Open Source Hardware Association Certification

2016年10月7日、米国オレゴン州ポートランドでオープンソースハードウェアに関する国際会議「Open Hardware Summit 2016」が開催されました。第6回目となる今年は、SparkFun ElectronicsやSeeed Studioのような従来からのスポンサーに加えて、IntelやAutodeskが最上位のスポンサーとなり、オープンソースハードウェアに対する関心が一層高まっていることを感じさせるものでした。その中で、主催者である非営利法人Open Source Hardware Association(以下OSHWA)は「Open Source Hardware Association Certification」(オープンソースハードウェアアソシエーションによる認定)を正式に発表しました。

Open Source Hardware Association Certificationについて発表するMichael Weinberg

オープンソースのプロジェクトに対する認定、というと大げさな印象を受ける方がいらっしゃるかもしれませんので、以下に経緯を説明しつつ私なりの見解を述べたいと思います。

OSHWAは、多くのコミュティメンバーの協力を得て、オープンソースハードウェアとは何であるかを定義した「Open Source Hardware Statement of Principles 1.0」(オープンソース・ハードウェア基準書1.0)を2011年に発表しました。この基準書は日本国内のコミュニティメンバーによって翻訳され、日本語版も公開されています。この基準書の冒頭には、以下のように記されています。

オープンソース・ハードウェアは設計図が公開されたハードウェアであり、その設計図やそれに基づくハードウェアを誰もが学び、改変し、頒布し、製造し、そして販売できる。オープンソース・ハードウェアの元となる設計図は、変更を加えるのに適したファイル形式で入手することができる。理想的には、オープンソース・ハードウェアは、万人が作って利用する可能性を最大限にするため、容易に入手できる部品と材料、標準的な加工方法、オープンな基盤、制約のないコンテンツ、そしてオープンソースの設計ツールを使用することが望ましい。オープンソース・ハードウェアは、設計図のオープンな交換による知識の共有と商品化を奨励すると同時に、テクノロジーを統御する自由を人々に与える。

一般によく知られているオープンソースハードウェアの例としては、プロトタイピングのためのツールキット「Arduino」があり、ホビーの電子工作や教育、アート作品、様々な製品のプロトタイピングなどで幅広く用いられています。また、SparkFun ElectronicsやAdafruit Industries、Seeed Studioが発売している様々な開発者向けの製品(多くはセンサやプロセッサなどの半導体を扱いやすいモジュールにしたもの)も多くの人々に利用されています。ここで例に挙げたプロジェクトは先述した定義に沿ったものですが、オープンソースハードウェアが広まるにつれて、様々な人々が様々な定義でこの言葉を用いるようになりました。その結果として、設計図が公開されていないハードウェアに対してオープンソースハードウェアという言葉を用いる人々も現れました。

このような、様々な人々が様々な定義でオープンソースハードウェアという言葉を用いることによる混乱を避けるため、OSHWAが提案したのがオープンソースハードウェアに対して認定証を発行するシステムです。これは、一方的に定められたものではなく、長い期間にわたるディスカッションを経てつくられたものです。OSHWAのウェブサイトに掲載されている経緯によれば、2015年6月に最初のアナウンスメントを発し、様々なディスカッションを経て発展させ、ロゴに関してもコメントを求めながら決定し、今回公式に開始を発表しました。

認定証を取得することにより、コミュニティによるオープンソースハードウェアの定義に沿ったものであることを示すロゴが発行されます。このロゴには、国コードに加えて固有のIDが割り振られ、これによって個別のプロジェクトを識別できるようになります。また、オープンソースハードウェアのレジストリに登録されることにより、既存のプロジェクトから派生したプロジェクトをつくった時、何がオリジナルのプロジェクトであったかを記入することにより、何からどのように派生していったのかを辿ることができるようになります。

私としては、それぞれのプロジェクトに固有のIDが割り振られ、その派生関係が登録されたレジストリができる、という点に非常に大きな可能性を感じます。今まで、派生関係についてはドキュメントの中で示し、掲載可能な場合には基板上にシルクで印刷するなどの方法が用いられてきました。しかしながら、既に他のプロジェクトから派生している複数のプロジェクトの成果をリミックスして新たなプロジェクトをつくった場合など、複雑になってくるとクレジットすることが難しくなってしまいます。また、オープンソースハードウェアで用いられている多くのライセンスにおいては、原著作者に断ることなく派生物を作ることができるため、自分のプロジェクトの派生物がどのくらいあるのかを把握するのは困難です。

OSHWAが認定証を発行する、というシステムによって世界中のオープンソースハードウェアプロジェクトが登録されたレジストリができ、発展していけば、生態系がどうなっているかを把握できるようになると共に、既存のプロジェクトから自分が新たに始めるプロジェクトの派生元とするプロジェクトを選ぶことが容易になり、さらに利用が促進されます。今までのところ、オープンソースハードウェアはオープンソースソフトウェアをモデルとして来ましたが、もしかするとこのシステムがあることで異なる進化のモデルを実現できるかもしれません。

FAQにも明記されているように、OSHWAによる認定を取得しなかったからといって、自分のプロジェクトがオープンソースハードウェアである、と言うことを制限されるものではありません。このため、わざわざ認定を取得する、という手続きは必要ない、と考える方もいらっしゃると思います。しかしながら、このシステムに何らかの可能性を感じるのであれば、ぜひ登録する価値はあると思います。登録費用は無料ですし、手続き自体も必要な情報をフォームに記入して送信するだけですので、既にドキュメントや設計データを公開している場合には、15分程度で申請手続きを終えることができるでしょう。

なお、2016年10月までに申請したものについては、先着順ではなく、この期間に申請された中で固有のIDが割り振られますので、もしこのシステムの考え方に賛同し、できるだけ若いIDを取得したいと思う方は、準備を整えた上で早めに申請してみてはいかがでしょうか。

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