成果にフォーカスしてデザインする

Kosuke Shiraishi
7 min readJun 13, 2017

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こんにちは!Kaizen Platformのデザイナーの白石です。現在はKaizen Adというサービスのデザイン全般を担当しています。Kaizen Adは新規事業として2016年初頭から本格的に立ち上がり、2016年7月にリリースしました。立ち上げから参加して一年半ほど、ゼロからサービスを生み出すことに試行錯誤の毎日です。

UXデザインのプロセスは、時間をかけようと思えばいくらでも掛けられます。しかし、リソースの少ないスタートアップでは、事業のフェーズや規模、チームに応じて、デザインの各工程における必要不可欠な部分に最大限注力し、費用対効果が少ない部分を見極め、最終的な成果に常にフォーカスすることが求められます。

ここでは、UXデザインの過程で成果にフォーカスすることの重要性について考えてみたいと思います。また、弊社内においてどのように実践しているのか、事例を交えて紹介したいと思います。

成果(Outcome)とアウトプット(Output)

アウトプットを設計するために成果物が作られ、アウトプットが成果をもたらす

まず成果(outcomes)アウトプット(outputs)の違いについて、明確に意識する必要があります。アウトプットはソフトウェアやサービスといったユーザーが接する有形無形のプロダクトです。成果はアウトプットによってもたらされたる最終的なビジネスのゴールの達成であったり、課題を解決することです。(多くの場合、KPIとして表現されます。)これら2つとは別の概念として、UXデザインの過程ではアウトプットを設計するために、カスタマージャーニーマップ、ワイヤーフレーム、ペーパープロトタイプなどの成果物(deliverables)が作られます。

これは自分自身がふと気づくと陥っていることですが、スピード感のある現場だと、何かしら形に残るものを出すことや目先の作業に夢中になり、いつの間にか成果物やアウトプットを作るのが目的になってしまっていることがありました。例を挙げると、必要以上に洗練されたワイヤフレームを作ってしまったり、ユーザーリサーチに過剰な時間をかけてしまうなど、UXデザインの作法に忠実に従おうとすればするほど陥りやすい罠です。

ここで大事なのは、フォーカスするべきはデザインの成果物を作ることではなく、さらにソフトウェアで言うと機能を作ることでもなく、それらを通して得られる最終的な成果を得ることが一番の目的になることです。

目標とする成果を定義しなければアウトプットは生み出せない

The dribbblisation of designという記事では、見た目のかっこよさや派手さ、斬新さといったアウトプットの表面的な部分のみが賞賛されることに、デザインの本質である問題解決の側面が隠れてしまうことを懸念しています。具体的な成果を定めずに、UIデザインやビジュアルデザインといったクリエイティブワークを行っても、それはアートでありデザインではないと主張しています。

実際に目に見える形になっていくクリエイティブワークは確かに夢中になる作業であり、デザイナーとしての醍醐味の一つでもあります。しかし、あくまで上位にある成果を実現するためのアウトプットであるということを認識していないと、必要以上のものを作ってしまったり、自己だけが満足している作品になってしまいがちです。

Kaizen Adにおける例 — 成果をチームの共通認識と持つ

Kaizen Adの開発プロセスでは、最終的な成果を意識してチーム全体でそれが共通認識となるまで議論します。しかし、一度は合意した上でも、プロジェクトや開発が進行するにつれて明らかになる事実によって、初めに定義した成果が変わることは十分有り得ます。

そこで以下のようなシートを使って、最終的な成果をきちんと共通認識として持った上で、各メンバーが取り組む作業や実装する大小様々な機能がどう成果に繋がっていくかを常に共通していました。

最終的な成果をツリーの最上位(左側)にその下に細かく分解された成果と、下位(右側)解決策や機能が並ぶ

これにより、いかに小さな機能であってもそれがもたらす結果や、何を解決するものであるかをチーム内で共有することができました。

ソフトウェアのサービスはリリースしてからが始まりだとはよく言われます。上のように成果と大小様々な機能の繋がりを見える化することで、チームがいつでも確認できる、皆の行き先を示す羅針盤のような役割を果たしました。

成果にフォーカスし、スピードを優先する

成果にフォーカスしてデザインする体制ができたら、次にはビジネスの状況やステージを考慮した上で、適切なリソースで、スピーディに成果を達成することを考えます。

Kaizen Adでは今、サービス内で提供する新しい価値の可能性を探る検証プロジェクトを行っています。このプロジェクトは、ある具体的な機能を検証するのではなく、価値が提供できるスペースはどこに存在しているか、検証点を見つけるといった抽象的なことをあえて成果としています。そこで、最小限の機能を備えたMVP(Minimum Viable Product)を少ないリソースで作り、ユーザーに実施にいち早く使ってもらいフィードバックを得ることを選択しました。

開発チーム全体でのユーザーストーリー作成風景

このような0から1を生み出すようなフェーズでは、多くのコミュニケーションが発生するため、デザイナー、エンジニアやPM間で情報の受け渡しをするコミュニケーションコストを最小にして、スピーディに物事を進める必要があります。そこで、普段は遠隔で仕事をしているメンバーも一同に会して、チーム全体で2〜3日間をフルに使い、ワークショップ形式でMVPのデザインを行いました。

成果をまず定義した上で、それを達成する最小限の形をユーザー視点でのユーザーストーリーとして考え、最終的にペーパープロトタイピングとして落とし込みます。

ペーパープロトタイプの全体イメージ

チーム全体で根元の成果の部分を共通認識とすることで、「そもそもこの機能は必要か?」といった議論に対してスムースに結論が出ます。成果の部分をぶらさずに細部の判断は個々人が行えるようになるので、以降の開発のスピードが上がりました。

成果にフォーカスすることがもたらすもの

最後に、デザインにおいて成果にフォーカスすることで起こる個人レベル・チームレベルでの変化をまとめてみます。

・個人やチームが問題設定および問題解決の思考になる。(ソフトウェアを作ることを目的にせず、それによって得られる成果を意識する。)

・余分な機能を作らずに済むので、結果的に最小限のコストやスピードに繋がる。

・デザイン上の大小様々な疑問に素早く答えが出る。結果的にチームとしての意思決定が早くなる。

本記事では成果にフォーカスすることの大切さを、Kaizen Adにおける例とともにご紹介しました。常に目先の作業に囚われすぎないように、チーム全体を成果へフォーカスさせ続けるのはKaizen Platformにおけるデザイナーの役割の一つです。

Kaizen Platformではデザイナーを募集中です。少しでも興味があったら話を聞きに来てください!

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