天職は見つかるものでなく辿り着くもの

Yoshihito Kuranuki
4 min readMar 8, 2017

--

天職とは何か。自分が好きなことで、その仕事に適性があり、社会の役に立つような仕事、それを人は「天職」と言うのだろう。

そんな天職に就くことが出来れば、毎日の仕事が楽しくて仕方ないものになる。なんて幸せなことだ。

誰もが自分の天職だと思える仕事に出会えたら良いのだが、なかなかそうもいかない。自分の天職はどこにあるのか、悩む人も多い。

果たして、どうすれば天職を見つけることができるのだろうか。

結論から書くと、タイトルの通りで、いつか見つかるものじゃなく、仕事をしていくうちに辿り着くものではないか、と考えている。

社会の役に立つ仕事を選ぶのは大前提だとするならば、自分の好きなことと自分の得意なことが、仕事を選ぶ際の判断材料になる。

偶然にも、好きなことと才能があることの重なる仕事が見つかれば良いけれど、その確率は高くはない。才能の有無は事前に判断できないし、どれくらい好きかなんて、続けてみないとわからないからだ。

そこで、2つの軸で考えてみよう。2次元のグラフだ。横軸に得意かどうか。縦軸が好きかどうか。値が大きいほど、横軸なら上手に出来るし、縦軸なら大好きだということだ。

そのグラフであれば、右上の領域が天職になる訳だ。

このグラフでは、好きと得意の反対(マイナスの値)は想定していない。嫌いなことも苦手なことも、普通ならあえて仕事に選ばないだろう。(もしかしたら選ぶ人もいるのかもしれないが、理解はできない)

とても好きなんだけど、さほど上手くない。プロとして報酬がもらえるほどの成果を出し切れないようなところは、左上のあたりだ。

音楽でも絵でも、小説でもゲームをするのでも、どんな好きなことでも、お金が貰えるほど上手でなければ、仕事にはできない。それは趣味だ。

横軸の方向で、ある程度のレベルでなければ仕事としては成立しないのだ。その閾値は、職種によって違うだろう。マニュアル通りに働く仕事よりも、クリエイティブな仕事の方が稼ぐまでの閾値は高く大変だ。

さらに、例えば同じ音楽で食っていくとしても、音楽教室で働くレベルと、商業アーティストではレベルが違う。厳しいけれど、好きと得意は違うのだ。

では、右下の領域はどうだろうか。それなりに上手にできる。それで食ってけるということなので、立派なことだ。ただ、さほど好きではない。

好きかどうかは置いといて、働いて稼ぐことができる。これはもう「普通の仕事」だ。職種によっては稼ぐまでの閾値が低い仕事もあるので、多くの人が好きかどうかは置いといて、まず稼げるかどうかで仕事を選ぶ。

そして人は、自分が成果の出せる仕事は気持ちがいい。最初は、そこまで好きでもなかったとしても、自分も成果が出せて、誰か喜んでくれる人がいれば、楽しくなって徐々に好きな気持ちが増してくることもある。

だから、まずは得意なところから攻めるのは悪くない戦略だ。ただ、若いうちは自分で得意領域は見つけにくいだろうから、得意な仕事にアサインしてあげるのもマネージャや上司の役割になる。

右下の領域から始めても、だんだんと好きになっていくことで、いずれ天職だと思えるところまでいけるかもしれない。仕事をしていくうちに好きになるパターンだ。

左上の領域で、最初は趣味でやっていても、だんだんと上手になっていき、いずれ稼げるレベルまでいけるかもしれない。好きこそ物の上手なれ。その結果、天職まで辿り着ける。

仕事人生の最初は、左下から始まる人も多い。そこまで好きかわかっておらず、得意かどうかで言えば、どの業界業種でも最初から即戦力という訳にはいかない。

ただ、その仕事の中で得意領域を見つけて徐々に好きになっていく。天職までの道のりは一本道ではない。天職とは見つけるものではなく、やっているうちに辿り着ける場所なのではないだろうか。

白馬に乗った王子様を待つような気分で待っていても、天職は見つからない。転職を繰り返して探しては、天職から遠ざかっていくかもしれない。

地道に仕事を続けていくことか、趣味でも徹底的に鍛えていくこと、もしくはその両方で、いつか天職に辿り着けるだろう。

--

--

Yoshihito Kuranuki

ソニックガーデンという会社を経営しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」の精神で、プログラマという仕事を誇れるものにすることがミッション。 ブログ http://kuranuki.sonicgarden.jp ※2019年1月に新刊「管理ゼロで成果はあがる」でました。→ https://goo.gl/reZez1