し表示が出ない時もあったので、乗車位置や時間帯などでA/Bテストしているようです。

※2
Uberアプリがなくても、Google Mapsアプリ内でUberのアカウント作成とクレジットカード番号ができます。(厳密には、クレジットカード番号はUberのWebサイトで登録する必要がありますが、Uberアプリもログインも不要です)

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