KUMALEON -Senbaku / センバク- 前編

センバク / Senbaku

Senbaku/センバク

クリエイティブコーダー/ イラストレーター / Processing Community Japan 運営 / #dailycoding / #creativecoding / #KumaKreative / KUMALEON コラボアーティスト

KUMALEONコラボアート

“Gradient Matter”

KUMALEON #2069

活動プラットフォーム

  • OpenProcessing / Crayon Codes
  • Opensea
  • fxhash

センバクさんとはどういう人?

「おばけ」と「コーヒー」をこよなく愛する日本のクリエイティブコーダー。センバクさんは2020年から#dailycodingというアートアクティビティを通じて、現在に至るまでコンスタントに活動しているアーティスト。先月開催していたジェネラティブアートのイベント”Genuary2023”にも参加しており、日々アートを制作しています。

今回はKUMALEON Blog第一弾として私たちのコラボアーティストとしても参加しているセンバクさんと1対1でインタビューをさせてもらいました。彼女のアートライフを芯に支えているものは一体何なのでしょうか。クリエイティブコーダーとして今のクリプトのトレンドをどう見ているのでしょうか。

日本のクリエイティブコーディングの第一線を走る彼女のアートライフを紹介していこうと思います。

Ghost/Star

1. クリエイティブコーディングとの出逢い

今、クリエイティブコーダーとして3年目を迎えるセンバクさんが「Processing」に出逢ったのは2019年でした。元々、高校生のときにHTMLに興味を持ち始め、自らウェブサイトを構築し、そこで当時から好きだったイラストを書いて載せていたといいます。当時の日本のオタク文化として、「個人のウェブサイト」を持つのが流行り始めた頃であり、「お絵かき掲示板」などで遊んでいたとのことでした。同じ漫画やバンドが好きな人が自分のウェブに絵を描きにきたり、逆も然りで、センバクさんも仲間のウェブでイラストを描いて載せていたそうです。「あの頃の交流は本当に楽しかったです。人と関わるのが得意ではないと思ったこともあったけども、振り返ってみると好きなのかも知れない」と率直な思いを共有してくれました。この「交流への想い」は後のセンバクさんのアート活動にも大きく繋がっていきます。

そういった活動を高校生の頃から経験したのもあって、プログラミングやコーディング自体には苦手意識は抱いていなかったそうです。ただ、センバクさんもここまでくるのには決して平坦な道ではありませんでした。新たなプログラミング言語の習得としてPythonを触り始めた頃、その環境構築で心が折れてしまったとのことでした。これら、新しいプログラミング言語を学ぶ際に「環境構築」というある種、登竜門で挫折してしまう人も少なくないのではないのでしょうか。センバクさんもその一人であったのです。

しかし、この経験が後のProcessing (現在p5.js) に出逢った時の感動を何倍にもすることになります。

OpenProcessing

「ウェブブラウザ1つあればすぐに始められる」というのはプログラミング学習者にとってこれ以上嬉しいことはないでしょう。それがきっと「継続性」にも繋がっているのだと改めて感じました。さてここで、「クリエイティブコーディングってそもそも何?」「ジェネラティブアートってどうやって作られているの?」という人に向けて少しおさらいをしましょう。

クリエイティブコーディング(ジェネラティブアート)は「コードから生成されたアート」です。多くの場合、そこには「p5.js」というプログラミング言語(Javascript)のライブラリがよく使われていることが一般的です。この「p5.js」はウェブブラウザ上で簡単に利用することができます。そして、p5.jsのウェブ上で作ったスケッチ(作品)は「OpenProcessing」で共有をすることができるのです。この世界では基本的に「オープンソース(無料公開)」ですので、他の人の気になる作品があれば、どのようなプログラムで動いているのかを調べることもできます。もちろん、両プラットフォームとも無料で利用が可能です。まさしく「ウェブブラウザ1つあればすぐに始められる」とはこのことですね。

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OpenProcessingに初めて投稿した作品

2. アートを届けるその想い

センバクさんは、2021年にはポストカードを作成し、海外から応募してくれた人にも届ける活動をしています。これらのモチベーションになったものは何だったのでしょうか。制作から送付まですべてを自身で行っていたセンバクさんのその心境を伺いました。

「ポストカードを配ろうと思ったきっかけには”Jeff(@ippsketch)さんがいる」と話すセンバクさん。クリエイティブコーディングやジェネラティブアートが好きな方は、”ippsketch”と聞いてピンと来る人もいるのではないでしょうか。SuperRareやArtBlocksでも活動する著名なジェネラティブアーティストでもあるJeff。そんな彼が、世界中の人を対象に無料でポストカードを配布していたことがあったのでした。それを見たセンバクさんはすぐさま応募をしたそうです。そして、実際にカードを受け取ったときの感動が「自分もやってみよう」というセンバクさんの大きな原動力になったのでした。

Jeff’s PostCard

そこから「アートをどう見せるか」と同じように「アートをどう届けるか」という意識もより強く持つようになったといいます。「Twitterに作品を載せて終わりではなく、作品を手元で実際に眺めて見て欲しい。」と率直なアーティストとしての想いを話してくれました。

その後もセンバクさんは昨年9月に東京で開催された「コミティア(自主出版した本を発表・販売する展示即売会)」にて自身のクリエイティブコーディングの作品を載せた文庫本サイズの本、「日常とコード CreativeCoding日記」も販売されていました。未発売ではありますが、さらには、30分おきにアートが変わっていく自作のフレームも作成していたのです。これらから見て分かるように「アートを届けたい」という思いはまさしく本物なのです。

【本紹介】日常とコード CreativeCoding日記

3. ”シーツおばけ”が表現したいものとは

2021年8月にはOpenProcessingの公式コレクションである「Crayon Codes(クレヨンコード)」から声がかかり、センバクさんの象徴的な作品とも言える「ghosts」が出品されました。作品はすぐさま完売。「実際のNFTの販売の感覚は非常に不思議なものだったけども、とても良い経験だった」とセンバクさん。クレヨンコードでは「パラメータを変更できる」のが特徴的で、「おばけの数」や「配色」も自分好みに変更出来てミントができる仕組みになっています。「好きなアートを自ら選ぶ」というある種、その自由を購入者にバトンタッチする体験は非常に面白いアプローチでした。

そもそも、「このおばけは一体何者?」と思ってる人もいるでしょう。センバクさん本人は「何者でもあり何者でもない象徴としてこのシーツおばけがいる」と話してくれました。これは果たしてどういう意味でしょうか。その謎とこのシーツおばけとの始まりはセンバクさんが大学の頃にさかのぼります。

「都会の大学に進学したもののコミュニケーションが得意ではなかった自分は誰とも話すことのない一日も珍しくなかったのです。雑踏を歩いても皆誰も他の人のことは気にしない。皆、それぞれ色々な景色を見て感じたものがあるのにそれが私に交信されることはないのです。そうふと思い、それ以来まるで、⾃分や都会の⼈々はシーツをかぶって⾃分の空間の中から外を⾒ているシーツオバケのようだと感じました。」

おばけというモチーフに親近感を持ち始めたのはこの頃からだろうです。一方で、「悲しさ」や「寂しさ」だけではないといいます。

「おばけといっても寂しさだけではありません。シーツを被っていて、誰にも見られないという居心地の良さや安心感もあります。中にいるのは本当はおばけではないかもしれない。そこに存在はしているけれども、正体は誰かは分からない。だから「正体は明示されない何者か」を表現するには適任だと思ったのです。」

センバクさん自身の経験から生まれたこの「シーツおばけ」、実は名前はないそうです。しかし、私は今回話を聞いていて、このおばけに親近感が沸いたのです。

というのも私も一時期、都会に住んでいました。毎日のように都会の荒波に揉まれ、満員電車に揺られた生活を送っていました。当時、コミュニケーションも上手ではなかった私はまさにシーツを被ったおばけのように世界を見ていました。どういうことか。

今ではどこへ行っても、音楽を聞いたり、モバイルゲームをしている人で溢れています。そんな私も音楽を聞きながら、「互いには触れ合わない」と暗黙の安心感の中に「きっとこの人にも僕の見えてる景色とは違ったものが見えているのだろう…」という、それがどんなものか少し気になる好奇心と一緒に、現実ではそれを知るのことのない寂しさの余韻を感じていたのです。センバクさんのアートとこの「シーツおばけ」を見て、そんな日々を私も思い出したのでした。

*スペース登壇の詳細は下に記載されています

アート作品

GENUARY2022 Day11 “No computer.”

KUMALEON Twitterスペース登壇予定日

📌 2月8日(水) 21:00📌

対談トークテーマ

🎨 「AIアート」と「ジェネラティブアート」
Google社が開発する”Deep Dream”を筆頭に再度話題が沸騰している”AIアート”。そもそもAIアートとジェネラティブアートの根本的な違いはどこにあるのでしょうか。互いの業界は今後、交わることはなく平行線を歩み続けるのでしょうか。さらには「AIが”ジェネラティブアート”を描く未来」は来るのかというお話も伺っていきます

🎨「日本から世界へ」「言語の壁」からの脱却 NFTアートに限らず多くのNFTに問わず、日本のあらゆるコンテンツが「海外へ上手く届けるのが難しい」という現実に直面しています。そこで一番にあげられるのが「言語の壁」ですが、本当にそれだけでしょうか。他に妨げになっているものはないでしょうか。アーティストとして活動しているセンバクさんからのご意見を伺っていきます。

リンク集

Twitter / https://twitter.com/senbaku
OpenProcessing /
https://openprocessing.org/user/207560/
Webpage / http://holoshow.senbaku.info/
fxhash /
https://www.fxhash.xyz/u/senbaku

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