今回はWeChatミニプログラムの現地使用状況についてお伝えします。
WeChatは現在8.4億人のアクティブユーザーをもつ中国を代表するソーシャルアプリとして知られていますが、2017年1月9日にミニプログラムという機能を公開しました。
ミニプログラム公開がスティーブ・ジョブズによるあのiPhone発表からちょうど10年ということもあり、Tech in AsiaやTech Crunchなどのメディアによる「テンセントがAppleに真っ向勝負」という主旨の記事がネット界で盛り上がりましたが、3週間ほど経ったいま実際に現地でミニプログラムがどう活用されているのかについてお伝えします。
またミニプログラムのみならず、FacebookやGoogleの現在の取り組みとTencent、Baiduなど中国のモバイルアプリプラットフォームの比較をしてみました。
アプリストアの現状
まず、ネイティブアプリストアについてです。
iOSではApp Storeのみが、AndroidではGoogle Playがグローバルで大きなシェアを占めています。また2016年6月時点ではApp Storeのアプリ数は200万本、総ダウンロード数は1300億回を突破し、開発側にとって流行るアプリを生み出すのはとても難しくなっています。
ドイツの 調査会社「PrioriData」によると、以下のように指摘されています。
Google Play Store内の1.8%のアプリ、Apple App Store内の4.4%がそれぞれグローバルの90%のダウンロードを占めている。
At Priori Data we estimate only 1.8% of apps in Google Play Store and 4.4% in Apple App Store account for a whopping 90% of total app downloads globally.
(参考:Priori Data Insights)
Google Play内アプリ競争率がApp Storeよりも低いのは、中国においてGoogle Playが使えないことが大きく起因しているのではないでしょうか。
また、先日公開されたApp Annieのレポートには、
(中国は)iOS App Storeの収益で最大の国になっただけでなく、収益の成長率も非常に好調であった2015年の実績を上回りました。
と記載があり、中国エリアのiOS App Storeは勢い良く盛り上がっているのがわかります。
ミニプログラムの登場
ミニプログラムとはApp StoreやGoogle Playなどのストアでダウンロード・インストールしなくても、WeChat上で使用できるアプリのことを指しており、ユーザーはQRコードのスキャンもしくは検索することでアプリを発見、使用することができます。
ネイテイブアプリの難点は、スマホ容量を占めてしまうことや、ダウンロードまでのハードルが高いことが挙げられ、Webページの難点はユーザーがサービスに戻って来にくいこと、操作が遅いことなどが挙げられます。
まさに両者のその欠点そを補うのがミニプログラムです。
使用事例
結論からいうと、現段階で認知度はそこまで高くなく、使っているユーザーはごく僅かです。サービス開始後、Didi(中国版Uber)や大众点评(中国版食べログ)などもミニプログラム提供を開始しましたが、機能が制限されている、慣れないなどの理由であまり受け入れられていないかなという感覚です。
現在既に大量のミニプログラムが公開されていますが、その中でもたまに使われているものを3つ紹介します。
ちなみにテンセント社は独自でミニプログラムを一覧化したプラットフォーム(ミニプログラムストア)を提供しておらず、9.cnやminiapp.comなどサードパーティのサイトから確認することができます。
質問項目を作成し、グループや特定のフレンドにシェアすることで、リアルタイムで投票数の増減を確認することができます。また投票内容はシェアリンクを開かずとも確認でき、操作が速いのも特徴です。
中国において、気候や空気のチェックは欠かせません。以前はネイティブアプリやWeb画面のスクリーンショットを友人へ送ることが多かったですが、ミニプログラムを利用することによって、気軽にシェアができ、尚且つページ確認時点でのリアルタイムの天気を知ることができます。
月に1度しか使わないアプリをわざわざ入れておくのも容量のムダと考える人も多いはずです。マクドナルド店内に入り、ネイティブアプリを開いたところアップデートが必要だったり、起動がおそかったりという経験も良く聞きますが、ミニプログラムを利用すれば、友人にたった数秒でクーポンをシェアして使用することだってできちゃいます。
またミニプログラムはアイコンとしてホーム画面に追加することも可能で、使用前にいちいちWeChat内で検索する必要もありません。
ネイティブアプリ と WeChatアプリ
多くの中国人にとって、ミニプログラムはサービス型公式アカウントと何が違うのか区別が難しいとの意見を聞きます。WeChatサービス型公式アカウントでは、ニュース情報を流すだけでなく、サービスに移動することもできます。
先ほどのマクドナルドの例をとり、「ネイティブアプリ・サービス型公式アカウント・ミニプログラム」の比較をしてみます。どういった違いがあるのでしょうか。
ネイテイブアプリ
・機能が豊富
・操作が軽快
・スクリーンショットしてシェア
・ホーム画面へ配置可能
サービス型公式アカウント
・ブランド化ツール要素が強い
・機能が豊富
・スマホの容量を食わない
・操作が遅い
・WeChatに直接シェア可能
・ホーム画面へ配置不可
ミニプログラム
・操作が軽快
・スマホの容量を食わない
・WeChatに直接シェア可能
・ホーム画面へ配置可能
結論:「使用頻度、シェア機能が必要が、突発的に使うか」を考慮して使い分けるのがベスト。普段あまり使わなく、シェアできると良く、更に突発的に使いたいアプリに関してはミニプログラムで代替すると良さそうです。
Baidu と Tencent
実はBaiduも2013年、ウェブアプリの導入を試みて失敗した経験があります。
Baiduの検索プラットフォームを利用して、Lite Appと呼ばれるウェブアプリを利用できるという機能です。またその翌年からは検索ワードの先頭に@をつけることで、そのままアプリへ移行する「直達号」も開始されました。
以下Lite Appsとミニプログラムの違いをまとめてみます。
WeChatの生みの親、张小龙によると、
ミニプログラムはBaiduのLite Appsと見た目は似ているかもしれないが、本質は全くの別物である。Baiduはトラフィック分配で稼ぐビジネスモデルだからだ。トラフィック分配で稼ぐ企業は敵を作りやすい。Baiduのキーワード広告のために多くの人がSEOの仕事へ振分てられている。
それに対してWeChatは一度も静止画面広告やバナー広告を出したことはなく、もしミニアプリの利用ユーザーを増やしたければ開発側が智恵を絞り行動するしかない。ただWeChatは中国のほとんどのネットユーザーを囲っているので、ユーザー獲得はそこまで難しくないだろう。
だそうです。
またネット上ではBaiduが流行らなかった理由について、
・「@検索」のような西洋的な考えであり、中国では流行らなかった
・ユーザー数もそうだが、アプリ滞在時間もチャットプラットフォームの方が長い
・Lite AppsはPRが広告頼りになってしまっていた
というような推測がされています。
モバイルアプリストアのこれから
モバイルアプリストアについて比較する簡単な表を作成しました。
Facebook と Tencent
Facebookは昨年11月にMessenger上でプレイできるInstant gamesを公開しています。
現在はクローズドベータ版ですが、開発したい場合は申請をすることができるようです。
ゲームに特化しているということで、WeChatミニプログラムと方向は多少違うものの、WeChat以上のユーザーを抱え、ユーザーのアプリ滞在時間も長いMessengerプラットフォーム上でのウェブアプリ公開は今後どう発展するのでしょうか。
Google と Baidu
またGoogleは2017年1月に検索エンジンを活用したInstant Appsの実施テストを開始したと発表しています。
Baiduは一度失敗していますが、Googleは検索エンジンプラットフォームにて成功できるのでしょうか。
さいごに
現段階では、WeChatミニプログラムの認知度・使用率ともに高くなく、使われているのはごく一部のものになっています。今後もゲームアプリを除き、例えば駐車場での支払いやクーポンアプリ、レストランでの注文などオフラインで活用される機会が多いのではないかと考えます。
Takumi Innovators・XNodeは日本と中国の架け橋となり、日中横断のスタートアップ&イノベーション・エコシステムを創造していきます。上海にいらした際には、オフィスまで是非いらしてください!
参考
Originally published at chinastartupnews.com.